34.告白

酷い…


それは…想像よりも酷い傷だった。


もしかしたら普通の鞭では無かったのかもしれない。


傷の周りが点々と赤く腫れ上がっていた。


「少し染みるかもしれん」


俺は傷の周りを消毒した綺麗な布で優しく、優しくリナの体を拭く。


そしてアリスには見せない方がいいと判断して新しい包帯を取りに行って欲しいと誤魔化して隣の部屋に行って待ってて貰った。


なんと声をかけていいのかお互い無言の時間が続いているとリナが気を使ったのか話しかけてきた。


「結構…傷酷いですかね？こんな傷がついてたら本当に傷物扱いですね～お嫁に行けなくなりそうです！まぁ元から相手が居なくて良かったですが…」


笑いを交えたような明るい声を出してきた。


「傷物なんかじゃない…」


本気でそう思っていた。


「ルーカスさんは優しいから…」


リナがふっと力なく笑った。


まるで気を使ってそう言ってくれてると思われているように…


「そんな事ない！本当に…綺麗だ…」


そう言うとその華奢で綺麗な背中にキスをした。


「ひゃっ！ル、ルーカスさん？今何を？」


リナが驚き顔を少し向けてきた。


「あまりに綺麗だからキスをしたくなった…」


「ちょ！？ルーカスさん昨日からなんかおかしくありませんか？一体どうしちゃったんですか？」


「君の…リナのせいだ」


「私の？」


「リナの体にこんな傷をつけた事が許せない、リナの体を先生が見てると思うだけでムカッとする。先生の服を来ているのを見るだけでその服を脱がしたくなった…俺の服を君が着ているだけで…俺の物になった気がして安心する」


「そ、それって…」


「やっとわかった、俺はリナが好きなんだ…愛してる。どうか俺と結婚して欲しい」


リナは驚き目を見開いた後に…寂しそうに笑った。


「それはルーカスさんが優しくて責任を感じているからではないですか？私はただの庶民で家政婦です…令嬢でも無いのでそこまで気を使わなくていいのですよ…まぁいつかこんな傷があっても好きと言ってくれる人が現れるかも知れません」


リナの諦めたような顔を見て怒りが湧いてきた。


いつか俺以外の誰かが好きだといってこの寂しそうなリナを抱きしめるのか？


そして俺以外の誰かがリナと結婚する？


「嫌だ、俺が君を幸せにしてみせる！」


「ありがとうございます…その言葉だけで嬉しいです。希望が持てました」


リナはどうも俺の言う事を本気にしていないようだった。


ならばわからせるまでだ。


「わかった…」


俺がそう返事をするとリナはホッとしたような、しかしどこか残念そうに息を吐いた。


「ではすみませんが手当ての続きをお願い出来ますか？」


リナが再び後ろを向くと…


つつつっ…


その背中を優しく撫でる。


「ル、ルーカスさん！？」


「ん？なんだ？」


俺はとぼけた声で答えると


「なんか…少しくすぐったいのですが…」


「丁寧に拭いているんだ、リナの体だからね…優しくしたい…」


そう言ってあらわになった肩にそっとキスをする。


「ひゃい！？な、なんか…意地悪じゃないですか…私…何か失礼を…」


リナは目を潤ませて小動物のように縮こまり振り返った。


そんな可愛い顔…しないでくれ…


俺は拳を握りくい込む爪の痛みで襲いかかりそうな自分をどうにか抑えた。


「すまない…少し調子に乗った…」


ボソッと呟くと、気を取り直して怪我の手当てを続ける。


どうにか包帯を巻き終えると…リナが服を着て肌を隠すと、ようやく気持ちも落ち着いた。


「ありがとうございました…でも次からは先生にお願いしますので…雇用主のルーカスさんにずっと頼む訳にはいきませんから」


「大丈夫だ、これからも俺が毎日やるから…」


「ですが…」


「それと…さっき言った言葉は全部本当だ。だから何も問題ない」


「え？」


驚くリナの手を掴むとそっとその手の甲にキスをする。


「リナにその気が無くても俺は諦めない…絶対に好きになってもらってみせる。本気にして貰えないなら本気だってわかるまでこうやってアピールするまでだ…」


目をまん丸にしているリナにクスッと微笑んだ。