子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

27.大きな服

俺は急いで訓練所の自分の荷物を置いている所に向かうと…


「あれ?ルーカスもう嫁さんと飯は終わったのか?」


「リナちゃんのご飯まだ残ってますか~?俺また食いたいんですけど」


からかうように他の騎士たちが声をかけてきた。


「うるさい!それどころじゃない!」


俺は仲間の言葉を無視すると自分の服を掴んで来た道を戻った…


「なんだあれ?」


「喧嘩でもしたんスかね?」


騎士達は首を傾げた。


するとそこに入れ違うようにシモンが戻ってきた。


「あっシモンさん今ルーカスさんの様子が…」


するとシモンはみんなを見つめて渋い顔をする。


「ああ、知ってる。さっき団長と行きあったんだが…リナちゃんが令嬢に絡まれて怪我を負ったらしい」


「「リナちゃんが!?」」


それならルーカスさんの慌てた様子も納得だった。


「それで…容態は?」


騎士達も心配そうに聞いてくるがシモンもまだそこまでは分からないと言う。


「何処の令嬢ですか!?なんでリナちゃんに!?」


「どうもルーカス絡みらしい…今までどんな令嬢にも見向きもしなかった男がよその女に夢中になってたら面白くなかったんだろう…」


「なんスかそれ!ただの嫉妬じゃないですか!」


後輩のラキが憤怒する。


「許せないよな…」


「「はい…」」


「でもとりあえずリナちゃん達の様子を見る方が先ですね!俺見てきます!」


ラキが部屋を出ると医務室へと走った!


「俺達も…」


他のみんなもあとを追った。













「待たせた!」


そう言ってルーカスさんが差し出した練習着に私は着替えることになった。


傷の為にアリスちゃんに手伝って貰いながらルーカスさんの服に着替えた…が…


大きい…


先生よりも大きなルーカスさんの服を着るとブカブカで肩が丸見えになってしまい、しかも上着だけなので少し丈の短いスカートのようになってしまった…


「あの…ちょっと大きすぎるようです…」


衝立から顔だけ出して待っていた二人に声をかける。


「そんな言うほどではないだろ?帰るだけだし…少し見せてくれないか?」


ルーカスさんがそういうがかなり恥ずかし格好に首を振る。


「無理です、無理です!」


「少しだけ…外を歩けないようならその上から俺の上着を羽織ればいい」


「アリスちゃん…これ変だよね…」


私はアリスちゃんに確認すると


ブンブン!


アリスちゃんは首を横に振って似合うと言うように親指を立てた。


そう…なのかな…


私は服を引っ張りながらなるべく肌を隠してそっと出ると…


「足が…丸見えで、手を離すと肩も出てしまうんです…」


顔を赤くして二人を見ないようにそう言うと…


「わ、悪かった…こ、これを…すぐに羽織ってくれ」


ルーカスさんが顔を大きな手で隠しながら自分の着ていた服を渡してきた。


それほど酷い姿だったのだろう…


「すみません…これを上から…」


私はそれを借りると上から羽織って前で重ねて紐で縛る。


これなら…何とかなるかな…


どうにか先程よりは露出が抑えられた。


「大丈夫そうですが…歩いて帰るにはちょっと…」


そう言って再び二人の前に行くと…


「いや…問題ない」


ルーカスさんが満足そうに笑う。


「ルーカスさん?」


何が気に入ったのかルーカスさんの口の端が上がっていた。


そしてルーカスさんはおもむろに私に近づいてくると…


「失礼する」


そう言って肩を掴んで足を持ち上げた。


「キャ!」


抱き上げられて思わずルーカスさんの首に抱きついてしまう。


「す、すみません!」


慌てて離れようとすると


「構わない、傷が痛まないように好きなように持ってくれ」


ルーカスさんは私の背中に極力触らないように抱き上げてくれた。


「歩けますから、下ろしてください」


「嫌だ…」


「い、いや?ルーカスさん何言ってるんですか!?」


「リナさん…無理してるだろ。動く度に服が擦れて傷が痛いはずだ。その服なら大きいから少しは余裕があると思うが…」


ルーカスさんにそう言われてギクッと肩を揺らした。


確かに歩くと少し傷が痛かったが、我慢できない痛さではないのであえて言わないでおいた。


「今日はこのまま帰る。雇い主として命令する、大人しくしててくれ」


「は、はい…」


真剣な顔で間近でそう言われてしまい、私は顔を俯き頷いた。


何だか女性のような扱いに頬が薄ら赤くなるのを感じていた。

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