25.ルーカス視点

いつもなら昼休憩前には必ず来ているリナとアリスが今日に限ってなかなか来なかった。


俺はおかしいと思い、門まで見に行くとその途中でなにやら揉めている集団に出くわした。


なんだろうと近づいて驚き目を見開いた！


そこには探していたリナ達がどこかの令嬢らしき女に手をあげられようとしていたのだ！


「何をしている！！」


慌てて膝を突いていたリナに駆け寄ると令嬢の方が気持ち悪い声で話しかけてきた。


そいつの言う事など聞く気はないのにぺちゃくちゃと話し出す。


そして聞けばリナ達が不敬を働きそれを罰していたと言う。


リナとアリスが？ありえない！


俺は全く信じていなかった。


初めてみたその女は自分の知り合いだと言うがその顔も声も全く記憶になかった。


まぁ令嬢など皆同じに見えるからもしかしたらどこかで会ったことがあるかもしれないがこちらには覚えは全くない。


それよりもリナ達だ！


リナ達が言うには料理を叩き落とされ、しかもそれを踏みつけられたと…


あの美味しい飯を踏んだだと！？


見ればリナがいつも一生懸命作ってくれるご飯が無惨な姿になっていた。


このクソ女！！


キッと睨みつけると女はそそくさと逃げ出した…だが許すわけない！


しっかりとその馬車の紋章を覚えておく。


後で騎士団長に報告しなければ…


しかしリナは罰を受けた事は身分の差で仕方がないと言い出した。


リナやアリスはもう俺の大事な家族のように思っていたが…クソッ！守れなかった。


雇い主と言う関係だけではなんともならないのかもしれない…それが無性に悲しく腹立たしかった。


本当の家族なら…


そんな考えがふと頭に浮かんだ。


リナが本当の家族に…


そう思いリナを見つめているとアリスが服を引っ張った。


そしてリナの背中を指さす。


何だと見るとそこには斜めにうっすらと血の跡が滲んでいた！


怪我を！？


そう思った瞬間にリナを抱き上げていた。


アリスについてくるように言うと医務室へと走った！


先生に見せると先生はのんびりとリナの様子を伺っている。


そんな悠長にしてないで早く見てくれ！


そう思いそばでじっと待っていると先生が苦笑いして部屋を出ていくように言ってくる。


リナが服を脱ぐからと…


リナを見るとその鎖骨が目に入った。


俺はリナの裸を想像してしまった…それを慌てて振り払うと部屋を飛び出した。


外にでて深呼吸する、するとようやく落ち着いてきた。


「そうだ、先程の事を報告に行かなければ…」


俺はまずリナが持ってきてくれた料理を拾いにいった…一つ一つ食べやすく包まれたパンに足跡がついている。


それを込み上げる怒りを抑えながら全て拾い上げた。


そしてそれをもって団長のところに向かった。


団長は俺を見るなり顔を綻ばせて手を差し出した。


「今日のリナちゃんの料理は何かな？いやぁ～毎回もらって悪いなぁ～」


毎日のようにリナの料理を食べていたら騎士団の仲間達や団長がよくからかいに来るようになった。


その度にリナは快く笑ってみんなの分の料理を作ってくれていたのだ。


俺はちっとも面白くないが…せっかくの俺達の時間が邪魔されて…


今では皆もリナの料理を毎日楽しみにしている。


団長もそれを届けに俺が来たと思ったようだ。


ドンッ！


俺は無惨な料理が入った籠をテーブルに置いた。


団長は俺の様子に何かあったのだと瞬時に顔色を変えた。