子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

21.おままごと

次の日からも出来るならお昼ご飯を持ってきて一緒に食べたいと言われた。


まぁそれが仕事なら断る道理はない。


「アリスも外で食べるの楽しくないか?」


ルーカスさんがアリスちゃんにそう聞くとアリスちゃんは昨日鍛錬所で食べた事を思い出しているのか楽しそうに頷いた。


なるほど…アリスちゃんの為か…なら尚更従おう。


「わかりました!アリスちゃんの為なら喜んで…またシモン様の分も作っておきますか?」


「シモンの分も…」


ルーカスさんの顔が曇った。


「どうしましたか?」


何が気に食わなかったのかわからなくてルーカスさんの顔を覗き込んだ。


「あいつも様なんて付けなくていいよ…それに食事は三人でしよう」


「え?さすがにそれは不敬にあたるのでは?」


「シモンには俺から言っておくから大丈夫だ」


ルーカスさんはそういうとお昼を楽しみにしてると家を出ていった。


「なんなんだろうね?」


私はルーカスさんが何を考えているのかわからなくてアリスちゃんに向かって首を傾げた。


アリスちゃんは私の問いに同じように首を傾げた。








早速家の仕事を終えて、アリスちゃんと買い物に行くとお昼の準備と夜の下ごしらえをしてしまう。


その様子をアリスちゃんはいつも楽しそうに見ながら時折出来そうな事を手伝ってもらっていた。


「ふふ…」


アリスちゃんは笑う時に少しだけ声が出るようになってきた。


一度ルーカスさんにお医者様に見せた方がいいかもしれないと言った方がいいかな…とアリスちゃんを見つめる。


するとアリスちゃんとふと目が合った…私の顔をみてニコッと笑ってくれる。


その笑顔に思わず屈んで抱きしめてしまった。


「アリスちゃんの笑顔は素敵だね、見てるだけで元気になるよ。だからずっと笑っててね」


そう耳元で呟くとアリスちゃんからも抱き返してくれる。


「ふふ、じゃあ早速このご飯をルーカスさんに届けようか?」


「!!」


アリスちゃんの笑顔の頷きに二人で元気よく家を出て鍛錬所にいるルーカスさんの元に向かった。















それからルーカスさんにご飯を届けるのが日課となり、騎士団に行くのにも抵抗がなくなってきた。


そして自分が子供の世話が好きな事でたまに騎士団の団員の子供も一緒に預かる事もあった。


「リナちゃん悪いね、娘がまたここで遊びたいって言っててね」


団員の人が奥様と並んで申し訳なさそうに娘を差し出して来た。


「いえ!こちらもセーラ様と遊ぶの楽しみにしてました!アリスちゃんもまた遊べるの待ってたんだよね」


アリスちゃんがこくこくと頷いた。


「リナ、今日はこの前のおままごとの続きがしたいの…」


セーラ様が恥ずかしそうに言ってくる。


「そう思って今日は色々な食器を持ってきましたよ~さぁセーラ様もこっちに来てください!」


手を差し出すと嬉しそうに頷き私の手を取った。


「セーラ様は預かっていますので、リペド様と奥様はデートを楽しんで来てください。ここの訓練所なら護衛もいりませんからね」


私はそっとお二人を見ると頬を赤くしながら行ってきますとセーラ様に手を振り出かけて行った。


二人を見送ると早速遊び始めていたアリスちゃんとセーラ様を見る。


「では配役はどうしますか?」


「私はお母様がいい!」


セーラ様が手を上げる。


「セーラ様はお母様ですね、アリスちゃんは何がいいかな?お父様?それとも子供の役がいいかな?」


アリスちゃんはしばらく悩むと、くっ!と胸を張った。


「む!その格好はお父様ですね!寡黙な父親ってところかな?じゃあ私は二人の赤ちゃんかな?」


「そうね!アリス!赤ちゃんの世話をお願い!私は急いでお茶を入れるわ!あー忙しい!」


セーラ様はせかせかと手を動かしながら空のコップにお茶を注ぐ振りをすると私達にコップを差し出した。


「んーおいちい!ママ美味しい~」


私は赤ちゃんの振りをしてセーラ様に抱きついた!


「きゃあ~」


セーラ様は笑いながらくすぐったいと寝転がるとはっとガバッと起き上がった。


その様子に驚くと…


「こんな風に寝っ転がると…家庭教師の先生に怒られるの…令嬢としてはしたないって…」


慌ててスカートのシワを戻した。


まだアリスちゃんとそう変わらないのに…令嬢って大変だ。


でも今は子供として楽しんで欲しかった。


「セーラママ、ここは私達だけしかいないよ?だから好きにしても誰も怒らないと思うよ!」


「リナはお母様に言わない?」


「リナは赤ちゃんだからわからないもん」


ニコッと笑うとセーラ様はほっとしたように息を吐いた。


「ならちょっとだけ…」


そういうとセーラ様は足を崩して座る。


「アリス!こっちにきて一緒にご飯を作りましょ!」


そう言うとアリスちゃんを呼んで二人で何かを炒めだした。


見れば空のフライパンの上で葉っぱや木の実を炒める振りをしている。


楽しそうに遊ぶ二人をニコニコと眺めていた。




たっぷりと遊ぶとセーラ様のご両親がホクホク顔で戻ってきた。


その前にセーラ様のドレスを直して髪も整えておく。


「じゃあリナ、アリスまたね!」


「リナさんありがとう。今度、お礼を持ってくるわね」


奥様も満足そうに笑みを浮かべた。


「いえ!そんなもったいないお言葉です。私もセーラ様と遊ぶの好きなのでここにいる時は何時でもどうぞ」


仲良く三人で手を繋いで帰って行くのを見送っていると…アリスちゃんがそれをじっと見つめていた。


私はそんなアリスちゃんを後ろから抱きしめる。


「さぁこれからは二人っきりで遊ぼうね!アリスちゃんを独り占め出来て嬉しいなぁ~」


アリスちゃんの顔を覗き込んでニヤリと笑う。


「俺も入れてくれないか?」


すると仕事を終えたルーカスさんがちょうど戻ってきた。


「どうする?アリスママ、ルーカス坊ちゃんが帰ってきましたよ」


私がそう声をかけると…アリスちゃんは笑ってルーカスさんの手を取るとコイコイと引き寄せる。


そして床に敷いた布の上に座らせるとルーカスさんのお世話をしだした。


「お、俺が子供の役なのか?」


ルーカスさんは困った顔をしながらも大きな体を縮こませて頑張ってアリスちゃんに合わせて子供役をこなしていた…


少しだけ三人で遊ぶとお腹も減ったし家に帰ろうと帰り支度をする。


そして…


「前みたいにみんなで手を繋いで帰りましょうか?」


私はアリスちゃんの手を掴むとルーカスさんが反対側のアリスちゃんの手を握る。


私達は自分達の長く伸びる影を見ながら並んで家へと帰って行った。



コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品