子供に懐かれたら家政婦になりました。あれ?雇用主の様子がおかしいようです

ナナシ

19.リナ 回想

「びっくりした…」


私はルーカスさんにお昼ご飯をアリスちゃんと届けに行ったところ…そこは王宮内にある騎士様達の訓練所だった。


まさかと思い門で確認するとルーカスさんから言伝があったようですんなりと中に通される。


そして少し年配のこれまたルーカスさんぐらいガタイのいい方の元に連れていかれた。


そして上から下まで見定める様に姿を見られると…


「歳は?」


年齢を聞かれる、まるで面接のようだ。


「18です」


「そうなのか?まだ子供に見えたもんで…すまなかった」


年齢を聞いた途端におじ様の顔がニコッと緩んだ、笑った時に出るえくぼがチャーミングだ。


「いえ、よく言われますので大丈夫です」


警戒が解かれた様な気がしたのでニコッと微笑んだ。


「まぁ18歳なら問題ないな。私はこの騎士団の団長を務めるブライアンだ」


「騎士団!?団長…様?」


まさかと思っていたが、すごい肩書きにサーッと顔を真っ青にする。


「す、すみません…団長様と知らずにご無礼を…」


言葉が出てこない…なんて謝れば許されるのだろう。


下を向いてカタカタと震える。


「そんなにかしこまらなくていい、ルーカスの家政婦をしていると聞いている。それなら家族みたいなものだろう。もっと気軽に話しかけていいんだよ。ただ思いの外若かったので驚いてしまった。怖がらせてしまって悪かったね」


優しい言葉をかけてくれた。


やはり上に立つ方は懐が違う。


「今ルーカスは鍛錬中だ、もうすぐ終わるから案内しよう」


「い、いえ!団長様にそのような事…荷物を置いていくだけでも大丈夫です!」


「気にするな、ほらその子はルーカスが剣を持つところを見てみたいんじゃないか?」


アリスちゃんをみてにっこりと笑った。


「アリスちゃん…見たいの?」


アリスちゃんを見ると手をギュッと握り返してきた。


「ではお言葉に甘えて…よろしくお願い致します」


私は団長様に深々と頭を下げた。


案内され、ルーカスさんの元に向かう。


「ほら、あそこで剣を交えてるのがルーカスだ」


指を指され見れば確かにあのルーカスさんが汗を流しながら男の人と剣を打ち合っていた。


剣の当たる音が響く、アリスちゃんは驚いた顔で凝視していた。


「すごい…ルーカスさんあんなに重そうな剣を軽々と振り回してるね」


アリスちゃんはこくこくと頷く。


すると皆が剣を収めて体を拭き出した。


「おっ、終わったようだなじゃあもう少し近くに行くか」


団長様に呼んで貰うとルーカスさんが私達をみて駆け寄ってきた。


まさかと確認するとやはりこの騎士団の騎士様だという。


ど、どうしよう!私かなり失礼な態度をとってきた気がする…


私はガバッと地面にしゃがみこみ土下座した。


仕事を首だけですめばいいが…申し訳ないと謝ると…


ふわぁ!


と体が浮いた。


顔をあげるとルーカスさんが私を持ち上げていた…まるで子供を高い高いするように脇に手を入れそれはもう軽々と…


そして必死に謝る必要は無いと言ってくれた。


やはりルーカスさんは変わってる…でもそれがいいと思ってしまった。


しかし騎士様だったとは…道理で賃金が高いはずだ…それなのにあんな家になんで住んでるんだろ?


まぁお金を払ってもらえる以上変な詮索はやめておこう。


仕事だと割り切るとルーカスさんが少しだけ寂しそうな顔をした気がした。



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