行方不明

マリーはおなかいっぱいで気持ちよく眠る中…夢を見ていた…


美しく成長したテオドールお兄様の横で天使の微笑みで笑っている可愛い弟…シリル。


マリーはニヤニヤと笑いを噛み締める。


はぁ…美形兄弟のツーショットなんて…なんて素敵なんだ。


何時間でも見ていられる光景にマリーはぽぅとなっている。


確か弟のシリルは不幸な生い立ちでテオドールお兄様の家の養子として迎え入れられる…って設定だったかな？


詳しい内容はストーリーに関わるので伏せられていたが、そうか父親に虐待とは可哀想に…でもあんなに可愛く小悪魔に育つなら…きっとこの屋敷でみんなに愛され育ったのだろう。


弟のシリルは主人公と同級生で姉のマリーと同じ年、マリーには懐かなかったが主人公には心を開いて行くって話だったかな？


主人公を独り占めしたくて嫉妬が凄い…みたいな事が書いてあったような…


うーん！早くシリルと主人公が会うのが楽しみだ！


マリーは夢の中でそのシーンを想像すると…幸せそうに笑った…




「笑っているな…」


ジェラートはマリーの寝顔を見に来ると、ベッドの中では幸せそうに笑うマリーがいた。


可愛い天使の微笑みに、笑ってその様子を見ていると


「起こしましょうか？」


フローラが苦笑する。


「いや、こんなにも気持ちよさそうに寝ているんだ、起こしては可哀想だからな…」


ジェラートが起こさなくていいとそのままにしておくと


トントン…軽くノックの音にトーマスが扉を開けると…


「すみません…至急お知らせが…」


慌てる従者にマリーを起こしてはいけないとジェラート達は外へと出た。


「それで何が？」


自室へと歩きながら話を聞くと…


「それが引き取った子供の事ですが…部屋を探したのですがその姿が確認できず…」


汗をかきながら必死に説明すると


「部屋から出たのか？」


「い、いえ…ずっと扉の前で待機しておりましたのでそんな事は無いと思うのですが…」


自信がないのかしどろもどろに答えると


「とりあえず見に行きましょう」


トーマスが地下室へと順路を変えた。


地下室の前には従者達が青い顔で立っていた。


「申し訳ございません」


ジェラート様の姿をみて慌てて頭を下げる。


「謝るのは後でいい！今は子供を探すんだ！」


地下室へと入ろうとすると…


「フローラはここにいなさい」


着いてこようとするフローラを止めると


「ですが！」


「もし外に出たら教えて欲しい、だから君はここに」


従者に声をかけるとフローラを置いて中へと入っていってしまった。


ジェラート達は薄暗い部屋に入ると明かりを灯らせる、部屋が照らされ周りを確認するが確かに子供の姿が確認出来ない。


「一体どこに…」


そんなに物のない部屋を隅から隅まで確認していくと…


「旦那様！」


トーマスが何かを見つけて声をかけた。


「居たか！？」


ジェラートはトーマスの声の方に駆け寄ると…そこには荷物に隠されて見えなかった小さな穴が壁に開いていた。


「これは…」


「どうやら壊れて崩れてしまっていた様ですね…大人は通れそうにありませんが…子供なら…」


体の大きな大人達はその小さい穴を覗き込んだ…