弟

ジェラートに連れられてフローラは外に出ると…そこにはもう一台馬車があった…


「これは…？」


フローラが近づこうとすると、ジェラートが止める。


「この中にはあの子が入っているんだよ、一緒の馬車に乗りたかったのだがあの子が拒否して暴れてね…人が怖いみたいなんだ…」


「可哀想に」


「ずっとご飯だけ与えられて放置されていたらしい…髪も服もボロボロなんだが、触られる事を嫌がって…どうしたらいいものか…」


ジェラートが頭を抱えると、トーマスが馬車から降りてくる。


「どうだった？」


ジェラートが様子を聞くと


「駄目ですね、端に隠れて出てきません。このまま馬車を動かして部屋の横につけましょうか？」


「それしか無いな…」


ジェラートは頷くと


「では用意した部屋は…」


「もう少し慣れてからだな。テオドールやマリーもまだ会わないように言っておかないと…」


フローラは頷くと


「テオドールさんは優秀ですから、わかってくれますでしょう。マリーは小さいですからね…一人で行かないとは思いますが…」


「あの子は活発だからね…二人がこの子をみて傷つくところは見たくない…少し落ち着くまでは顔を合わせないようにさせておこう」


二人は頷きあった。




新しいきた子は陽の光も苦手らしく慣れるまではと地下の部屋に入れることになった…


「こんな部屋で可哀想だが…」


トーマスさんは地下の扉を開けると馬車を真横に着けて扉を開く。


しばらく様子を見ているとサッサっと何かが動く気配がした。


どうやら上手く部屋へと移動してくれたようだ。


馬車を退かして扉を閉めると…馬車を置きにその場を離れた。




その頃テオドールはパパの部屋へと通されていた。


「そう言う事でしばらくは地下には近づかないように」


ジェラートがテオドールに説明すると


「わかりました…しかし大丈夫ですか？マリーに危険などは…」


「大丈夫だ、あの子は人が嫌で近づこうとはしない。あの部屋から自分から出る事はないだろう。それに鍵をかけて閉じ込める様な事はしたくない…そうすればきっとこの先私達に心を開いてくれることはないだろう」


「わかりました…ですがお願いが、マリーの部屋に警備をお願いします…やはり何かあってからでは遅いですから」


「わかった、お前とマリーの部屋の警備を強化しておく」


「私なら大丈夫です」


テオドールが笑うと


「いや、お前も大事な私の息子だからね」


ジェラートは譲る気は無いと笑った。


「ところでマリーは？まだあの子の笑顔を今日は見ていないんだ…」


寂しそうにフローラを見つめると


「申し訳ございません。マリーはお昼ご飯の後に遊びながら寝てしまいまして…起こすのも可哀想なので…」


「そうか…それならしょうがないな…」


ジェラートはガッカリと肩を落とした…