【コミカライズ原作】君とは二度、恋に落ちる〜初めましての彼に溺愛される理由〜
巡り合わせ(4)
「そのことがあったから、私と奏は出会えたんだって思ったら、やっぱりなかったことにはできないよね」
否定してしまったら、奏が目の手術をしてデザイナーになることも、夢で私を見ることもなかった。そしたら、わざわざ私を探して会いに来てくれることも、私に恋をしてくれることもなかったのだから。
「だから、逆にすごいことだって思うことにしたの。私の大切な人が亡くなっちゃって、それで奏のことを助けたってことでしょ? 巡り巡って、なんか運命みたいだなって」
まるで、映画のようなフィクション。それくらい奇跡的な出来事に思えた。
「……そうだね。俺も彼に感謝してるよ。今こうして好きな仕事ができていることも、全部彼のおかげだから。前に話したことあるでしょ、やっぱり絵が好きだなって思えたきっかけがあったって。あれは、花梨のことを描くようになったからなんだ」
「そうなの……?」
部屋で見た何十枚にも及ぶ私の似顔絵。最初見た時は恐怖でどうにかなりそうだったけれど、その話を聞くと、何だかかけがえのないものに思えてきた。奏の人生に、私が影響を与えたのだから。
「それから、こうやって本物の花梨に出会えたことにも感謝しなきゃだよね。彼としては、俺が花梨と恋人になったのは本望じゃないかもしれないけど」
奏は微かに空気が漏れるように笑う。そこでやっと、重たい空気が和らいだ。
「そんなことないよ。たぶん、彼が私たちを出会わせてくれたのかなって思ってるから」
「……花梨が言うならそうなのかな。それじゃあ今度、改めてお礼を言いに行かないと。俺の目のこととか、花梨に出会わせてくれたこととか……伝えたいことたくさんあるし」
「うん……そうだね」
私にはなんとなくわかる気がする。誠は、優しい人だから。きっと、奏のことを悪く思ったりはしない。
ひととおり、自分の気持ちを伝え終わると、隣に座る奏の手に自らの手を重ねた。
「……ちょっといろいろ長くなったけど、今話したのが私の気持ち。これを伝えに来ました」
「わざわざ東京まで?」
「うん。早く伝えたかったから」
「その割には、だいぶ時間経ってる気がするけど」
ここまで来て意地悪言うの? なんて思ったけれど、全くその通りだ。口ごもってしまうと、奏が「冗談だよ」と笑う。
「もともとは俺が原因だし。でも……嬉しかった。会いに来てくれて。会えない間ずっと不安だったから……自分で連絡しなかったのに」
「それは……ごめんね」
「ううん、俺こそごめん。それから、俺の気持ちは話さなくても分かると思うけど……やっぱり花梨のことが好きだから、これからも一緒にいたいと思ってる。俺には花梨以外考えられないから」
「うん……私も」
「もう絶対嘘もつかないし、隠し事もしないって約束する。花梨のこと不安にさせない」
奏の真っ直ぐな言葉が、胸の奥に染み渡っていく。
頷くと互いの視線が絡み合い、こつんと額を合わせる。そのままゆっくりと、触れるだけのキスを交わした。
「……って、ここ外だよね」
周りを見れば、まばらに人が歩いていて、私たちだけではないことに気付かされる。けれど奏はまったく気にしていないようで、ごく自然に距離を詰めて来た。
「大丈夫、東京の人たちは周りのこと気にしないから」
「で、でも……」
「じゃあ、場所変えようか」
「え?」
「……まだ、俺と二人きりになるの怖い?」
奏がそう聞いてくれたのは、彼に対してストーカー疑惑の話があったからだろう。けれどそんな話、言われるまですっかり忘れていた。
「もう怖くないよ」
「……よかった。じゃあホテル行こうか」
奏が手をつないだまま立ち上がる。つられて立ち上がると、また一瞬、掠めるだけのキスをされた。
「っ、場所変えるって言ったばかりなのに……」
「ごめん、久しぶりだったから。それじゃ、行こう」
「うん……」
繋いだ手の指と指をしっかりと絡めて、来た道を戻っていく。ホテルまでは、どれくらいなのだろうか。早く奏に触れたくて、はやる心を紛らわすように、繋いだ手にぎゅっと力を込めた。
否定してしまったら、奏が目の手術をしてデザイナーになることも、夢で私を見ることもなかった。そしたら、わざわざ私を探して会いに来てくれることも、私に恋をしてくれることもなかったのだから。
「だから、逆にすごいことだって思うことにしたの。私の大切な人が亡くなっちゃって、それで奏のことを助けたってことでしょ? 巡り巡って、なんか運命みたいだなって」
まるで、映画のようなフィクション。それくらい奇跡的な出来事に思えた。
「……そうだね。俺も彼に感謝してるよ。今こうして好きな仕事ができていることも、全部彼のおかげだから。前に話したことあるでしょ、やっぱり絵が好きだなって思えたきっかけがあったって。あれは、花梨のことを描くようになったからなんだ」
「そうなの……?」
部屋で見た何十枚にも及ぶ私の似顔絵。最初見た時は恐怖でどうにかなりそうだったけれど、その話を聞くと、何だかかけがえのないものに思えてきた。奏の人生に、私が影響を与えたのだから。
「それから、こうやって本物の花梨に出会えたことにも感謝しなきゃだよね。彼としては、俺が花梨と恋人になったのは本望じゃないかもしれないけど」
奏は微かに空気が漏れるように笑う。そこでやっと、重たい空気が和らいだ。
「そんなことないよ。たぶん、彼が私たちを出会わせてくれたのかなって思ってるから」
「……花梨が言うならそうなのかな。それじゃあ今度、改めてお礼を言いに行かないと。俺の目のこととか、花梨に出会わせてくれたこととか……伝えたいことたくさんあるし」
「うん……そうだね」
私にはなんとなくわかる気がする。誠は、優しい人だから。きっと、奏のことを悪く思ったりはしない。
ひととおり、自分の気持ちを伝え終わると、隣に座る奏の手に自らの手を重ねた。
「……ちょっといろいろ長くなったけど、今話したのが私の気持ち。これを伝えに来ました」
「わざわざ東京まで?」
「うん。早く伝えたかったから」
「その割には、だいぶ時間経ってる気がするけど」
ここまで来て意地悪言うの? なんて思ったけれど、全くその通りだ。口ごもってしまうと、奏が「冗談だよ」と笑う。
「もともとは俺が原因だし。でも……嬉しかった。会いに来てくれて。会えない間ずっと不安だったから……自分で連絡しなかったのに」
「それは……ごめんね」
「ううん、俺こそごめん。それから、俺の気持ちは話さなくても分かると思うけど……やっぱり花梨のことが好きだから、これからも一緒にいたいと思ってる。俺には花梨以外考えられないから」
「うん……私も」
「もう絶対嘘もつかないし、隠し事もしないって約束する。花梨のこと不安にさせない」
奏の真っ直ぐな言葉が、胸の奥に染み渡っていく。
頷くと互いの視線が絡み合い、こつんと額を合わせる。そのままゆっくりと、触れるだけのキスを交わした。
「……って、ここ外だよね」
周りを見れば、まばらに人が歩いていて、私たちだけではないことに気付かされる。けれど奏はまったく気にしていないようで、ごく自然に距離を詰めて来た。
「大丈夫、東京の人たちは周りのこと気にしないから」
「で、でも……」
「じゃあ、場所変えようか」
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