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つくも茄子

45.~数百年後の偉人伝~


 ラウル

 初の平民出身の庶民宰相。
 平民の中でも最も貧しい地区の生まれであり両親が何処の誰かも分からない孤児であったため苗字がない。
 貧民街で生まれながら、その劣悪な環境に屈することなく王立大学に進学を果たす。彼の一度見たら忘れない絶対記憶力と他を圧倒する数学の才能があったからこそ成し遂げられた偉業ともいえよう。大学で生来の頭脳を発揮した。大学始まって以来の天才と謳われるようになるものの、その生活態度は決して褒められたものでは無かった。歓楽街に入り浸り停学させられそうになったこともあるが、時の宰相であるロジェス伯爵にその才を認められ、ロジェス伯爵の援助により大学院まで通う。
 
 卒業後は、王都ではなく、地方を希望し、国防の要の一つである辺境で事務官として勤務。
 その頃、地方役人たちの間では女遊びが盛んで、例に漏れずラウルも給料の殆どを現地の色町につぎ込んだ程のめり込んでいた。
 あまりに度が過ぎたのか、ラウルの行動は王都でも噂になる程で、遂に、ラウルのいる地域に王都から隠密での調査が入り、地方役人の一斉摘発が行われた。たかが女遊びで?と思うかもしれないが、実は、役人が裏社会と通じて人身売買を行っていたのだ。表向き娼館という事になっていたが、実際は人買いとの取引が行われていたのだ。
 
 その後、他の地域にもメスが入り王国に巣くっていた人身売買の犯罪は無くなった。
 ラウルは、この事を評価されて王都に戻ると「宰相府」の勤務という花形の出世コースにのる。これは異例の出世であった。訝しげにする人々も多くいた。「ラウルは王都からの密偵だったのではないか?」という噂が囁かれ始めたのもこの頃からだ。真偽のほどは今もって分からない。隠密であった事が本当であっても何も悪いものではない。彼は己の役目も果たしているのだから。
 かといって、ラウルの女遊びがカモフラージュかというと「違う」と言える。
 彼は根っからの女好きだ。
 その証拠に宰相となった後も、度々、スキャンダルを起こしている。
 相手は様々だ。
 高級娼婦であったり、社交界の花である貴族令嬢あったり、どこその上流婦人であったり、自分付きのメイドであったり、花屋の娘だったり、と色々だ。あまりの女好きに、非難が集まる以上に驚きの方が勝る有り様。
 
 彼の最もスキャンダルな事は「結婚」であった。
 相手は元娼婦。
 地方勤務での馴染みの娼婦であった。
 名前は『ライ』といい、周りが何と言おうと決して別れる事はなかった。
 結婚後も浮気を繰り返していたラウルだが、妻にはめっぽう弱く、彼女のいう事には従順だった。

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