婚約者様の仰られる通りの素晴らしい女性になるため、日々、精進しております!
9.記憶力と目が悪い子息
驚きました。
一年以上会わない間に、婚約者様は私のことを忘れ果てておいででした。
ショックで言葉に出来ず佇んでいる私に気が付いたスコット侯爵様から、「バーバラ嬢、一年会わない間に随分と綺麗になったね」とお褒めにあずかりました。スコット侯爵様から出た名前によって、私が誰なのか漸く気付かれた婚約者様は更におかしなことを言いだしたのです。
「はぁ~~~~~~? お前があの『豚』か? 変わり過ぎだろ? なにか変なもんでも食べたんじゃないだろうな?」
婚約者様は私が拾い食いでもすると思っているのでしょうか?
「それともあれか? 今、女の間で流行している『魔法のサプリメント』というやつか?」
なにやら盛大な誤解をされていらっしゃいます。
確かに、最近、痩せることで定評にある「魔法のサプリメント」です。豆のような大きさの粒状のもの。1粒飲むだけで劇的な効果があると評判ですが……。
「あんなものに頼るなど、貴様は努力をせん女だな!」
いえいえ。努力で得たものですよ?
「まったく。それでも前よりはマシになったようだから、その心意気に免じてやろう… <<バキッ!!!>> …」
そうして再び始まる壮絶な親子喧嘩。
一年前の再現再びです。
「お前は <<ドカッ!>> いったい何様のつもりだ? <<ドカッ!>> ああ? <<ドカッ!>> バーバラ嬢が <<ドカッ!>> お前の不要な言葉のせいで <<ドカッ!>> 過酷な体重減量に励んでいると <<ドカッ!>> 何度も何度も話しただろう <<ドカドカッ!>> 何が薬に頼っただと? <<ドカッ!>> お前の耳はなんだ? <<ドカドカッ!>> 飾りか? <<ドカドカドカッ!>> ん?」
一年前以上にボロボロにされた婚約者様は、侯爵様の愛の拳を受け、失神してしまわれたのです。
平謝りする侯爵様には申し訳ありませんが、どうやら婚約者様は記憶力と目が大層お悪いように思われるので、
「お父様にお伝えすれば、直ぐにでもいい病院を紹介してくださいます。私から病状を伝えておきましょうか?」
と聞いみたところ、
「い、いや、侯爵家にも主治医がいるから大丈夫だよ」
と断られてしまいましたわ。
よく考えれば、侯爵家が懇意にしている医師らもおりますものね。婚約者同士といえども伯爵家が口出しすることではありません。かえって失礼な事を口走ってしまいましたわ。
けれど、侯爵様は何故か震えていらっしゃいました。
冷え性なのでしょうか?
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