ショートケーキは半分こで。〜記憶を失った御曹司は強気な秘書を愛す〜
10-2
安藤はもういない。海斗がコーヒーを飲み終わる頃に社長室のドアがゆっくりと開いた。尋問にでもあったような疲れ具合で羽美が戻ってきたのだ。海斗は羽美の顔色の悪さにすぐに気がついた。これは、いちゃついている場合ではない。
「大倉、ちょっとこっちに来て」
海斗は仮眠室のドアを開け、羽美を手招きする。
「社長どうかしましたか?」
「いいから、入って」
海斗は羽美の腕を取り仮眠室へと引っ張り込んだ。仮眠室に窓はなく、すぐに眠れるような環境になっているため薄暗い。シングルベットと三人掛けのソファーだけが置かれている静かな空間だ。羽美は初めて入った仮眠室を物珍しそうにキョロキョロと見渡している。
「あの、社長お疲れですか? だったらこの後はまだ時間がありますので少しお休みになられても大丈夫ですよ」
「俺じゃない、休むのはお前だ。顔色が悪いけど大丈夫か? なにか嫌なことあの二人に言われたとかじゃないだろうな? そしたら俺が言ってきてやるから」
「いえ、ただ普通に世間話をして、仕事のことを聞かれたくらいですよ。私、顔色悪いですかね? ファンデーションの色が合っていなかったのかもしれません」
羽美はヘラっと誤魔化すように笑った。
「本当か?」
「本当ですよ、まぁしいて言えば、社長が私のことを彼女だって紹介してくれていたことに驚きました。すごく嬉しかったです」
羽美はキラキラした笑顔を海斗に向けた。その瞳があまりにも輝いてみえたので海斗は恥ずかしくなり、ぱっと顔を逸した。
「……ここで少し休んでろ」
海斗は羽美をベットに引っ張り無理やり寝転ばせた。海斗は寝転ばせた羽美の横に座る。
「いや、本当に、私は大丈夫ですからっ! ここは社長専用の仮眠室ですし、スーツもほら、シワシワになっちゃいますから」
羽美は急いで起き上がりベットから降りようとするので海斗は羽美の手を取り動きを止めた。
「大倉ストップ。これ社長命令だから。ちょっと待ってろ」
海斗は立ち上がりソファーの上に置いてあった自分のスウェットを羽美に手渡した。
「スーツが皺になるのはよくない。俺のだけどこれに着替えて少し休め」
羽美は大きく目を見開いた。
「しゃ、社長のですか?」
「臭くは無いと思うけど、あ〜、確かに俺の着たやつなんて嫌だよな」
配慮に掛けていたことに気が付き海斗は羽美の手からスウェットを取ろうとしたが羽美がギュッと握って離さない。
「着ます! 着させてください!」
羽美は顔を真っ赤にして海斗を見る。薄暗い部屋でもよく分かるくらい頬が染まっていて、可愛い。
海斗の心臓がドクンと高鳴った。
「あ、あぁ。じゃあ俺は仕事してるから一時間くらいしたら起こしに来るよ。なにか欲しい物とかあったら言ってくれ。飲み物とかもってくるから」
ドキッとしてしまったことを悟られないように海斗は羽美に背を向けドアノブに手を掛けると「ちょっと待ってください!」と羽美に引き止められた。やっぱり臭いからやめおきますとか言われるのだろうか。海斗は振り向かずに「どうした?」と返事をした。
「社長、そのままこっちを見ないで待っててください。絶対こっちを向いちゃ駄目ですよ!」
「あ、あぁ。分かったけどなんでだ?」
シュルシュルと衣類の擦れる音がする。
(まさかと思うが今、着替えているのか? まじで? 見たい……見たいけれど見るなと言われたし……っ)
グヌヌ、と目をギュッと瞑り、見たい衝動を海斗は必死で堪えた。けれど目を瞑ると耳が研ぎ澄まされてしまい、羽美の吐息の音でさえ、淫靡に聞こえてしまう。
(ああ、だめだ、だめだ。ここに入れたのは大倉の顔色が悪かったからで、決してエロい事をしようとしたわけじゃないんだから。うん、そう、しちゃダメだ!)
悶々と脳内で煩悩と戦う海斗の背中が温かくなった。
「えっと……お、おくら?」
今、後ろからぎゅっと抱きつかれているのは間違いではないだろうか。海斗は驚きのあまり声を詰まらせた。細くて折れそうな腕が自分の身体を抱きしめている。背中に感じる熱が熱い。
「この服、本郷さんの匂いがしてすごい落ち着きます。本郷さん……」
海斗を後ろから抱きしめている羽美がボソボソと背中に吐息を当てながら話す。
(かわいすぎるだろうが! よく考えたらこれって彼シャツとかいうやつ? 見てぇ。でも見たらやばいよな、堪えろ俺)
「ん」
海斗は爆発しそうな理性を保つのに短く返事をするので精一杯だ。
「大好きです。こうして心配してくれる優しい本郷さんが大好き。こうしてずっと貴方の隣にいたいです」
海斗はそっと身体の向きを替えて羽美と向き合った。瞳を潤ませ、自分と目が合った瞬間に羽美はニッと笑う。こんなの反則だろう。堪えていた海斗の理性にピシッとヒビが入った。
「んっ――」
羽美の身体を引き寄せてきつく抱きしめる。華奢で折れてしまいそうな身体を包み込むと甘い吐息が漏れた。羽美の唇に自分の唇を押し付けるように重ねる。可愛くて、素直で、愛おしくて堪らない。海斗は羽美の唇を貪るように喰み、舌を絡ませた。何度も何度も角度を変えて息が苦しくなるほど絡ませる。
「っはぁ……ほ、んごうさん」
唇を離すと羽美の唇が真っ赤なバラのように艷やかに染まってる。
(あぁ、駄目だ。可愛すぎるだろう)
海斗はスルリと羽美の太腿に手を這わせた。スウェットの上しか着ていない羽美の晒された太腿は柔らかく、手のひらに吸い付いてくるよう。
動く手が止まらない。駄目だと頭では思っているのに、手が勝手に羽美の背中へ回る。
「あっ……」
羽美の小さな声が、官能を沸き立てる。
身体を引き寄せ、艶めいた小さな声が出ている唇を塞ぎ込んだ。
可愛い、可愛い、可愛い。抱きたいっ!!!
どうしてここが会社なんだと激しく後悔した。会社じゃなければ今すぐに抱いていただろう。
熱を持った唇を離し、海斗は羽美を見つめる。
「……今夜、時間あるか?」
かぁっと顔を赤くして、目を大きく見開いた羽美。艶めいた唇から「空いてます」と小さく呟いた。海斗は羽美を愛おしげに抱きしめ、耳元で囁く。
「……今夜、おもいっきり抱かせてもらうから。今は、少し休め」
羽美はコクリと頷いた。
「……じゃあ、少しだけ休憩もらいます」
「後で起こしに来る」
名残惜しいが、海斗は羽美から身体を離し、部屋を出た。バタンと確実に閉まったドアを確認し早足で自分のデスクまで行きボスンと勢いよくワークチェアに座り、額をデスクに押し当てる。
(よく堪えた俺! 死ぬかと思った! 可愛すぎんだろ、なんだよ俺の匂いって、彼シャツ最高かよ! あぁっ、今夜が待ち遠しい!)
人を好きになることなんてないと思っていた。他人と一緒に暮らさないといけない結婚に全く興味がなく、自分のことを惚れさせて見せるなんて言っていた羽美をあざ笑って居たあの頃が嘘みたいだ。
「鎮まれ、俺……」
スーツを盛り上げる下腹部の熱、バレてなくて良かったと海斗はほっと胸をなでおろした。
「大倉、ちょっとこっちに来て」
海斗は仮眠室のドアを開け、羽美を手招きする。
「社長どうかしましたか?」
「いいから、入って」
海斗は羽美の腕を取り仮眠室へと引っ張り込んだ。仮眠室に窓はなく、すぐに眠れるような環境になっているため薄暗い。シングルベットと三人掛けのソファーだけが置かれている静かな空間だ。羽美は初めて入った仮眠室を物珍しそうにキョロキョロと見渡している。
「あの、社長お疲れですか? だったらこの後はまだ時間がありますので少しお休みになられても大丈夫ですよ」
「俺じゃない、休むのはお前だ。顔色が悪いけど大丈夫か? なにか嫌なことあの二人に言われたとかじゃないだろうな? そしたら俺が言ってきてやるから」
「いえ、ただ普通に世間話をして、仕事のことを聞かれたくらいですよ。私、顔色悪いですかね? ファンデーションの色が合っていなかったのかもしれません」
羽美はヘラっと誤魔化すように笑った。
「本当か?」
「本当ですよ、まぁしいて言えば、社長が私のことを彼女だって紹介してくれていたことに驚きました。すごく嬉しかったです」
羽美はキラキラした笑顔を海斗に向けた。その瞳があまりにも輝いてみえたので海斗は恥ずかしくなり、ぱっと顔を逸した。
「……ここで少し休んでろ」
海斗は羽美をベットに引っ張り無理やり寝転ばせた。海斗は寝転ばせた羽美の横に座る。
「いや、本当に、私は大丈夫ですからっ! ここは社長専用の仮眠室ですし、スーツもほら、シワシワになっちゃいますから」
羽美は急いで起き上がりベットから降りようとするので海斗は羽美の手を取り動きを止めた。
「大倉ストップ。これ社長命令だから。ちょっと待ってろ」
海斗は立ち上がりソファーの上に置いてあった自分のスウェットを羽美に手渡した。
「スーツが皺になるのはよくない。俺のだけどこれに着替えて少し休め」
羽美は大きく目を見開いた。
「しゃ、社長のですか?」
「臭くは無いと思うけど、あ〜、確かに俺の着たやつなんて嫌だよな」
配慮に掛けていたことに気が付き海斗は羽美の手からスウェットを取ろうとしたが羽美がギュッと握って離さない。
「着ます! 着させてください!」
羽美は顔を真っ赤にして海斗を見る。薄暗い部屋でもよく分かるくらい頬が染まっていて、可愛い。
海斗の心臓がドクンと高鳴った。
「あ、あぁ。じゃあ俺は仕事してるから一時間くらいしたら起こしに来るよ。なにか欲しい物とかあったら言ってくれ。飲み物とかもってくるから」
ドキッとしてしまったことを悟られないように海斗は羽美に背を向けドアノブに手を掛けると「ちょっと待ってください!」と羽美に引き止められた。やっぱり臭いからやめおきますとか言われるのだろうか。海斗は振り向かずに「どうした?」と返事をした。
「社長、そのままこっちを見ないで待っててください。絶対こっちを向いちゃ駄目ですよ!」
「あ、あぁ。分かったけどなんでだ?」
シュルシュルと衣類の擦れる音がする。
(まさかと思うが今、着替えているのか? まじで? 見たい……見たいけれど見るなと言われたし……っ)
グヌヌ、と目をギュッと瞑り、見たい衝動を海斗は必死で堪えた。けれど目を瞑ると耳が研ぎ澄まされてしまい、羽美の吐息の音でさえ、淫靡に聞こえてしまう。
(ああ、だめだ、だめだ。ここに入れたのは大倉の顔色が悪かったからで、決してエロい事をしようとしたわけじゃないんだから。うん、そう、しちゃダメだ!)
悶々と脳内で煩悩と戦う海斗の背中が温かくなった。
「えっと……お、おくら?」
今、後ろからぎゅっと抱きつかれているのは間違いではないだろうか。海斗は驚きのあまり声を詰まらせた。細くて折れそうな腕が自分の身体を抱きしめている。背中に感じる熱が熱い。
「この服、本郷さんの匂いがしてすごい落ち着きます。本郷さん……」
海斗を後ろから抱きしめている羽美がボソボソと背中に吐息を当てながら話す。
(かわいすぎるだろうが! よく考えたらこれって彼シャツとかいうやつ? 見てぇ。でも見たらやばいよな、堪えろ俺)
「ん」
海斗は爆発しそうな理性を保つのに短く返事をするので精一杯だ。
「大好きです。こうして心配してくれる優しい本郷さんが大好き。こうしてずっと貴方の隣にいたいです」
海斗はそっと身体の向きを替えて羽美と向き合った。瞳を潤ませ、自分と目が合った瞬間に羽美はニッと笑う。こんなの反則だろう。堪えていた海斗の理性にピシッとヒビが入った。
「んっ――」
羽美の身体を引き寄せてきつく抱きしめる。華奢で折れてしまいそうな身体を包み込むと甘い吐息が漏れた。羽美の唇に自分の唇を押し付けるように重ねる。可愛くて、素直で、愛おしくて堪らない。海斗は羽美の唇を貪るように喰み、舌を絡ませた。何度も何度も角度を変えて息が苦しくなるほど絡ませる。
「っはぁ……ほ、んごうさん」
唇を離すと羽美の唇が真っ赤なバラのように艷やかに染まってる。
(あぁ、駄目だ。可愛すぎるだろう)
海斗はスルリと羽美の太腿に手を這わせた。スウェットの上しか着ていない羽美の晒された太腿は柔らかく、手のひらに吸い付いてくるよう。
動く手が止まらない。駄目だと頭では思っているのに、手が勝手に羽美の背中へ回る。
「あっ……」
羽美の小さな声が、官能を沸き立てる。
身体を引き寄せ、艶めいた小さな声が出ている唇を塞ぎ込んだ。
可愛い、可愛い、可愛い。抱きたいっ!!!
どうしてここが会社なんだと激しく後悔した。会社じゃなければ今すぐに抱いていただろう。
熱を持った唇を離し、海斗は羽美を見つめる。
「……今夜、時間あるか?」
かぁっと顔を赤くして、目を大きく見開いた羽美。艶めいた唇から「空いてます」と小さく呟いた。海斗は羽美を愛おしげに抱きしめ、耳元で囁く。
「……今夜、おもいっきり抱かせてもらうから。今は、少し休め」
羽美はコクリと頷いた。
「……じゃあ、少しだけ休憩もらいます」
「後で起こしに来る」
名残惜しいが、海斗は羽美から身体を離し、部屋を出た。バタンと確実に閉まったドアを確認し早足で自分のデスクまで行きボスンと勢いよくワークチェアに座り、額をデスクに押し当てる。
(よく堪えた俺! 死ぬかと思った! 可愛すぎんだろ、なんだよ俺の匂いって、彼シャツ最高かよ! あぁっ、今夜が待ち遠しい!)
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