「死」んだら「神」になるようで

行方不明

第九話~お散歩がてら地獄旅行~


「ショウ!こっち!」

見覚えのある少年と階段を駆け上がる。

「早く!アイツが来ちゃう!」

アイツ・・・?一体誰が・・・。

階段を駆け上った先は神社だった。

「・・・着いた!よし、ここに入って!きっとショウを助けてくれるはず!」

少年が御扉を開き、オレを中へ突き飛ばす。

「お、おい!お前はどうするんだよ!」
「大丈夫、僕はこういう運命だから。」

そう言って、少年は御扉を閉め始める。

「おい!待てって!」

少年はニコリと笑う。

そして扉は完全に閉ざされた。




******



ピンポーン

「・・・。」

ピンポーン

「・・・んぁ?」

ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ

「なんだなんだ 」

ベッドから飛び起き、急いで玄関へ向かう。
そしてドアを開けると、鎌を持ったガヴ・・・と三人の子供がいた。

「おはようございます。いい夢は見れましたか?」
「いや、今まな板天使が家の前にいる悪夢を見てる。」

ビリリッ

「目は覚めましたか?」
「は・・・はい・・・美少女天使が起こしに来てくれています・・・。」

目覚ましを受けて、身体が痺れている。

「で、お前と一緒にいるのはなんなんだ?」
「今回の依頼ですよ。」
「子守りの依頼かなんかか?」
「違います。昨日言っていた通り、犬の散歩ですよ。」
「いやいや、完全に人の姿なんですけど。」
「耳も尻尾も隠しているから見えないだけですよ。
 三人とも尻尾を出してみてください。」

子供たちはこくりと頷く。
そしてポンという音と共に尻尾が出てくる。

「あー、風丸かざまるたちと一緒のタイプか。」
「これでわかったでしょう?はい、これが依頼の手紙です。」

渡された手紙を読んでみる。

『こんにちは!
 少し用事が入っちゃったので散歩とかやっといて!
                     閻魔』

「依頼主閻魔かよ!だったら彼千代かれちよさんに頼めばいいのに・・・」
「その彼千代さんと旅行に行っているらしいですよ。」
「ふざけんな、ただの流れ弾じゃねーか。」
「まぁまぁ、仕事が来ないよりはいいじゃないですか。」
「オレにとっては来ない方が嬉しかったな。やりたくねぇ。」
「じゃ、頼みましたよ。」
「おい、やっぱりオレの意見は無視か。」

ガヴは子供を残し『瞬間移動テレポート』する。

「・・・はぁ、仕方ねーか。で、お前ら名前は?」
「あ、自己紹介ね。」

三人がこちらを向く。

「オレは長男のカイ!」
「僕は次男のケイ。」
「わ、私は長女のクゥ!」
「「「三人合わせて、地獄の番犬ケルベロス三兄妹!」」」

三人はビシッと決めポーズのようなものをとる。

「あ、あぁ、わかったわかった。てかお前らケルベロスかよ。」
「そうだよ。恐ろしいだろ?」
「いやまったく?」
「そうかそうか恐ろしいかー!」
「おい、聞こえなかったフリをするな。」
「で?お兄さんが今回の遊び相手?」
「まぁ、頼まれちゃったからそうなるな。」
「じゃ、早速遊びに行こーぜ!」

そう言って一人でどこかに走り出すカイ。

「・・・えーっと、カイが行っちゃったけど大丈夫なの?あれは。」
「大丈夫だよ。いつものこと。」
「あ、そうなの。」
「しばらくしたら泣きながら戻ってくるよ。」
「情けねぇ長男だな。某鬼退治漫画とはえらい違いだ。
 それよりも・・・オレはクゥちゃんに嫌われてるの?」

クゥちゃんは自己紹介以降ケイの後ろに隠れている。

「違うよ。ただの人見知り。」
「それなのによくあの自己紹介をしたもんだよ。」
「クゥが心を開くまでには時間がかかるから頑張って。」
「他人事みたいに言いやがって・・・。」
「あ、カイが帰ってきた。」
「お~い~、グスッ・・・なんでみんなついてきてくれないんだよ~。」

半べそをかきながらカイが戻ってくる。

「はいはい、わかったから。どこに行きたいんだ?」
「お!来てくれるのか!じゃ、地獄めぐり行くぞ!」

そしてカイはまた走り出す。

「おーい、勝手に行くなよー!
 ・・・お前らは兄があんなんでいいの?」
「日常茶飯事だし、もう慣れた。」
「あ、そう。」

じゃ、さっさとカイを連れ戻して地獄めぐりといくか。

・・・ん?地獄めぐり?

不安が頭をよぎる。

落ち着け、まだわからない。意外と安全かもしれないし・・・な。

「お~い~、グスッ・・・なんでまた来てくれないんだよぉ~。」
「勝手に行くからだよ。僕たちだってペースがあるんだ。」
「なんだよぉ、そっちのペースが遅すぎるだけだろぉ。」
「カイにぃに振り回される僕たちの気持ちも考えてよ。」
「ちょ、ちょっと・・・お兄ちゃん、ケンカしないで・・・。」

クゥちゃんが注意したが、それも空しく殴り合いのケンカが始まってしまった。

・・・はぁ、これから大変そうだ。
てか、鎌渡せよ。

******



電車に乗り、地獄まで移動する。
あまりの暑さに上着を脱ぐ。

「ここが地獄だよ。」
「すげー暑いんだけど。大丈夫か?熱中症で死なない?」
「大丈夫大丈夫、死んだらここに来るだけだから!」
「何も大丈夫じゃねぇ。」
「じゃ、地獄を見ていこう!」

駅からすぐに大きな門があった。
そこには牛と馬の被り物をした門番が二人立っていた。

「おーい!ゴウ、ここ開けてくれ!」

カイは牛の被り物をした男に話しかける。

「ん?あぁ、カイか。別にいいんだけど、一緒にいる奴の説明をしてくれ。」
「コイツは今回の遊び相手だよ。」
「コイツとはなんだ、ショウと呼べ。」
「おぉ、そうか。それならいいんだ。アシュ、開けるぞ。」
「ん、わかった。」

門は二人によって音を立てながら開いていく。
同時に、中からの熱気が流れてくる。
開ききった頃には駅を降りた時よりもさらに暑くなっていた。

「よし、通りな。」
「ありがとう!」

カイはルンルンと門を通っていく。
それに続くようにケイとクゥちゃんも進んでいく。

「また先に行きやがって・・・」
「あー・・・お兄さん、ショウって言ったっけ?」

牛の方がオレに話しかける。

「服装を見る限りあんた、死神だろ。」
「あ、あぁ、そうだけど何か?」
「いや、ちょいとばかり慰めにな。」
「慰め?何に対して?」
「アイツらの世話係になったことだよ。
 俺も昔やったことあるんだが、へとへとになったな。
 カイはまんまだけど、ケイとクゥも同じような感じだぞ。」
「え?おとなしそうに見えるけど・・・」
「いやいや、あんなの表面だけだ。本質は三兄妹全員一緒だよ。」
「えぇ・・・。」
「ま、頑張りな。」

牛の方は親指を立てる。

何もよくはないのだが。

そしてオレが門をくぐろうとすると、今度は馬の方に止められる。

「な、なに?」
「ん、差し入れ。」

馬の方から小袋を渡される。
中身は”地獄”と焼き印をされた饅頭が入っていた。

「こ、これは?」
「地獄饅頭。アイツらの好物だから、困ったときはそれあげな。」
「あ、ありがとう・・・。」
「ん、行ってらっしゃい。」

二人に見送られながら門の先へと進む。
門の先では、またカイが泣いていた。

「おーい、大丈夫か?」
「ショウ・・・グスッ・・・。」
「はいはい、わかったから。誰もついてこなくて寂しかったのか?」

カイはこくりと頷く。

「大丈夫、ちゃんと一緒にいるから。」

カイを抱きしめ慰める。

「でも、先に行かれたらついていけないからな。先に行くなよ?」
「・・・うん。」
「よし、じゃあ地獄めぐりしようか。」
「うん!」

はぁ、まるで保育実習でもしてるようだ。

また先に行かないようにカイを肩車する。

「それで、さっきの牛と馬の被り物した奴らはなんなんだ?」
「地獄の門の門番、牛頭と馬頭だよ。
 牛のを被ってるのはゴウ、馬のを被ってるのはアシュって言うんだ。」
「門番がいるならお前らいらなくね?」
「ううん、ゴウとアシュは地獄の門だけの担当、
 俺たちは地獄全体が担当なんだ。」
「お前ら仕事してんのか?」
「いーや?ほとんど仕事ないから暇なんだー。」
「そうそう、ゴウたちみたいに迷い人の案内もない。」
「地獄の番犬がこんなとは・・・世も末だな。」

さらに先に進んでいくと、風景の割合の大半が溶岩になってきた。

「暑さの原因はコレか。てかなんで溶岩があんだよ。」
「地獄だから。」
「マイ〇ラみたいだな。なに?要塞とかあんの?」
「要塞じゃなくてお城ならあるよ。」
「お城って・・・なんでどいつもこいつも城持ってんだよ。」
「そりゃ、ここでいっちばん偉い人なんだからあるでしょ?」
「その一番偉い人って誰なんだ?」
「そこに住んでるのは鬼童丸様。オレらの飼い主様だよ。」
「いや、お前ら閻魔の犬じゃないのかよ。」
「言い方もうちょっとなかった?」
「もともとは閻魔様に預けられる予定だったんだけど、
 なんかショウのとこ行ってこいって言われたんだ。」
「やっぱり丸投げしてきやがったのかアイツ。」
「ま、閻魔様よりかはショウの方が気楽でいいけどね。」
「うーん、なめられてるのかな?」
「あながち間違いじゃない。」
「否定しろよ。」

暑さで倒れそうになりながらも、進んでいくと街にたどり着いた。
一番奥には大きな城が見える。
街は門があり、塀に囲まれているが、門番らしき人はいない。

「あれ?門あるのに門番いなくね?」
「そりゃそうだよ。オレたちが担当だもん。」
「おい、仕事しろよ。」
「大丈夫大丈夫、オレたちがいなくても街の人なら返り討ちにするでしょ。」
「やっぱりお前らいらなくね?」
「ペット要因として活躍してるよ。」
「もう地獄の番犬名乗るの止めろ。」

街の中は瓦屋根の和風な家が多かった。
おそらくは城下町のような感じなのだろう。

「ここ歩いてると、修学旅行を思い出すなー。」
「もしかしてショウって修学旅行でここ来た?」
「こんなところ来てたまるか。」
「こう見えても旅行地として人気なんだよ?」
「お前らの世界限定だろ、それは。オレがもともといたのは人間界だからな。」
「えぇ ショウって元人間だったの?」
「いや、そんなに驚くか?」
「だって全然死神っぽくないもん。鎌も持ってないし。」
「それは渡されてないだけだ。」
「今までの死神とは全然違う。」
「たしかに・・・ショウさんは親しみやすい・・・。」

自己紹介振りにクゥちゃんがしゃべった。感動。
親しみやすいって言うんだったら、もっと話しかけてもらってもいいのに・・・。

「風丸も言ってたけど、他の死神はほんとにどうなってんだよ。」
「風丸と知り合いなの?死神なのに凄い!」
「どういう基準?」
「風丸って結構な死神嫌いなんだよ。」
「それなのに風丸さんと友達になるなんて・・・すごい・・・!」
「え?初対面から結構フレンドリーだったけど・・・」
「死神っぽくないオーラが出てたんじゃない?」
「それは喜んでいいのか?」
「もちろん!とてもいい意味だから。」
「ここまで言わせるほどの性格なら逆に会ってみてぇよ。」

ガヴによると、神凪町担当の死神がもう一人いるらしいしな。
会ってみたいけど・・・そういえば、風丸に”気を付けろ”って言われてたな。
まぁ、いつか出くわすだろ。
それまでは呑気に遊んで・・・

「それじゃ、ショウ。鬼童丸様のところに行こ!」
「いや、もうしばらくはお偉いさんには会いたくない。」
「じゃあ咬むよ?」
「理不尽すぎない?クゥちゃんそんなこと言う子だったの?」
「だったら行こうよ。」
「はいはい、わかった。行くよ。」
「よーし!じゃあ」

「「「”伊吹いぶき城”にしゅっぱーつ!」」」

テンションの高い三人を連れ、街の奥の城へと歩いていく。

「ん?アンタ、もしかして新入りか?」

団子屋の前を通ると、串を咥えている黒コートに話しかけられる。

「あ・・・ハジメ・・・。」
「し、死神だ・・・なんでここに・・・。」
「ひっ・・・!」

クゥちゃんはサッとオレの後ろに隠れる。

いつか会うだろうとは言ったけどさ・・・



いくらなんでも早すぎるだろ!

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