売れ残り同士、結婚します!
18話 謝罪
*****
「大河原さん!」
「……?あ、山田さん」
ある日の仕事帰り、あの公園のところで山田さんが声をかけてきた。
また仕事中なのだろうか、コートの下のスーツの胸には弁護士バッチが光っている。
「寒い中すみません、どうしても大河原さんに謝らないといけないことがあって」
私を見かけて走ってきたのか、マフラーが解けかかっている。
「あ、あの。茅ヶ崎から聞いてると思うんですけど……」
「はい。居酒屋でのことですよね?すみません。盗み聞きするつもりはなかったんです」
「いえ、あれは僕らが悪かったんです。誰が聞いているかもわからない場で、憶測で言っていい内容では無かったんです。茅ヶ崎に確認もせず、大河原さんを傷つけてしまいました。たとえあの場に大河原さんがいなかったとしても、するべき会話ではなかった。本当に申し訳ありませんでした」
「いえそんな。山田さんが悪いわけではありませんから。頭あげてくださいっ……」
ガバッと頭を下げた山田さんに、申し訳なくてあわあわしてしまう。
「いえ、居酒屋で走って行った方がもしかしたら大河原さんかもしれないと思って、茅ヶ崎に慌てて電話したのですが伝えておくと言われただけで。どうしても直接謝りたかったんです。先日茅ヶ崎にもこってりと叱られまして。まさか茅ヶ崎に本命の相手がいたとは知らずにご迷惑をおかけしました」
「本当にもういいんです。山田さんが言っていたことも本当だったみたいですし、全部彼から聞いたので解決してますから。むしろ山田さんの楽しい時間と場をぶち壊してしまって、私の方が謝らないといけないんです。本当に申し訳ありませんでした」
「そんな、大河原さんが謝る必要はありません」
「いやでも……」
お互いに誤り倒しているうちにおかしくなってきて、二人でくすりと笑う。
「これじゃあ永遠に終わらないですね」
「本当ですね。じゃあもう、お互い謝ったのでもう気にしないと言うことで。ここで終わりにしましょうか」
「はい。そうしましょう」
笑いながら一度会釈をすると、山田さんもお返しにと会釈してくれた。
これで解決だ。
「僕の方から話しかけておいてアレですけど、これ以上話してるとまた茅ヶ崎に人の婚約者とどうのこうのって言われてしまいそうなので、こちらで失礼します」
「ふふっ、そうですね。わざわざ声をかけてくださってありがとうございました。冬馬……彼は私にとって本当に大切な人なんです。これからもご迷惑をおかけしてしまうかもしれませんが、彼のことをよろしくお願いします」
「こちらこそです。よろしくお願いします。では、急に呼び止めてしまってすみませんでした。失礼します」
一礼してから仕事に向かっていく山田さんを見送り、私も駅に向かって再び歩き出す。
夜に冬馬から電話があり、
『アイツに何か変なこと言われなかったか?』
と前回と同じことを言われた。
「言われてないよ。この間のこと謝られて私も謝っただけ」
『そうか。山田からしずくに会ったって聞いてさ。また余計なことしてないかと思って』
「余計なことって?」
『しずくのこと、口説いてないかってこと』
「ははっ、そんなわけないじゃん」
『んなことあるんだよ。アイツは根っからの女好きだから』
「そうなの?そういう風にはあんまり見えなかったけど」
『そう見せないのがアイツの面倒なところなんだよ』
「なるほど……」
山田さんは女性関係に於いては相当信頼が薄いようで、冬馬はずっと私のことを心配していた。
お互い誤り倒してるうちに笑っちゃったなんて言ったら、意味がわからないと言われてしまいそうだ。
私に何事もなかったとわかると安心したように話題が移り、引っ越し日の話になる。
そこから派生していろいろ話が盛り上がってしまい、気が付けば深夜近くにまでなっていた。
「ごめんね忙しいのにこんな遅くまで」
『いや、俺の方こそごめん。明日も仕事だろ?』
「うん。お互い頑張ろうね。おやすみ」
『おやすみ』
電話を切って、過保護な冬馬に一つ笑ってから眠りに落ちる。
愛されてる。そう思えて嬉しかったなんて言ったら、冬馬は怒るかな。
「大河原さん!」
「……?あ、山田さん」
ある日の仕事帰り、あの公園のところで山田さんが声をかけてきた。
また仕事中なのだろうか、コートの下のスーツの胸には弁護士バッチが光っている。
「寒い中すみません、どうしても大河原さんに謝らないといけないことがあって」
私を見かけて走ってきたのか、マフラーが解けかかっている。
「あ、あの。茅ヶ崎から聞いてると思うんですけど……」
「はい。居酒屋でのことですよね?すみません。盗み聞きするつもりはなかったんです」
「いえ、あれは僕らが悪かったんです。誰が聞いているかもわからない場で、憶測で言っていい内容では無かったんです。茅ヶ崎に確認もせず、大河原さんを傷つけてしまいました。たとえあの場に大河原さんがいなかったとしても、するべき会話ではなかった。本当に申し訳ありませんでした」
「いえそんな。山田さんが悪いわけではありませんから。頭あげてくださいっ……」
ガバッと頭を下げた山田さんに、申し訳なくてあわあわしてしまう。
「いえ、居酒屋で走って行った方がもしかしたら大河原さんかもしれないと思って、茅ヶ崎に慌てて電話したのですが伝えておくと言われただけで。どうしても直接謝りたかったんです。先日茅ヶ崎にもこってりと叱られまして。まさか茅ヶ崎に本命の相手がいたとは知らずにご迷惑をおかけしました」
「本当にもういいんです。山田さんが言っていたことも本当だったみたいですし、全部彼から聞いたので解決してますから。むしろ山田さんの楽しい時間と場をぶち壊してしまって、私の方が謝らないといけないんです。本当に申し訳ありませんでした」
「そんな、大河原さんが謝る必要はありません」
「いやでも……」
お互いに誤り倒しているうちにおかしくなってきて、二人でくすりと笑う。
「これじゃあ永遠に終わらないですね」
「本当ですね。じゃあもう、お互い謝ったのでもう気にしないと言うことで。ここで終わりにしましょうか」
「はい。そうしましょう」
笑いながら一度会釈をすると、山田さんもお返しにと会釈してくれた。
これで解決だ。
「僕の方から話しかけておいてアレですけど、これ以上話してるとまた茅ヶ崎に人の婚約者とどうのこうのって言われてしまいそうなので、こちらで失礼します」
「ふふっ、そうですね。わざわざ声をかけてくださってありがとうございました。冬馬……彼は私にとって本当に大切な人なんです。これからもご迷惑をおかけしてしまうかもしれませんが、彼のことをよろしくお願いします」
「こちらこそです。よろしくお願いします。では、急に呼び止めてしまってすみませんでした。失礼します」
一礼してから仕事に向かっていく山田さんを見送り、私も駅に向かって再び歩き出す。
夜に冬馬から電話があり、
『アイツに何か変なこと言われなかったか?』
と前回と同じことを言われた。
「言われてないよ。この間のこと謝られて私も謝っただけ」
『そうか。山田からしずくに会ったって聞いてさ。また余計なことしてないかと思って』
「余計なことって?」
『しずくのこと、口説いてないかってこと』
「ははっ、そんなわけないじゃん」
『んなことあるんだよ。アイツは根っからの女好きだから』
「そうなの?そういう風にはあんまり見えなかったけど」
『そう見せないのがアイツの面倒なところなんだよ』
「なるほど……」
山田さんは女性関係に於いては相当信頼が薄いようで、冬馬はずっと私のことを心配していた。
お互い誤り倒してるうちに笑っちゃったなんて言ったら、意味がわからないと言われてしまいそうだ。
私に何事もなかったとわかると安心したように話題が移り、引っ越し日の話になる。
そこから派生していろいろ話が盛り上がってしまい、気が付けば深夜近くにまでなっていた。
「ごめんね忙しいのにこんな遅くまで」
『いや、俺の方こそごめん。明日も仕事だろ?』
「うん。お互い頑張ろうね。おやすみ」
『おやすみ』
電話を切って、過保護な冬馬に一つ笑ってから眠りに落ちる。
愛されてる。そう思えて嬉しかったなんて言ったら、冬馬は怒るかな。
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