ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

第35話:さやかパパ帰宅の理由とは


「やぁやぁ、すまないね。いつも家を空けてしまっていて」


 高鳥家の2階のリビングで、さやかパパは下の大きなローテーブルについた。

 これでこの家のことは少しわかった。
 椅子がある背の高いテーブルは主に さやかさん用。

 リビングの下の大きな屋久杉っぽいローテーブルは、さやかパパ用。3階の和室は、おじいちゃんおばあちゃん用ってとこか。

 そんな どうでもいいことを考えながら、俺はその屋久杉っぽい高級そうなローテーブルにつき、テーブルをはさんで さやかパパと向かい合って座っている。

 俺の横には、さやかさんがニコニコしながら座っている。

 これどういう状況!? まずは挨拶なのか!? しまった。俺はさっき1階の駐車場で名前を名乗ってしまった。


「あの、えっと。娘さんとお付き合いさせていただいている 狭間です」


 とりあえず、頭を下げて挨拶してみた。


「クックックッ、聞いてるよ、狭間くん。あのおやじに頭下げさせたんだって? やるな~、きみ」

「あ、いえ、全然そんな……」


 なんか俺 悪いヤツ!? 印象最悪なのか!?


「娘はやらんっ!」


 急に脈絡もなく さやかパパが、腕組みして険しい表情で言った。


「……」


 絶句する俺。多分、口が空いていると思う。


「あ、びっくりしたぁ?」


 一転、さやかパパがニヤリとして言った。


「もう、パパ!」

「いや、ほら、娘がいるんだから、一生に1度くらい言いたいじゃないか」


 あぁ、揶揄われたらしい。なんだか愉快な方だった。手口がさやかさんと似てるんだよ。彼女の原点はここなのか!?

 まだ気は抜けないけど、頭ごなしに全否定してくるタイプでなくてよかった。

 頭ごなしなしに全否定してくるタイプで思い出すのは、前の会社の社長だったなぁ。

 何をしてもダメって言われたし、とにかく変化を嫌ってたから、ちっとも変化がなくて、若いのが次々辞めていった。令和の世の中で平成どころか、昭和だった。

 専務の裕子さんは、そこまでないけど、彼女も頑固なとこはあったなぁ。

 はっ、いかんいかん。

 気が逸れた。今は、さやかパパだ!


「実際、僕なんかさ、嫁さんに一目ぼれしてさ、あ、嫁さんって さやかの母親ね?」

「あ、はい……」

「『娘はやれん!』って言われたから、僕が婿養子になって婿に行ったんだ」

「へぇ……」


 見た目とは違って、誠実で情熱的な人なのかもしれない。

 もしかして、それで一度「娘はやれん」って言ってみたかったのかな?


「うちは経営者家系だからさ、当然 娘も……ってなっちゃうよね。だから、きみは見込まれたっていうか、被害者っていうか、ね」

「は、はぁ……」


 なに、「被害者」って。不穏な単語が耳に入ってきたんだけど……


「娘がどんな人を見込んだのか興味あるよね。親として、経営者として」

「そ、そうなんですね」

「しかも、付き合うことにまでしたんでしょ? 相当な入れ込みようだ」

「ちょっ! パパ! やめてよ!」

「あ、ヤバイ。これ以上はホントに嫌われるやつだ。あの目! 狭間くんも覚えておきな」

「ははは……」


 なんか居心地が悪い。
 そう思っていたら、東ヶ崎とうがさきさんがコーヒーを出してくれた。


「あ、ありがと。あれ? きみは、東ヶ崎ちゃん? 今はコーヒーなんか淹れてるの!?」

「はい、今は、こちらで家政婦をさせていただいてます」

「え  家政婦してんの!? えー、それならうちに……あ、そうか。さやかか。そういうことか! そういうことなら、よろしく頼むよ、東ヶ崎さん」

「はい、精一杯サポートさせていただきます」



 なに? なんか、俺の分からない話が進んでるけど、口出しできる雰囲気じゃない。完全に俺は蚊帳の外という感じ。

 まぁ、必要があれば後で さやかさんが教えてくれくれるだろう。


「あ、さやか。例の買い物だけどな」


 あ、なんか話題が変わった。俺が追いつけていないままに新しい話題になった。


「あ、はい。どうでした?」

「買えたよ。だいぶ安売りしてた」

「そうですか! よかった」


 おじいちゃんにも何か買ってもらってたし、お金待ちはいいなぁ。

 そんな世間話を俺はコーヒーを飲みながら聞いた。


 さやかパパは、忙しい方みたいで、その日のうちにまた仕事でどこかに行ってしまった。

 本当に忙しい人みたいだ。

 結局、さやかパパは何しに帰って来たのか? 娘の顔を見に来たのかな? 強烈なキャラが前に出て、そこら辺が分からなかった。

 俺は、娘の彼氏として評価の程はどうだったのか!?
 さすがにそこは聞きたかったけど、聞く勇気もなかった。


コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品