ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

第32話:俺の努力の程とは


 俺は、クタクタになって帰ってきた。さやかさんもバイトを終えて帰ってきたみたいだ。

 食事をしながら、仕事の報告……と思ったら、食事の時間は食事に専念することにしましょうと言われ、肩透かしだった。

 俺はなぜか、この間のさやかさんを迎えに行ったときに会ったJKたちの話を聞かされていた。彼女たちに好評だったらしく、さやかさんはそれはそれは嬉しそうだった。

 よい! JKとしてはとても良い! そんなに言ってもらえるのならば、男として誇らしくもある! ただ、会社は大丈夫なのか、俺は不安しかなかったのだが……

 食後、東ヶ崎さんがいつものようにコーヒーを出してくれた。そのコーヒーを飲みながら、今日の報告をすることにした。

 資料は、手書き。仕入れ先リストも、販売先候補リストも手書き、ついでに、考えたビジネスモデルも手書きだった。ほんとに時間の隙間で作ったものだった。


「すごいです! 狭間さん、1日でこんなに!?」

「まあ、忘れないうちにリスト化したいと思ってましたし……」

「これは大躍進です!」


 そうかなぁ……


「あと、現在可能なビジネスモデルと収益見込みを書いてみました」

「んー……」


 JKの彼女に伝わるのだろうか……


「この『Aライン』『Bライン』『Cライン』は名称が分かり易いですね。今後も社内で使いましょう。ただ、現状このAラインを超えるのは難しいと思います」


 あれ? ちゃんと伝わった? お父さんとかおじいさんから何かを習ったのだろうか。それでも、俺の不安は止まらない。


「でも、収益化できないと会社が軌道に乗りません」

「そうですよね。知らされていないと不安になりますよね。不確定要素があるので、もうちょっとだけ待ってくださいね。ちゃんと説明しますから」

「ちなみに、今日一日全力で動いて利益2万円程度です」

「え!? 今のこの装備で2万円!? 1日で!? それは相当頑張ったんじゃないですか!? すごいです! 今は仕入れも安定してませんし、そもそも仕入れ先の開拓中です。利益が出ただけでも驚きました」

「でも、これだけじゃ……」

「大丈夫です。私の見立てでは、早ければ2カ月から3カ月、遅くても6カ月から1年で一気に状況が変わります。巻き返しはその後からで大丈夫です。今は無理はせず、仕入れ先の開拓と販売先候補を増やしましょう」


 本当にそんなことが可能なのだろうか?市場での購入権がないのが痛い。


「すいません」


 そこで、東ヶ崎さんが軽く手を上げて話に入ってきた。


「はい、東ヶ崎さん!」


 さやかさんが、指名した。


「お二人の名刺ができましたので、お渡しします」


 プラスチックケースに入った名刺の束を俺と さやかさんに5個ずつ渡してくれた。1束200枚として、いきなり1000枚!?

 あと、出来上がり早くない!? ネット印刷に頼んでも一週間はかかるよ!?


「……ありがとうございます」


 でも、これで挨拶ができる。社会人は、名刺がないと挨拶できないのだ。すぐに、名前の誤字脱字がないかチェックした。社会人の嗜みだ。

 会社住所は……ここ!? 自宅が会社になってた! 電話番号は俺のスマホの番号。これは従来からそうだからありがたい。

 最近では、固定電話の番号が載ってない名刺も珍しくない。早かったし、ちゃんとした名刺だ。LINEのアカウント用のQRコードも入っていて、今の俺にはこれ以上ないくらい完璧な名刺だった。

 さやかさんを見たら、初めての名刺に目が輝いていた。

 この辺は、まだ、子供なんだよなぁ。自然と顔がほころぶ。すると、さやかさんと目が合ってしまった。


「あ、狭間さん、子供っぽいとか思ってるんでしょ!?」

「あ、いや……」


 さやかさんは恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 彼女の言ったことは、半分当たり、もう半分は、就職した頃の自分を思い出していたのだ。当時の俺もめちゃくちゃ嬉しかったもんだ。

 早く誰かに名刺を渡したかったもんだ。


「そうだ! さやかさん! 名刺交換してみないですか!?」

「え!? 良いんですか!?」

「普通は、社内では交換しませんが、初めてなので良いと思います」

「はいっ! ぜひ! 私の初めてをもらってください!」

 うん、言い方は気をつけよう! おじさん、心臓が破けるかと思ったわ!

 その後、彼女と名刺交換をして渡し方など簡単にレクチャーした。

 とりあえず、今は仕入先の開拓と納品先の開拓を中心に進めればいい事を さやかさんから確認したのだった。

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