ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

第27話:おじいさんを連れて外食に行くとは


 高鳥さんとおじいさん、おばあさんは和室でゆっくり話していた。話題は高鳥さんの学校での出来事とか、バイトでのこととか、彼女の近況が中心だ。

 おじいさんとおばあさんは優しい目で彼女の話を聞いていた。家族水入らずというし、部外者の俺がいてはできる話もできないなと自然に席を外そうとしたら、座椅子が欲しいとか、水がほしいとか、色々注文を出されて俺は家政婦の東ヶ崎さんから受け取り、和室に持って行く係と化していた。


 それは全然いいんだけど、夜の外食のお店が難しい。

 俺一人ならファミレスでもなんでもいいんだけど、久々に会ったおじいちゃん、おばあちゃんと孫が一緒に食事をするなら、ゆっくり話せる店にしてあげたい。

 日ごろから良いものを食べているだろうから、ファミレスはあんまりだろう。

 そんな高級店なんて俺は知らないし、まして融通を利かせてもらえるようなお店なんて……


 ***


 案内したのは、俺がよく行っていた居酒屋。座敷もあって、貸し切りみたいにして使わせてもらえる。

 今も野菜を納めさせてもらっているので、大将ともよく顔を合わせるしある程度融通もきかせてくれる。


「はい、いらっしゃーい! お、狭間くん!」

「今日はよろしくお願いします」

「はいはい、2階の座敷を準備してるからねー! りなちゃーん!ご案内してー!」

「はーい!」


 俺たちはバイトの店員さんに促されて2階の座敷に通された。そこには既にテーブルが準備されていて、店員さんが飲み物の注文をすぐに取って行ってくれた。

 料理は煮魚とか野菜を炊いたやつとか和食が中心。高級さはないけれど、材料は良いものを使っている店だし、なにより大将の料理の味がいい。


「いい店じゃな。今日はなんでこの店を選んでくれたのん?」


 おじいさんから質問がきた。おばあさんと高鳥さんも見ている。


「お二人は絶対和室がいいと思ったんです」


 あの家には洋室があるのに、わざわざ和室で過ごしていたくらいだ。そして、普段使っていない和室なのにきちんと掃除されていた。東ヶ崎さんは二人が和室を使うことを知っていたんだ。


「和室なら料亭でもなんでもお店はあるじゃろ?」


 おじいさんはニコニコしながら、聞いてくれる。それならば、こちらも答えやすい。


「家政婦の東ヶ崎さんの料理はすごくおいしいです。でも、お二人は外食がしたいと言いました。しかも、俺に店を選ぶように、と。俺の人となりを見るためだと判断したんです」

「なるほどの。それでこの店ってことか。もう少し説明してみんね」

「はい、俺が食べに行ったこともない高級店を案内してもどんな料理が出されるのか分かりません。良い店だったらいいけど、そうでなかったらせっかくの時間が台無しになります」

「ほお」

「この店は、以前から何度も来てますし、料理はおいしい。材料も俺が納品した野菜がたくさん使われているし、良いものを使っているのを知っている。俺の人となりを知ってもらうには、俺が好きな店、好きな味を食べてもらった方が分かると思ったんです」

「なるほどのぉ。じゃあ、味わわせてもらおうかの」


 ヤバい、ヤバい。大将頼むよぉ。料理が出てくるより先に啖呵を切っちゃったから、変なもんが出てきたら大恥もんだ……


 この日は、料理は大将にお任せにしたんだけど、魚の煮物とか かなり大きないいヤツを準備してくれていた。

 構成的にも考えてくれていたのか、ギンダラの煮つけとか、肉じゃがとか、魚や野菜や肉がまんべんなく楽しめるメニューだった。


「この店の店主、大崎です。今日の料理はいかがだったでしょう?」


 最後に大将が挨拶に来てくれた。


「今日は、狭間くんにとって大事なお客さんだってことだったんで、いつも以上に頑張って準備させていただきました」

「ああ、すごくおいしかったよ。ギンダラの煮つけがよう味が染みとった」

「私は元々漁師で漁師料理の店だったんですけど、狭間くんのアドバイスで野菜料理も取り入れていったんです。おいしいお店はたくさんあるんでしょうけど、うちの味がどこか懐かしいって言ってくれるお客さんも増えて、いまでは名物の一つになってます」

「確かに、肉じゃがもおいしかったの」


 大将は挨拶を済ませると席を外した。急に予定にないことをしてくれたので、俺は変な汗をかいた。


「お前さんは、料理人さんにも好かれとるようじゃね」

「俺は料理があんまり出来ないので、料理ができる人を尊敬してます。だからですかね? よく可愛がってもらってます」

「そうか、そうか」


 満足そうに笑うおじいさん。これで良かったのかな? まあ、高鳥さんとゆっくり話せておいしいものが食べられたならいいだろう。


「さやか」

「はい!」


 今度は、おじいさんが高鳥さんを呼んだ。


「例のヤツ、お金を出してやろうかな」

「ホント  おじいちゃん! 大好き!」


 なんか欲しがっていた物は買ってもらえそうだな。よかったね、高鳥さん。俺も「大好き」とか言われてみたいものだ。

 店を出たら、みんなを乗せて高鳥家に戻った。高級車って運転するのが緊張する~。いつまでも慣れないなぁ。とにかく、店の予約という大役(?)は乗り切った俺だった。

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