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ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

第24話:専務自ら動き出すとは


 私、山本裕子は思う。いま信じられるのは、自分とリーダーの長谷川くんだけ。社長はもうすぐ引退してもらわないといけないから、できるだけ頼りたくない。

 社長は、売上が20%下がったことを伝えたら烈火のごとく激怒していた。

 父は直情的な人だから、これが続くと私は降格とか減給もあり得る。会社の引継ぎも遠のく。それはいけない。

 高々売り上げが前年比20%下がっただけ。これを取り返すには、過去のデータを見て比較して、足りない部分を補えばいいだけ。

 必ず問題はある。過去のデータを見ればいいだけ。

 社員は信用できない。あの狭間くんですら会社のお金を横領していたみたいだし。手塩にかけて育てただけに憎さは百倍……

 調べてみたら、大きく数字を落としているのは大量受注からの数字だった。特に大型ホテルからの受注がすっぽり抜けていることを突き止めた。

 エリア担当の中野くんは「いつも通りで特におかしなところはない」って言っていた。彼も信用したらいけない人物かもしれない。

 うちと取引のある大型ホテルは駅近くに集中している。全てのホテルに専務の私自らあいさつ回りに行けば、受注数を伸ばすことができるはず!

 まずは、ホテルのトップ、支配人にアポを取って次々会いに行くことにした。


 *


 支配人たちに会うのだけど、全然受注が減っている理由が分からない!ホテルとしては、発注自体は例年と特に変わらないとのこと。

 これは1つのホテルだけじゃない。どこに行っても景気の影響は多少あれど、大幅に発注が減っているホテルはなかった。

 じゃあ、なんでうちだけ取れないの  他に取られているってこと 

 仲卸は、商品を融通し合って納めているはず。他社の商品が足りない時はうちが、うちの商品が足りない時は他社が融通するのがこの業界の常識。どこかが独占しているとか⁈

 なにかがおかしい。

 何がおかしいのか全然分からない!


 *


 今日は、県内で一番大きなホテルの支配人にあいさつ。この支配人は昔から温厚で有名な方。なにか教えてくれるかもしれない。


「いつもお世話になっています。森羅万象青果の山本です」


 何年か前にお会いしたままの姿。にこやかで、スーツがビシッと決まっている支配人。

 たしか、叩き上げだったか、根っからのホテルマンという印象。髪こそ白髪になってしまっているけれど、銀髪をいうか、それはそれでキリっとした印象だった。

 そのにこやかな表情ながら、不意に見せる一瞬の目の鋭さは、厳しい審美眼を持ていると思われる。そうでないと、ホテルの支配人にまではなれない。


「どうもどうも、ワシン・ヒルト・日空ホテルの大垣です。森羅さんの専務さんが今日はどうされましたか?」


 VIP応接室に通してもらえた。ちゃんと、うちのことをリスペクトしてくれている。ここなら、なにか話が聞けるかもしれない。


「このところの不景気で、弊社も受注数が徐々に落ちてきて……巻き返しに頑張っているところなんです。そこで、ぜひ、更なる良い関係を築けたらと思いまして、直接お会いしてご挨拶させていただいた次第です」

「え? そうなんですか? 森羅さんでも苦戦されているんですね! うちも例年通りといったところで新しいことには挑戦しているんですけど、劇的に良くなることは難しいようですねぇ」

「はあ……」


 こんな当たり障りのない会話の中には何の情報もない。


「そうだ、総料理長ももうすぐ参りますので。すいません、今日は少々立て混んでいてちょっとだけ遅れているようです」


 やはり、ホテルは忙しそうだ。大量発注が全くないなんて有り得ない。


 *


 10分ほどしてからだろうか、恰幅のいい男性がコックコートでVIP応接室の現れた。


「お待たせしました。総料理長の鏑木かぶらぎです」

「おー、よく来ましたね鏑木総料理長。こちら、先日お話した森羅万象青果の専務さんで山本さんです」

「森羅の……」


 明らかに面白くなさそうな顔を一瞬したのを私は見逃さなかった。その後も、総料理長の方は私と目を合わせてくれない。明らかに好意的ではない印象。

 そこから15分ほどして、次のキャンペーンの資料を持ってくると言って支配人が一旦退席された。そこで、それまで一言も口をきかなかった鏑木総料理長が口を開いた。


「うちは、現在、発注先を見直しさせてます」

「そうなんですか。最近、うちへの発注が減っているようで……金額でしたらもう少し頑張らせていただきますので、またお声かけ下さればと……」

「私はねっ……!」


 急に総料理長が大きな声を出して、自らを止めるように黙ってしまった。


「あのー、うちに何か不手際があったでしょうか……よかったら教えていただければ……」

「……私は古い人間でね。人の能力も認めますが、信用の部分を大きく評価してます」

「はあ……」


 方向性の見えない話が出てきた。


「古いかもしれないけど、義理と人情だけは欠いてはいけないと思ってますよ」

「それは、大変よろしいことだと思います……」


 何かしら? 料理バカで女性と1対1になったら何を話したらいいのか分からなくなるタイプかしら? 所謂いわゆる コミュ障?


「狭間くん……クビを言い渡したのは専務さんらしいですね!」

「え  誰がそんなことを!?」

「風の噂で聞きました。狭い業界ですからね。彼はうちが困ってるとき全力で助けてくれましたよ。御社の中でも彼はぴかいちでしたね。彼だけは季節ごとの提案をしてきたり、近所のホテルの情報を教えてくれたり、本当にうちのことを真剣に考えてくれていました」

「狭間が……ですか? 彼はこちらの担当では……」

「納品の時ね、冷蔵庫の中がいっぱいの時は、食材が入れられなくて、困ってたら、一緒になって冷蔵庫の中を片付けてくれたりしてね。食材をダメにしなくて済んだこともあったんですよ」

「まあ……」

「それが、突然理由も言われずにクビにされたと聞いたら、うちらだって面白くないんですよ! うちは他社に積極的に発注してます。それこそ、うちの若いやつらなんか黙ってても他社に切り替えてますよ」

「そんな……それは……」

「料理人は職人ですから、感情で動くとこもあると思います。ただ、うちらも人間ですから、信用できないところからは何も買いたくないんです」

「……」


 それだけ言ったら、総料理長はまた一言もしゃべらなくなってしまった。そして、支配人が戻ってこられたら早々に退室してしまったし……

 何が起きているの 
 狭間くんが何かしているの⁈

 私には、まだ見えていない何かがあることを ここで確信したのだった。

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