ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ
第22話:リーダー長谷川の計略とは
俺、長谷川 健には狙いがある。現在勤めている株式会社森羅万象青果を手に入れるという目的が。
大変な仕事に対して、こんな安い給料で働いていられるか。社長になって社員を下僕のように働かせる。
それには、社長の娘、裕子が必要だ。多少、歳は取っているが俺好みの美人。
狭間と付き合って関係を進めて行きそうだったから何年もかけて寝取ってやった。今はもう俺の言う通りに動く。
彼女は女王蜂。この会社の女王蜂。働きバチたちが巣に蜜を集めてくる。それを俺が吸い上げる。合法的に。
そのために邪魔だったのが狭間。
あいつは何かわからないけど、俺のセンサーが危険だと伝えている。あいつは裕子の周りにいたらダメだ。俺から裕子を奪っていく。
そして、会社を奪っていく存在。他のヤツはバカばっかりだ。言われたことを言われたように実行するやつばかり。
だから、何年もかけてあいつの存在を否定してきた。目立たない様にネガキャンしてきた。
ダメなやつだと周囲に伝えて洗脳してきた。
人は「あいつはダメなやつ」と言われたら、ダメだと感じるものだ。そして、それを続けると段々本当にそいつをダメなヤツだと思っていく。
俺は、日々社員たちに「狭間はダメなやつ」「狭間は仕事の能力がない」と言い続けた。俺が非難されない程度に。反感を買わない程度に。だから、何年も何年もかけた。
社員たちは、狭間のことを見くびるようになっていった。だから、あいつが何もしても誰も認めない。逆に、あいつに仕事を押し付けても何も感じない。
あいつを失脚させるために会社の売り上げは俺が着服した。それも、あいつの担当エリアで。だからこそ、あいつのことを調べ上げて、不正口座があることに気づいた。あいつの実家の八百屋名義の口座。
俺が手を下さなくても、あいつは先に何か不正をしていた。ちょうど都合がいい。利用させてもらおう。
調べてみると、そこが商品を大量に買い付けて、この会社にも売っていた。月の売り上げの約20%にも上るその数字……売上が落ちた数字と同じくらい。
あいつはやりすぎた。俺があいつに被せようとした着服額はいいとこ1%。あいつはやりすぎたのだ。
「裕子さん、いや、専務。その売り上げの減少は、狭間が着服した額そのままじゃないんですか?」
「そんな事ってある!? 20%っていったらすごい額よ!? 第一、彼の売り上げ全部合わせてもそんなにいかないわよ!?」
たしかに、その通りだ。
ただ、あいつは自分の売り上げを他人に渡してる。会社に計上していない売り上げもあるかもしれない。あいつがいなくなった今、それがこれから分かるはず。
もう、あいつはいないのだ。狭間は失脚した。俺が失脚させた。
俺がこの会社を牛耳るまで、もう少しだ。全てを掌握するまであと少しなのだ。
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