ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ
第17話:JKの学校からの呼び出しとは
高鳥さんの家にお世話になって2週間が過ぎた。「なにかの時のため」ということで、高鳥さんとのLINEのアカウントの交換も済ませていた。
使うことはないと思っていたのだけど、「起きる可能性があることはいつか必ず起きる」と言ったのはマーフィーの法則だったか。高鳥さんからLINEが届いた。
『すいませんが、学校まで迎えに来てもらえないでしょうか?』
「いいけど、どうしたの?」
『体育で足を捻ってしまいまして……』
その後、暗い顔のネコのスタンプがポンと登場した。
大変だ。そう言えば、彼女は高校生だった。初めて会った時 彼女は会社の制服を着ていたし、出会ったのも会社だったから、どこか社会人だと思い込んでいた。
学校で体育で捻ったとか、どこか子供っぽいところもあると思ってしまった。可愛らしいところもあるものだ。
すぐに来て欲しいということだったので、車を出した。足を捻って捻挫なりしていたらしゃがみにくいかもしれないので、例の背の高いレクサスのSUVで行くことにした。
***
高校なんて何年ぶりだろう。…と言っても、自分の母校ではないけど。車で学校に行くなんて新鮮な気持ちがする。
車は校内の来客用駐車場に一時的に停めさせてもらった。
職員室に顔を出すと、保健室を案内された。保健室の前には男女生徒が溢れていた。保健室ってこんな感じだっけ? 時間は昼過ぎ。昼休みと言ったところだろうか。
保健室周辺の生徒たちは「高鳥さん!大丈夫!?」とか「さやかちゃん!元気だして!」とか騒いでいた。何だこりゃ。
「すいません、通してください」と言いながら、人ごみをかき分けて保健室のドアにたどり着く。
「高鳥さんの保護者の方ですか?」
「え? あ、は、はい。保護者です!」
なんか反射的に嘘をついてしまったけど、ここは許してもらおう。
ドアを開けると保健室の先生(?)は、普段着っぽい服の上に白衣を着ていてなんだか気になる感じ。簡単な挨拶をすると中に招いてくれた。
ドアはすぐに閉められ、他の生徒はシャットアウトらしい。先生も色々大変そうだ。廊下は相変わらずザワザワしている。
高鳥さんは、ベッドの上に横になっていて、足首には包帯が巻かれていた。
「あの、どうしたんでしょうか?」
「軽い捻挫です。体育の授業のバスケットの時に足を捻ったみたいでシップを貼っています。数日から1週間程度で治ると思いますけど、筋を痛めたみたいで今日、明日くらいは歩くのも痛いと思います」
「そうですか。ご迷惑おかけしました」
「一応、念のため病院でレントゲンを撮ってもらった方がいいかもしれません」
「はい、ありがとうございます」
とりあえず、お礼を言ってベッドの横の椅子に座った。
「……ドジしました。すいません」
俺と目が合うと、ばつが悪そうに高鳥さんが笑った。
いつもお世話になっているのはこちらの方です、とはこの場では言えないけれど、年相応にドジな方がこっちとしては安心すると言うもの。
体育の時にケガをしたといっていたので、そのままの格好で体操服なのだろう。家では見ることのない姿、白い体操服にブルーの短パン。髪は後ろで1つに結ばれていてポニーテールのようになっていた。
うーん、高校生らしい。エロ動画の偽JKではない。リアル高校生(?)だった。なんかちょっといけない気持ちになりかけている。いかん いかん。
クラスメイトが持ってきてくれたのか、カバンは枕元にあり、制服は紙袋に入れられてカバンと一緒に置かれていた。
「ちなみに、外のあれは?」
「高鳥さん人気みたいで、4時間目の体育の時 運ばれた後ずっとこんな感じなんです」
高鳥さんの代わりに保健の先生が答えてくれた。保健室の外では、クラスメイト達が彼女を元気づけようと(?)騒いでいた。小学生みたいだ。
たしかに、早く連れて帰らないと教室は大変なことになってそうだ。
「立てる?」
「ちょっと肩を貸してもらえたら何とか……」
高鳥さんは足をベッドから降ろして地面に足をついた直後、顔をしかめた。割と深刻らしい。
「ちょっとごめんね。緊急事態だから」
「え? ええ!?」
俺はこれはダメだと判断して、カバンを左手に持ち、紙袋の紐は右ひじに通して、さらに、高鳥さんをお姫様抱っこで抱え上げた。
「きゃっ」
なんか可愛らしい声が聞こえたけど、ここはスルーで。
普段、野菜の入った段ボールなど重たいものを運んで鍛えていたので、彼女一人とカバンと制服くらいなら楽々持ち上げられた。
「先生、すいません。ドアを開けてもらえますか?」
「……え? あ、はい! ドアですね! ドアを開けます」
なんか見とれていた保健室の先生は、俺の声で我に返って保健室のドアを開けてくれた。
ガラリとドアが開き、俺は高鳥さんをお姫様抱っこのまま保健室を出て、廊下を歩き、車の方に向かって歩いた。
保健室を出た瞬間は、急に静かになったと思ったけど、その後うしろから黄色い声が聞こえてきた。「きゃー!お姫様抱っこ!」とか「リアル!リアルお姫様抱っこ!」とか色々聞こえた。
俺は高校生のノリにはもうついて行けなさそうだ。
高鳥さんは真っ赤になっていた。流石にお姫様抱っこは恥ずかしかったか。悪いとは思ったけど、他に方法がなかった。
「ごめんね。騒がれてしまって」
「あ、あの、いえ、こちらこそ……ありがとうございます。あの、重たくないですか?」
高鳥さんが、心配そうに聞いた。
「うーん、軽い。もっといっぱい食べないとね」
「狭間さんは、もう少し肉がある子の方が好みですか??」
「?」
耳まで真っ赤になっている高鳥さんはいつもとちょっと様子が違う。ケガをしたからテンションがおかしいのかもしれない。
車の後部座席のドアを開け、高鳥さんを座らせたら、荷物を積んで病院に行き、そのあと、家に戻ったのだった。
ちなみに、骨には異常はなく、筋を痛めただけなので数日で治るとのことだった。
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