ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

第16話:中野の苦悩とは


 俺、中野雅広はトラックに商品を乗せてルート営業中だ。

 最近、良いことがない。会社の売り上げが伸びないのもそう思える原因の一つだ。毎月 特に何もしなくてもある程度の数字ができる。

 それは俺が天才だからだろうか、まあ、ルート営業だから決まった店に決まったように行って、決まった商品を届けていれば一定の数字はできるってことだろう。

 仲卸の仕事ってのは、青果市場で仕入れることができない個人飲食店やホテルなんかの仕入れ代行ってところか。

 要するに「中抜き」する社会の流れの中から利益だけを吸い上げる寄生虫みたいな職種だ。クソみたいな仕事。誰がやっても結果は同じ。

 ただ、伝票とか請求書とか、書類書きは面倒だし、時間がかかるからクソ狭間にさせていたのに、クビになりやがった。

 まあ、いっつもどこにいるのか分からないようなサボってばっかのクズみたいなヤツだったからクビになって清々したわ。

 俺が稼いだ利益からあいつの給料が出てると思ったらはらわた煮えくりかえるってもんよ。


 俺の担当エリアはホテルとか大手が多い。つまり、いつもの様にルートで回ってるだけで一発デカい売り上げが上がる。運もいいとか俺の人生イージーモード。

 商品が足りない時は、バカ狭間に言っとけばどこからか集めてくるので数字を上げるのは簡単だ。

 その「一発デカい」のが最近ない。
 時期的な物だろうか。その場合はしょうがない。俺がなにをしたって、ニーズがないのだから。

 そうなると暇な時間ができる。
 そう言えば、昔 クソ狭間に昼飯おごってやった時もずっとスマホが鳴ってたな。

 どんだけLINEのメッセが来るんだっての。仕事中に遊びすぎだろ。

 さて、不満を考えながら、独り言を言っていたら店に着いた。

 お仕事はじめまっか。
 まずは、しょぼくれた個人店、と。
 野菜ひと箱置いたら終わりだな。5分で終わらす!


「ちわーっす」

「あ、中野くん。狭間くん会社辞めたんだって?」


 マスターが出てきた。この人話好きで長くなるから嫌なんだよな。5分って決めたんだから、何としても5分で切り上げる!


「あー、あいつはクビっスね。なんかやらかしたらしーっすよ」

「そうなの?よくやってくれてたと思ったけどなぁ」

「あー、ダメダメ!あいつは見てないところでサボってばっかだったから。俺がガンガン働きますから、安心してください!」

「そうなの?じゃあ、今日のお勧めはないかな?」

「お勧め……すか? ナスとかいいっすよ! デカいし!」

「ほお、どんなナスなの?」

「デカくて、良い色のナスっすね!」

「あー……そうなの。どんな料理にむいてるの?」

「それは、マスターの方が詳しいでしょ! 釈迦に説法っすよー!」

「あはは、そうか……」

「あ、段ボール、ここ置いとくっすねー」

「あー、ありがと」


 よし! 5分で納品完了! 次! 俺有能!


 ■ 狭間新太@高鳥家


「狭間さん、狭間さんがもらってきてくれたナスなんですけど……」

「はい? ナスがどうしましたか?」


 今日も野菜を仕入れて、販売してきた。軽トラはレンタカーを借りると高くなるという理由で、先日のレクサスのSUVを使っていいと言われた。

 確かに荷物はたくさん乗るけど、土の付いた野菜とレクサスの取り合わせは、なぜか罪悪感がある。

 家に帰ると、余った野菜をお裾分けで(?)高鳥家に渡した。


「何か問題ありました?」

「いいえ、あんまり立派なんで いい料理法がないかって、東ヶ崎とうがさきさんが」


 東ヶ崎さんとは家政婦さんの名前らしい。あの人、東ヶ崎さんって言うのか。割と珍しい名前だな。

割と若いんだけど、20代?10代ってことはないよなぁ。


「夏野菜のナスは、体温を下げる効果があるので、夏にぴったりですね。焼きナスも美味しいですけど、煮びたしとか俺は好きです。ナス特有のポリフェノールのナスニンが含まれているのは紫色の皮の部分なんで皮は剝かずにそのままがいいです。あと、ナスニンとかカリウムとかは水溶性の成分なんでアク抜きの時に水に浸し続けると栄養まで逃げてしまうので、煮びたしだと丸ごと食べられてお得です」

「よくナスだけで、それだけ出てきますね」

「まだまだ ありますよ。このナスを作っている農家さんはもう20年ナスを作っているので、すごく慣れている上に研究熱心なんで……」

「他に、どんな料理がありますか?」

「肉みそ和えとかはご飯に合うし、輪切りのナスとトマトをグラタン皿に重ねて並べて、上からとろけるチーズを乗せて焼くだけで美味しいですし、他には……」


 その日は、ナスのフルコースになった。言った料理が全部出てきた。

 どれもおいしかったので、家政婦東ヶ崎さんの料理スキルは間違いないけど、これからは1個ずつ言うようにしよう。

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