ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

第14話:スペシャルメニューとは


 佐々木さんのところでたくさんタマネギとジャガイモと空心菜をもらってきた。レクサスに泥付きの野菜は似合わないけれど、高鳥さんには宝物に見えてるようだった。


「昼になったね。お腹空かない? いつもご馳走になっているから、今日はご馳走するよ」


 帰路に高鳥さんに提案してみた。


「いいんですか? その……お金……」

「ははははは。確かに失業中だけど、前回の野菜を売った利益もあるから、ちょっとくらい贅沢にいいレストランに行ってみようか」

「……」


 ***


 連れて行ったのは、地域のイタリアンレストラン「シーガル」。個人店ながら人気で、大きな国道沿いにあるのでデートで立ち寄る人が多いらしい。バックには海も見えるし、絶好のシチュエーションだ。


「えー? カッコいいお店ですね……」


 車から降りて高鳥さんが少し気圧されていた。俺が口説こうと思っているとおもったのかなぁ? 

 それとも高校生だから、こういうお店に縁が無かったのか? 家はお金持ちだけど、ご両親は忙しそうだから連れてきてもらったことが少ないとか?

 俺は、構わず店に入った。高鳥さんは後からついてきた感じ。


「こんにちはー」

「あ、いらっしゃいませー! って、狭間さんじゃない! なに?デート?」


 迎えてくれたのは、このお店のオーナーの娘さんで つばめさんとおっしゃる。このお店の看板娘でもある。


「お父さんー! 狭間さんが彼女連れて来たよー!」

「いや、だから、彼女じゃないですって!」


 ここでも変な誤解をされてしまった。高鳥さんが気分悪くしなければいいのだけど……あ! ほら! ちょっと膨れて、ご機嫌斜めっぽい!


「店では、マスターって呼びなさいって……あ! 狭間くん! いらっしゃい! 心配してたんだよ」

「あ、ども。今日はお客です。よろしくお願いします」

「今日はまだ昼前だから、いい時間に来たね。1時過ぎた頃には満席なるからさ。空いてるとこ好きなとこに座って!」

「どもー」


 比較的小さなお店だけど、カウンターで10席ほど、テーブルが6つあり、最大で40人から50人は入るお店だ。

 良い材料を使ってるからランチ500円……という訳にはいかないけど、間違いなく美味しいものが出てくる。

 俺たちはカウンターの席に座った。


「狭間くん、彼女いたんだねー。30歳になっても独身だったら うちのつばめをあげようと思ってたのに」

「ちょ! やめてくださいよ! こちらは、いまお世話になってるお宅の娘さんで……」

「んんん」


 突然の高鳥さんの咳払いに会話が止まってしまった。


「……とても可愛い子だねぇ。大事にするんだよ」

「……だから違いますって」


 話しながらもマスターの手は休まらない。今日のランチはパスタと小さなピザらしい。店内に石窯が据え付けられていて、本格的なピザが出てくる。

 パスタの生地もピザの生地も地元の小麦を使っている。国産って日本人にとってやっぱり安心感がある。

 しかも、ピザ用、パスタ用に別々にブレンドしているらしくて特別感もある。


 しばらく待つとおいしそうな料理が目の前に出てきた。


「わぁ! 野菜たっぷりのピザ! パスタも野菜中心! 狭間さん、マスターと打ち合わせしてたんですか!?」


 高鳥さんがこちらとマスターをきょろきょろ見ている。


「いや、狭間くんがそういう目をしていたからさ。うちの野菜は狭間くんとこから仕入れた野菜ばっかりだから」

「俺、肉も好きですからね!」

「ははははは」


 *


「実際どうなの? 他の卸し会社に転職しないの?」

「うーん、確かにLINEではお誘いが来てるんですけど……」

「え? そうなんですか?」


 高鳥さんが俺とマスターの会話に入ってきた。


「うん、ほら、俺って他社との連絡役みたいになってたから、顔なじみの人もいて……」

「なるほど」

「それで、どうなの? うちも野菜がないと困るから、とりあえず今まで通り買ってるけど、内心面白くないからねぇ」

「ありがとうございます。その気持ちだけで……」


 苦笑いしか出ない。マスターは俺から野菜を買ってくれると言っているのだ。クビにされた俺はこのマスターの信頼も裏切ってしまっている。


「あ、農家さんから仕入れてる野菜の関係があって、野菜自体は量は少ないですけどいくらか仕入れてるんですよ。いま面白いのだと空心菜を手に入れたばっかりで……」

「空心菜!? ピザに空心菜は聞いたことないな。でも、食感とか面白いかも?」

「あ、サンプルがあるんで1束置いて行きます。気に入ったら声かけてください」

「LINEはまだ使えるの? あれでいいの?」

「あ、はい。スマホ自体は自分のなので、そのまま使ってます」

「そかそか。何か協力できることがあったら言ってよ!」

「ありがとうございます」

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