ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ
第11話:農家に行ける車とは
高鳥さんから漏れ聞こえてくる情報と、LINEのグループチャットの情報から見ると、会社はあまりうまくいってないようだったけど、それは俺のせいにして愚痴を言っている程度なのでまた大丈夫みたいだ。
俺は、高鳥さんの学校が休みの日を狙って農家さんのところに連れて行くことにした。本人の希望だったので。
「ねぇ、この車じゃないとダメだったのかな?」
「すいません、うちにはこんな車しかなくて……」
農家に行くのに、レクサスの高級SUVで向かっている。彼女が申し訳なさそうにに言う「こんな車」とはボロいという意味ではなく、「田んぼ近くのあぜ道を走れそうな車」という意味だ。単に車高の高さの話だと思っていい。
ベンツやBMWやポルシェはセダンしかなかったので、車高が低い。街中を走るならば問題ないけど、あぜ道を走るようにはできていない。
俺は車には全く詳しくないし、普段はトラックしか運転していなかったので分からないけど、レクサスでもRXと書かれたこの車、絶対高い!
「運転席」っていうより「コックピット」って感じだし、シートも多分全部革張りだ。ハンドルにはなんか知らないボタンがいっぱい並んでいるし、多分こんな機会がないと俺は一生運転することがなかったくらいの高級車だと思う。
「狭間さんは運転がお上手ですね」
「ホント? そうかな? 高級車だし緊張しているだけかも」
街中を走っている時に高鳥さんが褒めてくれた。彼女の家の車をご両親に挨拶もせず運転させてもらっているのは気が引けたけど、親には許可を取っているとの彼女の言葉を信じて使わせてもらっている。
本当でなければ車のカギの場所など、普段運転しない彼女が知っているはずないのだから。
運転の方は、普段俺はもっぱらトラックだった。自分の車はない。トラックはどうしても運転が荒くなる傾向があるけど、野菜を乗せていたので、加速・減速には気を使っていたし、積み荷が痛まない様にカーブなども注意していた。
10年もそうしていると、他の車でも癖が出るのかもしれない。それが彼女の言う「上手」なのかも。
「今日は、どこにいくんですか?」
「ちょっと山の方なんだけど、新しく空心菜を作付けした農家さんが見て欲しいって言ってたからサンプルをもらいに行く感じかな」
「空心菜ですか」
空心菜は、ヨウサイとも言って、ヒルガオ科サツマイモ属の野菜。茎の部分が空洞になっていて、見た目にも歯ごたえ的にも面白い。茎葉を主に炒め物や中華風のおひたしにすることが多い。俺は炒め物にするのが好きだ。
「さあ、着いたよ。行く時間を伝えてたから迎えに出てくれたみたいだね」
家の敷地内に車を停めさせてもらった。農家の佐々木さんは、年配なのだけどご夫婦で家の前まで迎えに出てくれたのだった。
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