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ポンコツ扱いされて仕事をクビになったら会社は立ち行かなくなり元カノが詰んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ

第8話:物に付加価値を付ける最低限の要素とは


 会社をクビになり、家も出ることになってしまった。

 クビになって1週間が経過したので、社宅になっていた家を引き渡すことになったのだ。

 幸い高鳥さんの家に転がり込むことができたので、雨露がしのげる……どころか快適生活が送れているのだけど、1週間で退去ってさすがに酷くない!?

 俺は失業手当の申請のためにハローワークに行くことにした。手続きをしても7日間の待機が必要で、すぐには失業保険はもらえないらい……


「なんか昨日は、中野さんがお客さんから『狭間チョイス』を持ってきてくれって言われて困ってましたね」


 朝の時間、テーブルで高鳥さんがトーストをかじりながら話してくれた。パンを焼き、目玉焼きを作ったのは家政婦さん。高鳥さんは、これから学校があるらしく制服を着ている。

 ああ、本当にJKなんだよな。

 そして、俺はこのJKの家に住まわせてもらっているヒモ。最悪だな。社会の底辺の底辺だ。ニートも引くほど酷い立場だな俺。

 せめて、家主の高鳥さんが起きている時間に俺も起きていようとこの時間にはリビングに来て、一緒に朝食を取っている。

 普段よりも遅い起床なのは今までが早すぎる時間に起きていたからと言える。仲卸とはそういう仕事なのだ。


「何ですか?『狭間チョイス』って」

「うーん、俺って、高級店のシェフには数量を好きにしていい代わりに本来の販売価格より2倍から10倍の価格で商品を卸してたんだよ」

「え⁈ ちょっと引くんですけど」

「まあ、普通引くよね。でも、シェフとしては、10倍出してもいいほど欲しい商品は存在するんだよ。それはなんだと思う?」

「価値がある野菜?」

「まあ、そうだね。従来の野菜の価値に、更に価値を付ける必要がある。そういう付加価値ってどうやったら付くと思う?」

「え!? 野菜の価値をさらに上げるってこと 」

「そ、2倍から10倍で売るために」

「そんな魔法みたいな物ってあるんですか!?」

「あるね~。でも、意外とみんなやってない」

「え? え? 早く持って行くとか?」


 高鳥さんは、食べていたパンそっちのけで考え始めてしまった。


「それだと、店の件数が多くなると、遅くなるところが出てくるから全部のお店には使えないね」

「え  全部のお店に使える方法なんですか!?」

「そうだね。全部のお店に使えるね」


 今度は、コーヒーを飲みながら考えている。朝の時間なんだけど、学校の時間大丈夫!? おじさん的には遅刻の方が気になるんだけど。


「……霧吹きで水をかけて新鮮に見せるとか?」

「うーん、悪くないけど、それはスーパーとか小売店の方法だね。それだとタマネギとかジャガイモには使えないしね。水をかけたら劣化が早くなるし」

「野菜も選ばないの 」

「全ての野菜に使えます。なんだったら、野菜以外にもなんでも使える方法」

「……こうさーん」


 高鳥さんが両掌を肩くらいの高さに上げて、降参のジェスチャーをした。


「それは、『名前をつけること』だよ」

「え? どういうこと?」

「例えば、全てのお客さんには、お客さんに合った商品を勧めているわけだけど、担当によって何を勧めるのかは違うと思うんだ。よくお客さんのニーズを捉えている担当もいれば、自分が売りたいものを売っていく担当もいるだろう」

「お客さんの意図を外している物を勧める人もいるでしょうね」

「そ、だから、『俺のおすすめ』には『狭間チョイス』って名前をつけたんだ」

「え?それだけ?」

「そ、それだけ」


 少しがっかりした表情の高鳥さん。これは実感がないからだろう。


「例えば、俺がこの家に来て初めてきみが淹れてくれたコーヒーだけど、単なる『コーヒー』だったら、それ以上でもそれ以下でもない。でも、『高鳥さんが俺のために入れてくれたコーヒー』だったから、俺は特別美味しく感じたんだ。豆も良かったのかもしれないけど、心に残る旨さだった」

「っ!」


 途端に真っ赤になる高鳥さん。理解してもらえただろうか、俺の感謝の程を。

 彼女がいなければ、俺は今頃 路上暮らしとまではいかないまでもネカフェ生活くらいはリアルに想像できる。一番不安な時に手を差し伸べてくれたのは彼女だったのだ。


「わたっ!私学校行かないとっ!ち、遅刻しちゃう!」


 彼女は元気に学校に走っていった。家政婦さんが温かい目で見てくるんだけど、なんすか?なんなんすか?

 俺は居心地の悪さを感じて自室でパソコンを使って仕事を探すことにした。

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