遥か夢こうのデウス・エクス・マキナ
第十章 第四話 機械仕掛けの神に願いを
頭はつぶれ火花を散らし首筋から胸部内部にかけてパイルバンカーが撃ち込まれたギガス、その巨体は動きを止め宇宙空間で静止していた。
「ふぅ…」
「イゼちゃん!大丈夫?」
楓から通信が入る。
「うん、なんとか。でもマキナの半身ボロボロにしちゃって…」
先ほどの戦闘で装甲の半分はひしゃげひびまで入ってしまっている、あまり長時間稼働させたくない状況ではある。
「そういや人工衛星のほうは?」
「無事破壊できたから安心していいよ、それより今のマキナの状態で大気圏に突入するのは危険だと思うから近くの衛星ステーションでメンテナンスしてもらえるように手配しておいたよ。私もそっちに行く予定だから衛星で少しの間待っててね?」
「はーい」
そういって衛星ステーションの座標が送られてくると同時に一旦通信が終わる。なんとか地球が崩壊するのは避けることができた、マキナも無事とは言えないがまだ一緒にいられる。それに緊急事態で急に宇宙まで来たが落ち着いてみればその景色は壮大であり胸に押し寄せるものがあった、その上この先この景色のさらに向こうを見に行けると思うと胸が高鳴る。
そう考えていた矢先、操縦席内のモニターにウィンドウがいくつも表示され頭上からはけたたましく警告音が鳴り響くのであった。
「何事!?」
通路を慌ただしく職員が走っておりその中を楓は走っていく。
衛星ステーションに飛び立つ準備をしていた楓のもとに今作戦に参加していた職員が慌てて呼び出しに来たのである、とにかく様子を見に来てほしいと説明もなしに呼び出されたためマキナに何かが起きたのかと不安に駆られる。
作戦室に入りモニターを見上げた楓の目に移ってきたのは、ゆっくりと地球に向かって移動しながら内部エネルギーが肥大化し続けているディザスター・ギガスの姿。そしてそれを地球から必死に遠ざけようと全力でスラスターを噴出しているマキナの姿がそこにあったのである。
先ほどの警告音が鳴った直後頭をつぶされ首筋から胸まで貫いたはずのギガスが、武器類をしまわず無理やり球体の形態に移行し不格好な球体の状態になったまま地球に向けて動き出したのである。先ほどから鳴っている警告音も併せてこのままギガスを放置するのはまずいと直感的に感じ取ったイゼはこうして急いでギガスを止めようと奮闘しているのであった。
「ふぬぬぬぬぬぬ…」
だがマキナの全力でも徐々に進まれてしまう、今もまだ警告音は頭上から鳴り響いている。
なんとか押し返そうとしていると楓から通信が入る。楓の背後はざわざわしており慌ただしい様子が伝わってくる。
「イゼちゃん!無事!?」
「う、うんなんとか…」
そう返すも今この瞬間も徐々にギガスは地球へ近づいて行っている。そんな中、楓からとあることを聞かされる。
「イゼちゃん、今…そのギガスのフィックスドスターエンジンが徐々に膨張しているの。このままいけば…その周辺、地球すらも巻き込んで…爆発するの」
「なっ!?」
驚愕の事実が知らされる、イゼの直感は正しかったのである。しかしこのままではギガスを爆発範囲から遠ざけることができない。
「恐らくギガスが爆発するまであと5分、きっとマキナの速さなら爆発範囲から脱出できると思うから今すぐ逃げて!」
「何言ってるの!?そしたら楓たちが死んじゃう!」
「今からミサイルを打ち上げて命中したとしても破壊できる可能性はほぼ無いに等しいし現にマキナはもうギガスを押し返せるだけの力はないの!」
実際そのとおりである先の戦闘で半身がボロボロになっているため100%の力を出せているわけではない。それに対してギガスはエネルギーを膨張させ推進部だけに動力を回し、その上地球の重力も利用しているためマキナの現在の力だけでは押し返すことは絶対にできないのである。
現状取れる選択として楓の言っていた通りマキナを全力で飛ばせばギガスの爆発範囲から抜け出すことは可能であろう。だが。
「やだ!そんなこと絶対にしたくない!」
イゼはそれを拒む。
「どうして!」
「もう大切な人たちと別れるのは嫌なの!」
楓は思い出す、イゼから聞いた身の上話のことを。イゼはルピスに訪れる前はひょう爺と呼ばれる男性と共にスラム街に住んでおり、火事に見舞われた際に勘当された形でマキナと飛び出してきておりそれ以降消息を知らないということ。
そして頭を抱える、ルピスを訪れた後イゼと過ごした楓はイゼにとって大切な人たちの中の一人になっているということ。イゼにとって割り切ることはできないのだと。
「イゼちゃん…お願い、最初で最後のお願いだから。…逃げて」
それに対してのイゼの返答は。
「絶ッ対に逃げない!」
その意志は固かった。
残り1分
爆発までの時間が刻一刻と迫る。
なんとか押し返せないかと悪戦苦闘するイゼ、だがその努力むなしく大気圏直前までギガスは到達していた。
「うがぁぁぁあああ!」
声を上げるも状況は一向に変わらない。
「なんで…どうして!失いたくないだけなのに!」
すでにギガスの装甲に軽く拳がめり込むほど押し続けている。
ピコン
モニターに一つ新しくウィンドウが追加される。イゼはそこに目をやり書かれているものを読み上げる。
「…え?………うん。うん…お願い」
祈るように項垂れていた楓がイゼの独り言?を聞き取る。
「イゼちゃん?どうしたの?」
残り10秒
「ねぇ楓?」
「何…?」
「私がどこ…ザザ…行っても見つ…出してま…ザザ…緒に…た…ザザザ…ね……プツン」
その瞬間、蒼い閃光。
残り0秒
地球から遥か遠く遠く銀河開拓宙間にて惑星が爆発したのと同規模の爆発が発生した。また爆発が起こる直前太陽系では爆発に向かって長い長い蒼いほうき星のようなものが確認されたという。
「ふぅ…」
「イゼちゃん!大丈夫?」
楓から通信が入る。
「うん、なんとか。でもマキナの半身ボロボロにしちゃって…」
先ほどの戦闘で装甲の半分はひしゃげひびまで入ってしまっている、あまり長時間稼働させたくない状況ではある。
「そういや人工衛星のほうは?」
「無事破壊できたから安心していいよ、それより今のマキナの状態で大気圏に突入するのは危険だと思うから近くの衛星ステーションでメンテナンスしてもらえるように手配しておいたよ。私もそっちに行く予定だから衛星で少しの間待っててね?」
「はーい」
そういって衛星ステーションの座標が送られてくると同時に一旦通信が終わる。なんとか地球が崩壊するのは避けることができた、マキナも無事とは言えないがまだ一緒にいられる。それに緊急事態で急に宇宙まで来たが落ち着いてみればその景色は壮大であり胸に押し寄せるものがあった、その上この先この景色のさらに向こうを見に行けると思うと胸が高鳴る。
そう考えていた矢先、操縦席内のモニターにウィンドウがいくつも表示され頭上からはけたたましく警告音が鳴り響くのであった。
「何事!?」
通路を慌ただしく職員が走っておりその中を楓は走っていく。
衛星ステーションに飛び立つ準備をしていた楓のもとに今作戦に参加していた職員が慌てて呼び出しに来たのである、とにかく様子を見に来てほしいと説明もなしに呼び出されたためマキナに何かが起きたのかと不安に駆られる。
作戦室に入りモニターを見上げた楓の目に移ってきたのは、ゆっくりと地球に向かって移動しながら内部エネルギーが肥大化し続けているディザスター・ギガスの姿。そしてそれを地球から必死に遠ざけようと全力でスラスターを噴出しているマキナの姿がそこにあったのである。
先ほどの警告音が鳴った直後頭をつぶされ首筋から胸まで貫いたはずのギガスが、武器類をしまわず無理やり球体の形態に移行し不格好な球体の状態になったまま地球に向けて動き出したのである。先ほどから鳴っている警告音も併せてこのままギガスを放置するのはまずいと直感的に感じ取ったイゼはこうして急いでギガスを止めようと奮闘しているのであった。
「ふぬぬぬぬぬぬ…」
だがマキナの全力でも徐々に進まれてしまう、今もまだ警告音は頭上から鳴り響いている。
なんとか押し返そうとしていると楓から通信が入る。楓の背後はざわざわしており慌ただしい様子が伝わってくる。
「イゼちゃん!無事!?」
「う、うんなんとか…」
そう返すも今この瞬間も徐々にギガスは地球へ近づいて行っている。そんな中、楓からとあることを聞かされる。
「イゼちゃん、今…そのギガスのフィックスドスターエンジンが徐々に膨張しているの。このままいけば…その周辺、地球すらも巻き込んで…爆発するの」
「なっ!?」
驚愕の事実が知らされる、イゼの直感は正しかったのである。しかしこのままではギガスを爆発範囲から遠ざけることができない。
「恐らくギガスが爆発するまであと5分、きっとマキナの速さなら爆発範囲から脱出できると思うから今すぐ逃げて!」
「何言ってるの!?そしたら楓たちが死んじゃう!」
「今からミサイルを打ち上げて命中したとしても破壊できる可能性はほぼ無いに等しいし現にマキナはもうギガスを押し返せるだけの力はないの!」
実際そのとおりである先の戦闘で半身がボロボロになっているため100%の力を出せているわけではない。それに対してギガスはエネルギーを膨張させ推進部だけに動力を回し、その上地球の重力も利用しているためマキナの現在の力だけでは押し返すことは絶対にできないのである。
現状取れる選択として楓の言っていた通りマキナを全力で飛ばせばギガスの爆発範囲から抜け出すことは可能であろう。だが。
「やだ!そんなこと絶対にしたくない!」
イゼはそれを拒む。
「どうして!」
「もう大切な人たちと別れるのは嫌なの!」
楓は思い出す、イゼから聞いた身の上話のことを。イゼはルピスに訪れる前はひょう爺と呼ばれる男性と共にスラム街に住んでおり、火事に見舞われた際に勘当された形でマキナと飛び出してきておりそれ以降消息を知らないということ。
そして頭を抱える、ルピスを訪れた後イゼと過ごした楓はイゼにとって大切な人たちの中の一人になっているということ。イゼにとって割り切ることはできないのだと。
「イゼちゃん…お願い、最初で最後のお願いだから。…逃げて」
それに対してのイゼの返答は。
「絶ッ対に逃げない!」
その意志は固かった。
残り1分
爆発までの時間が刻一刻と迫る。
なんとか押し返せないかと悪戦苦闘するイゼ、だがその努力むなしく大気圏直前までギガスは到達していた。
「うがぁぁぁあああ!」
声を上げるも状況は一向に変わらない。
「なんで…どうして!失いたくないだけなのに!」
すでにギガスの装甲に軽く拳がめり込むほど押し続けている。
ピコン
モニターに一つ新しくウィンドウが追加される。イゼはそこに目をやり書かれているものを読み上げる。
「…え?………うん。うん…お願い」
祈るように項垂れていた楓がイゼの独り言?を聞き取る。
「イゼちゃん?どうしたの?」
残り10秒
「ねぇ楓?」
「何…?」
「私がどこ…ザザ…行っても見つ…出してま…ザザ…緒に…た…ザザザ…ね……プツン」
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