遥か夢こうのデウス・エクス・マキナ

兎月あぎ

第十章 第一話 宙空間に漂う巨人

「…でっかい」
宇宙空間でギガスと相対するマキナ、マキナの何倍の大きさがあるのだろうか。そんなギガスはその特徴的な6本腕の手甲の先についてる砲門をこちらへと向けている。
「イゼ!データがほとんどないからこちらからサポートできることは少ない、なんとかいろんな情報を漁っては見るけどマキナと二人で頑張って!」
「りょ、了解!」
ギガスの砲門から次々と光弾が撃ち出される、慣れない宇宙空間での戦闘ではあるが泳ぐようにして何とか光弾を避けきる。だがギガスの使っていた砲門は4門、では残りの2門は何に使うのか。
ギガスの残りの2門の砲門から光が漏れ始め次の瞬間光の柱がマキナに向かって伸びていく。イゼは何とか避けようとその場から離脱を試みるも足先に被弾、バチンと何かが弾けるかのような音がしたと同時に当たった衝撃でぐるぐると回ってしまう。
なんとか姿勢制御を行い姿勢を正すも、目の前にはギガスが接近しておりどこから取り出したのか両刃の戦斧が操縦席向けて振り下ろされるのが見えた。このままでは背中に背負っているクロスメードを取り出している時間はない。
ガキンと硬い物同士がぶつかる音がする、マキナの正面には鍔迫り合うようにして戦斧と組み合うワイヤーブレードがあった。膂力の差はほぼ五分五分といったところだろうか、いや厳密にはギガスのほうが上だ。宇宙空間とはいえ質量の差やスラスターなどの駆動部はギガスのほうが遥かに多い。
それに今現在フルパワー状態で戦っているマキナに対して未だ底の知れないギガス、ここから先ギガスがよりパワーアップすることなどあればマキナは劣勢になってしまうだろう。それより先に何としても倒さなければ、そう考えるイゼは戦斧と鍔迫り合いながら背中のクロスメードを取り出す。
だがギガスも空いている手に腕部の内側の一部が開き中から折り畳み式の巨大な反り立つ剣、刀が出現ししかも片手でそれを持つ。
「何もかも規格外過ぎない…?」
戦斧が鍔迫り合いから離れマキナもワイヤーブレードを収納するもギガスがすぐさま体を回転させながら刀を横なぎに振り払ってきたため、クロスメードの腹の部分を使ってガードを試みる。
ギガスの刀とクロスメードがぶつかり合う、回転することにより勢いがついた攻撃。宇宙空間では踏ん張ることができないためスラスターなどを使って勢いを殺さねばならないのだが、イゼは初めての宇宙空間での戦い。いままで地上で戦っていたイゼはもちろんそんな知識はなく、まともに勢いのついた攻撃を受けてしまい大きく吹っ飛ばされてしまうこととなる。
「うわあああぁぁぁ!?」
すぐさまスラスターを使い姿勢を元に戻しギガスへと向き直る。ギガスは再びこちらに6門の砲門を向けてきておりすでに砲門には光が収縮しているのが見える。すぐさま光弾がマキナに向かって殺到し撃墜せんと迫ってくる。
次こそは当たってやるまいと全速力で宇宙空間を飛翔し光弾を避け続ける。今回は6門すべてを光弾にまわしているため恐らく光の柱は飛んでこない、そう踏んで避けつつもギガスへと少しずつ接近する。
移動先を読んでかたまに光弾が先回りして飛んでくることがあるが、それは前方に構えたクロスメードにより弾き返しながら進んでいるため何事もなく接近することができている。
「いままで散々やってくれたなぁ、これはそのお返しだっ!」
マキナはクロスメードを思いっきり薙ぎ払う、ギガスはその攻撃を戦斧で受け止める。鈍く硬い物同士がぶつかった衝撃が機体内部にまで届いてくる。
「硬っ…こんのぉ!」
もう一回、もう二回と攻撃を加える。しかし確かにギガス本体に当たった手ごたえはあったのに当たった個所を見ると浅い傷にしかなっていなかったのである。
「なんでぇ!?」
だが驚愕している暇はない。ギガスによる反撃、戦斧と刀を使った挟撃だ。イゼは素早く攻撃の動向を察知し上へと逃げるのだが、避けた先には光の柱が飛んできていたのである。
「やっばい!」
急制動をかけようとするも間に合わないことが分かると、クロスメードとワイヤーブレードに一部動力を回しエネルギーを放出しシールド状に展開。真っ向から光の柱を受け止めにかかる、そして着弾。バチバチと音を鳴らしながら光の柱とぶつかり合う、衝突した光の柱は放散しマキナの遥か後方へと流れてゆく。
光の柱が消え去った後すぐさま片手で背面に装備されたショックガンを片手で持ちギガスへ向けて何発も発射するがすべて弾かれたため意味がないことを確認する。次にグレネードを設置しその場から離れギガスをおびき寄せ爆発させようとするも感知され破壊されたためこれも失敗に終わる。
次にギガスからの攻撃でギガスの体のあちこちが開き中にはミサイルポッドが仕込まれていた、そしてレーダーには数えるのもうっとうしくなるほどのミサイルの数々。しかも全てが追尾式というおまけ付き、マキナはショックガンで対応しつつ宇宙空間を飛翔する。
ミサイルはどうやら解析にかけたところ数世代前のものらしくレーダーに映らないものがあるわけではないため落ち着いて処理をしていくこともできたのだが、ギガスはその巨体に似合わない速度でこちらを追ってきており速やかにミサイルを撃墜しなければギガスに補足され猛攻撃を喰らうだろう。
「そうだ、あれがあった!」
ショックガンを背部に戻し腰部からグレネードを取り出し全力で投げつける、もちろんそのグレネードはギガスによって感知され破壊されるのだが。辺りに何かが飛び散りミサイルの挙動がおかしくなる、同時に比較的近距離で受けていたギガスの挙動も鈍くなる。
「…?」
そう、今使ったのはチャフグレネードである。ただし残り個数はあと2個しかないため慎重に使わざるを得ない。
何故か挙動が鈍くなっているギガスに対しマキナは一気に肉薄する、チャフが舞っている中では一部レーダー、通信機能が使えなくなるが今はそんなことは関係ない。目の前のギガスを倒すのに注力しなければならない。
「どりゃあああぁぁぁ!」
クロスメードを使いギガスの前腕の関節部分を狙い一気に振り下ろす、だが狙いをずらされたのか当たったのは装甲部分。それも軽く歪むぐらいで済んでおり大きなダメージには至っていない、それにギガスに肉薄してしまったため現在ギガスの手の届く位置にマキナはいる。
もちろんギガスはマキナをとらえるべく行動に移す、それは再び球体の状態に戻ろうとしているのだ。
「なっ、やばい!」
イゼが気づくももう遅かった。バクンと音と共にマキナはギガスに飲まれるようにその体内に閉じ込められたのであった。

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