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遥か夢こうのデウス・エクス・マキナ

兎月あぎ

第九章 第二話 隠密道中

大都市ヤマトから二山ほど離れた山の中、カモフラージュ用の布を広げ反重力車を覆いそこで一旦世界情勢がどうなっているかを確認している少女が二人。イゼと楓である。
「楓、これ…」
「うわ…」
そこには運よく生き残っていた監視カメラが大都市ヤマトの惨状を映したものがネット上にアップされていた、だが問題なのはそこではない。その動画と共に付けられた題名が「大都市ヤマト全壊、デウス・エクス・マキナの仕業か?」と書かれていた。
「ここまで来るとさすがに誰にでもわかるけど、どうやってもマキナを貶めたい連中がいるのは確実だね」
「何でマキナを狙うんだろう、悪いことしてないのに…」
そう言って格納庫の方向を見る、前回の光の柱の攻撃により一部コーティングが焦げてしまいそれを修理するために現在ドローンを動かしている状況である。逆に考えればあれだけの攻撃を受けてコーティングが焦げるだけで済んだのは奇跡といっていいのではないだろうか。それにあれから禍ツ星からの攻撃は無い。
「ん、この人が色々決めてるみたいだけど。えーと、何々?」
イゼが何かしらの情報を見つけたようだ、先ほどの記事から関係者名を遡っていった所にあったらしい。




「まだか!まだなのか!」
一方そのころ、イゼが以前住んでいた今は無きスラム街の近郊に位置するメガシティのイブックにて。
「なんせあれの攻撃を受けたのですから、跡形も残っていないのでは?」
「そんなわけあるか旧世代級だぞ!絶対に欠片ぐらい残っているはずだ、それかどっかに逃げたに違いない!」
怒れる人物はクッションを投げる、それは話し相手に当たることは無くその横を通り過ぎる。
「じいやの言っていた通りならあれは悪魔なんだ!あれさえ倒して手柄を上げれば…僕はこんなところでくすぶっていていい人物じゃないんだぞ!」
「………」
怒っていた人物は何かを考える素振りをした後したり顔を作る、そして話し相手に命令する。
「今すぐ人員増強をしろ!」
「もう出せるだけ出していますよ?」
「人間なんて溢れるほどいるだろう!その辺の貧乏人などでも酷使すればいい!」
「…わかりました」
そう言って話し相手は部屋を後にした。
「くくく…悪魔さえ見つけて仕留めれば僕は、僕はこの都市の王になれる…そうなれば…」
一人笑うその人物の背後にはナイフの刺さったマキナとイゼ、楓の写真があった。




あれから一週間がたった。
「またヒッチハイクだ、ねぇ乗せてあげない?」
「駄目よ、今はだれも信じられないもの。不用意に人を乗せて私たちが追われの身なのがばれたらどうするの?」
「…うん、分かった」
先ほどからたまに見るからに衣服がボロボロな人間が立っておりヒッチハイクをしている光景が目に映る。だが、明らかにここ周辺に住んでいるような見た目をしていないのだ、住んでいる大陸が違うかのような。楓は恐らく追手か何かだろうと考えている。
現在イゼと楓は北上しており主に陸地移動で北アメリカ大陸の大都市イブックを目指している、というのも恐らく以前発見した記事からしてイブックにいるイブック・フールが今回の騒動の発端ではないかと考えている。この人物若いながら現イブックの市長であり以前発見した記事で堂々とマキナに対する敵意を示していた。
またそれなりに権力があることから様々な点において融通が利く人物でもあるため怪しいと睨んでいる。また純平とも連絡を取り合っており向こうでも何故こうなっているのかを調べてくれている、楓からそのことを頼まれた時の声は弾んでいた。分かりやすい人である。
実際に純平が動き出し調べていると決算などおかしいと感じる部分がいくつか見つかっており、普段の悪事なども出てきているようだ。ただ未だに執拗にマキナを狙うような動機が分からないので困っている。

「うげ…また検問だ、迂回するよ」
レーダーに映っているのは少しの渋滞とその先頭にはいくつもの車と機動兵器、人間が集まっているのが分かる、恐らくそこでは検問が行われているのだろう。イゼと楓の二人が追われの身となってから検問が行われている場所が次から次へと増えていっている、その度に道を迂回し時には道なき道を渡っている。
また、慎重に移動しなければ発見されて最悪の場合戦闘になりかねない。なるべく人気の無い道を選んではいるのだが、戦闘することになれば数の少なく反重力車を守りながら戦わなければならないこちらが不利になるのは明確である。
一応検問を見つけた際はイゼにマキナまで移動してもらいすぐさま出撃できるようにしてもらっている。静穏モードにし電子機器のほとんどを電源オフにし相手のレーダーに映らないように注意しながら道なき道を進む、しばらくすればその道を抜けられる。
「ふぅ…おっけー、戻ってきていいよ」
「はーい」
イゼが運転席に戻ってくる。
「いつまでこそこそしなくちゃいけないのかなぁ」
「さぁ、少なくとも元凶を引っ叩くまでは無理だろうね。まぁ純平も動いてくれているし早めにわかるといいんだけども」
未だ解決の兆しが見えない二人の先に何があるのか、昼間なのにもかかわらず上空で妖しく紫色に輝く星。禍ツ星が知っているのだろうか。

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