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遥か夢こうのデウス・エクス・マキナ

兎月あぎ

第八章 第三話 大都市ヤマト

大都市ヤマトの手前にある港都市についたイゼと楓の二人、反重力車に乗り込み大都市ヤマトを目指す。大都市ヤマトのあるここ本島は山々が立ち並びその麓に並ぶように道路が敷かれている、そんな道路をすいすいと進みほかの車とすれ違いながら目的地へと近づいていく。
しばらく進むとヤマトの外壁が見えてくる、ヤマトの外壁は今まで見てきた都市のどの外壁よりも丁寧に手入れがされており遠くからでもその綺麗さが分かる。門前までたどり着き身分証を提示、都市内へと入る。そこから見た景色は今までものとはまた一段と違っていた、というのも建築物に木材を多用しておりその柔らかな印象を受ける建築物群に目を奪われる。
「ほわぁ…」
「どう?綺麗でしょ、って言っても私も住んでたのは幼少期だけなんだけどね」
感嘆の声を漏らすイゼに苦笑する楓、そんな二人はヤマトの街中を通過していくのであった。

二人を乗せた反重力車がたどり着いたのは街からは少し離れた場所にある昔ながらの蔵の様式をあしらった住宅だった、二人は車から降り楓が先導する形で住宅へと入っていく。
「金田おじさんいるー?…返事がないな、どっかに出かけてるのかな。このぐらいに着くっていってたのに」
楓が玄関から奥のほうに向かって声を出すも返事はない、どうやら楓の様子からして知り合いのようだがどうやら不在のようだ。ここはいったん出直すのか、と思ったら普通に靴を脱ぎだす楓。
「楓、上がっちゃっていいの…?」
「大丈夫大丈夫、知り合いのところだし連絡はしてる。それにちゃんと設備を借りる旨も連絡してるし」
そう言って靴を持ったまま奥へと上がっていくそれに続くようにしてイゼも急いで靴を脱ぎ楓の後を追うのであった。

奥へ進むとまた玄関がありそこで靴を再度履くこととなる、どうやら楓はこの家の構造を知っているらしい。そこから先へ進むと目の前には、他の大都市で見かけるような作りをした家と同程度の広さのある家屋があったのだ。その中からは上記の吹き出す音や何かしらをたたいている音が聞こえてくる、それを確認したのか楓はドアを開ける。
「金田おじさんいるー?あ、いた。もうこの時間帯にくるって言ったじゃない」
「ん、おぉ来てたのか。すまんすまん、いやぁこうして実際に会うのは久しぶりだなぁ」
金田とよばれたおそらく40代ぐらいだろうか、男性と楓が会話を交わす。楓が一通り会話を終えるとこちらを振り向き男性を紹介してくれた。
「こちら金田のおじさん、ここで精錬作業を行っているの。非常に質のいい精錬鋼をを仕上げてくれるから私が大きくなってから仕事で贔屓にさせてもらっていたの。で、今回は例のあれを加工してもらおうと思って」
「話には聞いているよ、とても加工が難しい代物なんだってね」
例のあれとは恐らくマキナの元装甲のことだろう。ここの設備は素人目のイゼでも見たところ大都市にあるものと比べて負けず劣らず、いやそれ以上のものではないだろうか。楓の知り合いだろうしあれを任せても大丈夫だろう。そう考えたイゼは楓の方向を見てうなずく、それを確認した楓はさっそく4機のドローンを使い元装甲を精錬場へと運び込む。ここから先は金田さんと楓の領分だ、その間イゼは家のほうでゆっくりさせてもらうこととなった。

1週間後。
長い長い時間をかけてどうやら精錬が終わったらしい、のだが。出来上がったのは何らかの液体だった。
「…なにこれ?」
「マキナの元装甲よ…こんな形にしかできなかったの、ただ使い道はある」
楓の説明曰くマキナの元装甲は非常に加工が難しいのだがレーザー設備はすべて弾いてしまうため精錬炉に直接かけることとなった。何度も何度も叩き伸ばし精錬していた途中、とある数値が一定値を超えると急にドロドロと溶けだし液体状になることが発覚した。
その後その液体について楓が不眠不休で解析、分析した結果レーザー系のエネルギーを即座に吸収し内部に蓄えるということが発覚した。今回これを使ってマキナのコーティング作業を行うということらしい、これを使えばエネルギー攻撃系を弾くのではなく吸収し仕組みさえ整えれば圧縮し反射し返すことも可能らしい。
「俺もこんなものは初めて見たよ、いったいどこから手に入れたものなんだ?」
と金田さんが聞いてくるのでイゼはマキナのことを嬉しそうに説明していた、理解できるかは別として。
「………」
楓はさっそく今日からコーティング作業に入るらしい、そのためマキナを本格的に改修しなければならない。だが楓からはイゼに向かって今後思い通りのマキナに戻ることはないかもしれないそれだけは許してほしい、とのことだった。
イゼも楓のことは信頼している、だが現状マキナは楓と含めて家族のようなもの何かあってからでは遅い。少し考えさせて欲しいと断りを入れ1日待ってもらうことにした。
「………」
金田さんの家の風呂の中でイゼは考えていた。楓の腕は確かだ、だがマキナは楓にとっては未知数だとも聞き及んでいる。そんな際にひょう爺から受け継いだマキナが壊れてしまうなんてことがあれば立ち直れないかもしれない。だが…そこまで考えて湯船にどっぷりと顔まで浸かりこむ、そして水をまき散らしながら飛び出す。
「…決めた」

後日マキナの本格的な改修作業が開始された。今回の改修作業は内部フレームまで干渉するために相当時間がかかるらしい、また内部フレーム機構も現在の技術に近いものに変えてみるとも言っていた。それによってどこまで変化するのか、イゼは待つしかないのだ。期待と不安がぐるぐる織り交ぜる中イゼは待ち続けるのだった。

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