遥か夢こうのデウス・エクス・マキナ

兎月あぎ

第七章 第一話 決勝戦開始!

突然のことに硬直する二人、そんなことはお構いなしに真剣な眼差しで楓を見つめる純平。次に動き出したのは楓でありプロポーズの返答はというと。
「受け取るかバカあああぁぁぁ!」
「うぼあっ」
盛大なグーパンチだった。吹っ飛ばされた純平は慌てて身だしなみを整え楓に聞き直す。
「なっ、なんで駄目なんだい」
「なんでもなにもあるか!突然来てプロポーズするなんてアホか、100年早いわ!」
「じゃ、じゃあ100年後に結婚してくれるのかい!」
「言葉通りに受け取ってるんじゃないよバカ!」
実際寿命は数百年前と比べて非常に伸びているため100歳以上の人物も数多くいる、もちろん英雄と呼ばれたような人物も存命だったりする。
「なんにせよ帰れ!」
「仕方ない…また出直すよ」
「出直さんでいい!」
顔を真っ赤にしながら叫ぶ楓に対して、殴られた上に振られたのにも関わらずどこ吹く風な純平。純平的にはまだチャンスがあると思っているようだが…。そのまま服を正して純平は帰っていくのであった。
「…すごかったねぇ」
「イゼちゃん…気にしなくていいからね?…まぁ予想外のことだったけどとりあえず作業にもどろっか」
「はーい」
そう言って二人は再び格納庫内に戻っていき、マキナの修理、メンテナンス、改修作業を行うのであった。




次の日、決勝戦開始前。マキナの最終メンテナンスを行っている所に再び純平がやってきた。
「昨日はいきなりすまなかったね」
「その自覚があるならなんでこんな試合直前にやってきたのさ」
再び楓から冷たい視線を向けられ苦笑いする純平、そんな純平はイゼに向き直る。
「イゼちゃん、今日はいい勝負をしよう」
そう言って手を差し出してくる、それに対してイゼは。
「もちろん!」
にっこりと笑顔を浮かべながら答えその手を取るのであった。

「長らくお待たせいたしました!本日ぅ、遂に今大会優勝者が決まりますッ!まずは現在トーナメント戦の優勝を5連覇するという大快挙を挙げている純平選手の入場だぁ!」
「「「「「うおおおぉぉぉっっっ!!」」」」」
歓声と同時に純平の乗る機動兵器が入場する。名はサンギス・ソークド・ウーフー、モデルがオオカミのビーストフレームの機体だ。
「対して相手となるのは今大会出場者最年少!期待のルーキーであり、あの戦場の死神を倒した少女!イゼッ!」
「「「「「うおおおぉぉぉっっっ!!」」」」」
再び歓声が沸き上がりその歓声と同時にマキナが入場する。入場してきたマキナの姿は今までのマキナと比べて全体的にふっくらしている、これは改修の結果着脱可能の白色追加装甲をこの試合のために装着してきたのだ。武器はショックガンが大型のものに取り換えられているがそれ以外の武装は前回と変わりない。
「さて両者入場が完了しました!それでは決勝戦を開始いたします、試合開始ぃ!」
「「「「「うおおおぉぉぉっっっ!!」」」」」
歓声が沸き上がると同時に動き出したのはウーフーのほうだった。俊敏な動きでマキナのもとへと近づく、接近すると同時にウーフーは持ち前の鋭い爪を大きく振り上げマキナの装甲を引き裂かんとする。
それに対してマキナは短剣を取り出しウーフーからの攻撃に備える。振り下ろされた爪を短剣で防ぐ、硬質な音が会場内に響き渡る。お互い譲り合うことなくつばぜりあう状況となる、膂力はマキナのほうが上なのだが体勢のせいかウーフーに押され気味である。
「こんにゃろっ!」
そこでマキナをすぐさま倒れ込まさせ両足でウーフーの腹部を思いっきり蹴り上げる、その蹴りは綺麗にヒットしその場からウーフーを離脱させるのには十分だった。すぐさまマキナは起き上がり体勢を整える。短剣のほうをちらりと見るとほんの一部だがすでに刃こぼれを起こしていた、それだけの脅威なのだろう。
マキナは腰からスモークグレネードを取り出し起動、そのままウーフー目がけて投げつけその隙に大型ショックガンを装備する。そのままショックガンのチャージを開始し煙が晴れるか、煙を割いてウーフーが出てくるかの瞬間を狙うためショックガンを構える。
数秒後煙を割いてウーフーが出てくる、位置は真正面外すわけがない。
「もらった!」
ショックガンからまばゆい光が漏れ出し一直線に光弾がレーザーのように放たれる、その攻撃は真正面から突っ込んでくるウーフーのヘッド部分に吸い込まれるように近づいていき。
光弾は放射状に弾かれた。当たった個所を見てもほんのり色が変わってるぐらいで特段変化はない。
「なっ!?」
そのまま鋭い爪がマキナの顔へと迫る、とっさのことにショックガンを顔の前に持ってきてしまいそのままウーフーの爪がショックガンに突き刺さり爆発する。爆発により一瞬視界を奪われたマキナ、次の瞬間ウーフーに覆いかぶされるように倒される。
すると頭の上からガコンと音が聞こえてきた。何事かとウーフーのほうを見ると頭部がまるで口のように、いや口なのだろう。開ききりマキナの頭部を喰らわんと顔を近づけてきたのだった。

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