遥か夢こうのデウス・エクス・マキナ

兎月あぎ

第四章 第四話 リーダー機、決着

大地をがっしりと踏みしめ壊れた戦斧を構えるマキナ、イゼは大きく息を吸い呼吸を一瞬止め大きく吐き出し相手を睨み定める。そしてマキナの全身の膂力とスラスターの出力を上げ一気にリーダー機へと肉薄する。
まずは開いている手で一発拳を入れようとするもこれは大剣で防がれる、追撃で蹴りを入れその場をすぐ離脱、反撃は許さない。すぐさま次の攻撃へと移る、狙うは一点集中だが攻撃する角度は様々な方向から。ヒットアンドアウェイを繰り返すもほとんどの攻撃は防がれてしまう、だが塵も積もれば山となるようにいずれその影響は出てくるはずだ。
何度目か分からない攻撃、だがその攻撃は捉えられリーダー機から反撃の一撃をもらってしまう。吹っ飛ばされ背中から大の字に倒れたとしてもそれでも立ち上がる、攻撃する度に一撃一撃は洗練され鋭さを帯びていく。そしてついにその時が来た。
「ふッ!」
洗練された攻撃の中でも綺麗と思わせるほどの一撃、この攻撃も大剣に防がれるのだが。何度目かもわからないギィンと金属音が戦場に響く、その後聞き取れた者がいるか分からないほどのチリンという音が鳴ると。リーダー機の大剣の構えが崩れる、見るにうまく力が入っていないようだ。どうやら腕パーツの一部が衝撃ではじけ飛んだらしい。
「どうだぁ!やってやったぞー!」
喜びの声を上げるイゼ、先ほどの肉食獣の様な眼光を発していたとは考えられないほど嬉しそうな声を出す。まだ倒していないのにこの喜びようである。それでもあのリーダー機に一矢報いたという結果は残している。
「ふうううぅぅぅ…ラストスパートだ!」
イゼは大きく息を吹き出し、体勢を崩したリーダー機に再び襲い掛かるマキナ。その猛攻にとうとう防戦一方となるリーダー機、それでも一部の攻撃ははじき返してくる。
「でやあああぁぁぁ!」
壊れた戦斧を何度も何度も叩きつける、狙うはパーツが欠損した腕部分。勿論リーダー機もそこが弱くなってることは承知の上なので防御してくる、だがそれを上回る速度を出したマキナの猛攻を受ければ徐々にその傷は深くなっていく。
しかしイゼは油断していた、リーダー機の膂力はただでは無かった。片腕だけであの大剣を振り回してきたのだ、その攻撃は油断していたマキナの横腹を叩く。軽く吹き飛ばされるも空中で姿勢を制御する、片腕だけだったため軽い切り傷程度で済んだが本気だった場合両断されていたかもしれない。
そんなマキナの着地した足跡に何かが転がっているのが見えた。
「これは…いただくか」
落ちていたのは取り巻きの機体の短剣、イゼはここはありがたく壊れた戦斧の代わりに頂戴する。取り回しのいい短剣はヒットアンドアウェイを繰り返すマキナにとって相性のいい武器ともとらえられる。
そして短剣を手にしたマキナによる猛攻が始まる、それに負けじと大剣を振るうリーダー機だがその攻撃が再びマキナへと当たることはない。イゼの眼光は爛々と輝いておりその目は大剣の動きを捉えきっていた。するりと避けるマキナはまるで舞っているようにも見える。だが、予想外のことも起きる。
「なっ、避け切れない!?」
どこにそんな力があったか、それとも最後の膂力を振り絞ったのか。いきなり大剣が軌道を変えマキナへと迫ってきたのだ、今の体勢ではこの攻撃は避け切れない。
世界の速度がゆっくりとなったように感じる中で思考する、どうすればここを切り抜けられるか。避け切ることは先ほども言った通り間に合わない、短剣だけでは防ぎきれない。ではボディで受けきるか、いやそれで両断されては元の子も無い。あと使えるのは…
「これだあああぁぁぁ!」
拳を突き出すその上から思いっきり射出されたのは、パイルバンカー。パイルバンカーの切っ先と大剣が衝突し杭が真っ二つに両断されていく、杭が1本2本と消費されていく。そして杭の残数が尽きようとしたところで大剣が止まる。
「今だ!」
リーダー機の首元の装甲と装甲の間を狙って短剣を振り下ろす、それと同時にアマディロの機能である瞬間変形により防ごうとする。
「間に合えええぇぇぇ!」
ガキンと音と共に短剣がリーダー機の頭部とボディの間に挟まる。その切っ先は…コックピットから繋がっているケーブルを切断するまでに至っていた。こうして賊のリーダー機との戦闘は終幕を迎えたのであった。

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