遥か夢こうのデウス・エクス・マキナ

兎月あぎ

第四章 第二話 新兵器と被甲目

機動兵器用短剣が振り下ろされる、それをマキナは戦斧ではじき追撃で拳を食らわせる。その後ろからすぐに槍を持った敵機が現れマキナの胸部を貫かんとす、その攻撃を脇側へと誘導し槍が通り抜けたところを柄の部分を掴み敵機ごとそのまま地面へと叩きつける。
一方楓側は反重力車の格納していた砲台を展開、少しでも手助けになるよう一撃でも多く敵機に当てようと操縦している。しかし如何せん数の差で防戦一方となってしまう、今の所リーダー機らしき敵機が動いていないことからギリギリ保てているもののリーダー機まで動き出すとなると敗北が濃厚となるだろう。そんな中楓が先ほどから行っていた作業が終わる、それは。
「イゼちゃん!今からそっちに賊の機体情報を送るよ!」
「了解、ありがとう!」
楓の記憶能力と機動兵器から必ず発せられる電波を反重力車でキャッチしデータベースで参照、確定させイゼとマキナのサポートをする、これらを行っていたのである。
チュインという音と共に光弾が飛んでくるも反重力車はその攻撃を跳ね返す。
「効かないよ、この車は特別だからね?」
にやっと笑う楓は再び援護射撃を開始するのであった。

「うぉりゃあああぁぁぁ!」
スラスターの出力を上げその勢いに乗り戦斧で敵を叩き込まんとする。しかし振り下ろされる瞬間敵の上半身が変形、半球体のような形となり戦斧が直撃するもツルンと滑り地面に大きな亀裂を作る。
「あぁもう!ダンゴムシ嫌い!」
先ほど送られてきた楓からの機体情報、そこに書かれていた通りの状況に陥っていた。というのも今回の賊たちが使っている機動兵器、かなり特殊な形をしており全体的に丸っこく瞬間変形機構を搭載。先ほどのように瞬間的に変形することによって球体状態となる、何故このような変形機構を搭載しているかというとこの形態になることで刃や銃弾が流されやすくなるためとのこと。そのためイゼは色合いが灰色なこともあり嫌味でダンゴムシと呼ぶことにしている、因みに本来の機体名はアマディロである。世代としては1世代前のものであるものの十分現役である。
変形した敵機を蹴り飛ばし距離を取るもすぐさま他の敵機が襲い掛かってくるためキリがない。戦斧を使って丸まったところを野球のようにフルスイングして打撃を与えたり、半球体になったところを足を掴み左右の地面に叩きつけたりするもあまり効果が無いように見える。そこで送られてきた情報をよくよく見ると装甲にはショックアブソーバーが全面に取り付けられているため打撃はほぼ無効と黄色文字で書かれてあった。
「見にくっ!くそう…どうすれば」
後方を見ると砲撃でなんとか1機と渡り合っている反重力車が見える、どうにかしてあちらも倒さねばリーダー機も残っている。
「うぅん…あっ、そうだ」
と何かを思いついたイゼ、早速それを試してみるべく攻撃を始めるのであった。

「ふっふっふっ手も足も出まい!」
球体に変形し防御形態をとっている賊にとってはそれこそ文字通り手も足も出てはいないのだが現状イゼたちも手の出しようがない状況なのは間違いない。
「おいおい、油断すんじゃねぇぞ」
「お前らさっさとそいつを始末してこっちも手伝わんかい!」
ケラケラ笑いながらヤジを飛ばす仲間や切羽詰まった声を出す仲間、それを見守る賊のリーダー。そんな中外部からガツンと音が聞こえてくる。
「ん?」
「おい今すぐ脱出s」
焦った声で注意を促す仲間のその声は最後まで届けられることは無かった。ギャリッと音がしたとともに男の命が散ったからだ。

「よっし、これで一機撃破」
「イゼちゃんナイス!くッ、しつこぉい!」
そう呟くイゼ、視線の先にはパイルバンカーを撃ち込まれたアマディロの姿があった。そう、新たに装着された腕にはパイルバンカーが仕込まれていた。球体になって動かない敵で装甲を貫通できるのであれば頭上からお見舞いするには最適な武器である、動いている相手に当てるのは厳しいものの止まっているのであればその限りではない。
杭を引き抜いていると飛び掛かってくる敵機の姿が見えたので。
「そぉい!」
杭を引き抜くのを止め残骸を持ち上げそれを盾とする、しかしお構いなく短剣を思いっきり叩きつけられるので体勢を崩してしまう。そこに追い打ちをかけるように光弾が飛んでくるも、これはマキナの装甲に弾かれる。急いで体勢を立て直し状況を見るとリーダー機がとうとう動き出した、リーダー機は背中に背負っていた大剣を構える。イゼはごくりとつばを飲み込む、ここからが本当の戦いだそう認識せざるを得なかった。

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