遥か夢こうのデウス・エクス・マキナ

兎月あぎ

第三章 第四話 零れ落ちた一番星

マキナの胸部装甲付近までリフトで持ち上げられる、するとマキナはイゼが近づいてきたのを感知したかのように胸部装甲が開きコックピットが現れる。
「…なるほど、生体感知型なのかな?今時珍しいんだよね、操縦者がいないとメンテナンスがすごいめんどくさいから」
「そうなんだ…?」
イゼはよく分かってない顔をしながらも楓の説明を聞いていく、次に本当に所有者かどうか確認したいからコックピットの中に入らせてくれと頼まれた。断る必要も特にないので了承し、一緒にコックピット内に入る。楓が複数工具を取り出しながら前方のパネルをいじり始める、その様子を見ながらイゼは今回購入した服や荷物を丁寧にまとめる作業をする。
作業が始まって数十分後パネルとにらめっこをしていた楓が顔を上げ息をつく、どうやら作業は終了したようだ。晩御飯用に食べていた固形食糧と串焼きを飲み込み楓に近づく。
「ふぅ!終わったぁ!やっぱり触ったことのない機体を調べるのは大変だけどワクワクするね!イゼちゃん、何かの端末貸してもらっていい?」
そう言うのでイゼは端末を差し出す。端末を受け取った楓は楓の持っていた端末とコードで繋ぎ何かしらの作業を数分行うと笑顔で端末を返してきた。
「はい!これで機体証明発行しておいたからここをタッチして…ここを開けば出てくるからこれで次から大丈夫」
「ありがとう!はぁ、これで捕まらずに済むよ…」
はははと苦笑しながらこちらを見る楓、そんな楓についでにできないかとイゼは目的だった片腕の交渉を始めた。これで万事解決…とはならずどうやら予約必須なうえ急務でマキナをここに置いているためこれ以上置いておくことはできないとのこと、そのためイゼはこの都市から立ち去らなければいけない状態となった。
楓はどうにかできればよかったとは言っていたものの流石にこればかりはどうにもならないらしい、すると楓はしばらくの間考える素振りを見せメモ用紙に殴り書きそれを渡してきた。そこには第三地区ゲート付近の小高い丘に早朝集合!とだけ書かれていた。
マキナの中に入りガントレットを付けマキナを起動させる、そこからは誘導に従い第八地区ゲートに向かって移動し外へと出ることとなった。
外はすでに日がとっぷりと暮れており、真っ暗な夜道の中マキナを外壁を目印に第三地区ゲート付近の丘まで移動させ今日はそこでマキナを座らせイゼもその中で寝ることとなった。
「ふあぁ、ここ数日でいろんなことがあって疲れたなぁ…おやすみぃ」
丘の上で鎮座するマキナは星光に照らされ淡白く輝いていた。


早朝、日が昇り地上が照らされマキナもその輝きを受ける中イゼは起床の時間を迎えた。眠い目をこすりつつ新しく買った櫛で髪を梳き固形食糧と水分を取る、荷物の中身を確かめマキナを完全に起動させる。周りを見渡すも今の所何の変化もないのでしばらく待っていると第三地区ゲートの方から何か巨大なものが近づいていて来るのが見えた。それは徐々に近づいてきておりマキナの目の前で停止する。それはマキナより巨大であり都市内で飛び回っていた中でも最大サイズの超大型反重力車のようだ。
次いでそれから先日聞いた声が聞こえてくる。
「イゼちゃん後ろに回って、ハッチを開けてるからそこにマキナを入れてもらえればオッケーだよ!」
そう楓だった。イゼは指示通りに後ろに回り超大型反重力車後部の開いているハッチにマキナを入れる、中は第八地区で見た工房の様な内装となっておりここでメンテナンスとかが出来るのだろうそうイゼは捉えた。マキナが固定されたのを確認しガントレットを外しコックピットから降りる、その先に楓はいた。
「楓、さん…?それにしてもどうしてここに呼び出したの?工房は良いの?」
「さん付けはしなくていいよ。工房の方はそうだねぇ、ねぇこれから先どうするつもりなの?」
そう楓が笑いながら聞いてくる。
「とりあえず片腕を作ってくれる場所を探したいのと、あとは…宇宙に行きたい!」
「そっかそっかぁ…じゃあさ私も連れて行ってよ!工房にはとりあえず置手紙しといたからさ、それに私がいればこの機体のメンテナンスも請け負うよ。ね?悪くない話でしょ!
本音はもっとこの見たこともない機体をいじりたいだけだけど(ボソッ)」
最後に何か言っていたようだがイゼは情報量の多さに呆けていた、そして今言われた言葉を反芻し考え直すと。
「え、えええええぇぇぇぇぇ!?」
早朝から工業都市ルピス近郊の小高い丘に絶叫が響くこととなった。

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