私にだって選ぶ権利はあるんです!~お仕置き中の神様に執着されました~
モヤモヤ
「うわ~、うさぎ可愛い〜癒やされるぅ!」
胸元に抱き上げたうさぎのふわふわの体毛に指を埋めながらモフモフし、風花は初めての痴漢に傷ついた心を癒やしてもらっている。
痴漢騒動の後、最寄りのバスターミナルからバスに乗った後、降りた駅から二駅ほど離れたショッピングモールに来ていた。
小高い丘に建てられた洋風なデザインのモールには小規模な水族館が併設されているらしい。
入場券を購入し館内に入ると、真っ先にカブトガニに触れる展示スペースがあった。
天然記念物のカブトガニの甲羅を明良とおっかなびっくり人差し指で触ったり、花畑をイメージしたレイアウト水槽に泳ぐ色とりどりの熱帯魚や、珍しい爬虫類を見ては二人で騒ぎながら館内を見て回る。
途中で幻想的にライトアップ展示された大きな錦鯉に、手ずから餌を与えたりして大いに楽しんだ。
水族館の出口近くに併設されたカフェスペースでは、うさぎやモルモットを始め珍しいトカゲに触ったり、巨大なヘビを肩に乗せてくれるふれあいカフェがあり、明良が勧めてくれたこともあって風花は可愛いうさぎをひたすらモフっている。
きっと定期的にきれいに洗われているのか、獣特有の匂いはあまり感じない。
風花は手触りの良いうさぎの柔らかな毛皮を撫で回す。
「そうだな可愛いな」
明良は特になにか動物に触るわけでなく、飲み放題のドリンクバーからコーヒーを持ってきて、テーブルに頬づえをつきながら飲んでいる。
「明良君は触らないの?」
「う~ん、今はいいかな?」
ニコニコと機嫌良く風花の様子を眺めている明良は、無意識なのだろうが、同じカフェ内のデート中らしい女性達の秋波の視線を一身に集めている。
そして風花には蔑むような鋭い視線があちらこちらから突き刺さってくるのだ。
うさぎを堪能して、お礼を言ってからゲージに戻し、視線から逃れるように部屋の奥にいる小さなフクロウを撫でさせてもらう。
小さなフクロウの頭を撫でながら、風花はふとあんなに嫌がっていたはずなのに明良との外出を心から楽しんでいる自分に気が付いた。
いつもとは違う服を着ているせいか、明良と一緒にいるのが楽しい。
「明良く……」
後ろを振り返り声を掛けようとしたら、三人で遊びに来たらしい色っぽい女の人に座っていたテーブルを囲まれ、何やら話をしている明良の姿に、胸焼けしたようなモヤモヤとした気分になる。
露出の高い服から立派な谷間を見せ付けるようにして明良に迫る大学生くらいの女の人に苛立ちが募る。
「ねぇ、私達と一緒に遊びましょうよ」
「貴方カッコイイわね、なんて名前?」
「おねぇさん達がイイ事教えてあ・げ・る」
(イイ事ってなんだ! 明良君は私とデート中なのに! )
苛立ちながらフクロウを返して明良の顔を見れば、顔色が悪い事に気が付いた。
かろうじて薄ら笑いを浮かべているけど、何かおかしい。
さらにモーションを掛けようと女の人の手が明良へ伸ばされ……
「明良君! そろそろ時間だよ! 帰ろう!」
風花が大きな声で名前を呼ぶと女の人の手が触れる前に立ち上がり、荷物を持ってこちらへ早足にやってきた。
「そうだな、帰ろうか」
ホッとした様子で隣に並ぶ明良の僅かに震えるの手を取り、大丈夫だよと思いを込めて握りしめる。
手を繋いだままでお金を払い、水族館の外に出れば、夕暮れに空が赤く染まっていた。
二人で手を繋いだまま、風花は電車の駅に向かって歩いていく。
「風花」
ふいに名前を呼ばれて顔を上げれば、明良と視線が交わる。
「さっきはありがとうな、おかげで助かった」
「ううん、気にしないで。 私も駅で明良君に助けてもらったし」
「そうか、お互い様だな。 ところで風花、どこに向かってるんだ?」
にっこりイケメンスマイルを浮かべた明良に聞かれて答える。
「うん、明日は学校だしそろそろ帰らなくちゃならないでしょ? 電車のほうが帰るのに便利だし……」
風花が電車で帰ると決めたのに、痴漢された恐怖に足がすくむ。
無意識に繋いだ手に力が入った。
「風花、大丈夫か?」
心配そうに風花の顔を覗き込む明良を見上げる。
「うん、明良君と一緒なら平気だよ。 だけど、家に着くまで手、繋いでてもいい?」
断られても良いと覚悟して懇願すれば、明良は風花の頭に手を載せて優しく撫でた。
「もちろん。 一緒に帰ろう」
その後手を繋いだままで電車に乗り込み、自宅へと帰った。
「明良くん……えっ、風花?」
帰り道の歩道で愛美に見られているとは知らずに……
胸元に抱き上げたうさぎのふわふわの体毛に指を埋めながらモフモフし、風花は初めての痴漢に傷ついた心を癒やしてもらっている。
痴漢騒動の後、最寄りのバスターミナルからバスに乗った後、降りた駅から二駅ほど離れたショッピングモールに来ていた。
小高い丘に建てられた洋風なデザインのモールには小規模な水族館が併設されているらしい。
入場券を購入し館内に入ると、真っ先にカブトガニに触れる展示スペースがあった。
天然記念物のカブトガニの甲羅を明良とおっかなびっくり人差し指で触ったり、花畑をイメージしたレイアウト水槽に泳ぐ色とりどりの熱帯魚や、珍しい爬虫類を見ては二人で騒ぎながら館内を見て回る。
途中で幻想的にライトアップ展示された大きな錦鯉に、手ずから餌を与えたりして大いに楽しんだ。
水族館の出口近くに併設されたカフェスペースでは、うさぎやモルモットを始め珍しいトカゲに触ったり、巨大なヘビを肩に乗せてくれるふれあいカフェがあり、明良が勧めてくれたこともあって風花は可愛いうさぎをひたすらモフっている。
きっと定期的にきれいに洗われているのか、獣特有の匂いはあまり感じない。
風花は手触りの良いうさぎの柔らかな毛皮を撫で回す。
「そうだな可愛いな」
明良は特になにか動物に触るわけでなく、飲み放題のドリンクバーからコーヒーを持ってきて、テーブルに頬づえをつきながら飲んでいる。
「明良君は触らないの?」
「う~ん、今はいいかな?」
ニコニコと機嫌良く風花の様子を眺めている明良は、無意識なのだろうが、同じカフェ内のデート中らしい女性達の秋波の視線を一身に集めている。
そして風花には蔑むような鋭い視線があちらこちらから突き刺さってくるのだ。
うさぎを堪能して、お礼を言ってからゲージに戻し、視線から逃れるように部屋の奥にいる小さなフクロウを撫でさせてもらう。
小さなフクロウの頭を撫でながら、風花はふとあんなに嫌がっていたはずなのに明良との外出を心から楽しんでいる自分に気が付いた。
いつもとは違う服を着ているせいか、明良と一緒にいるのが楽しい。
「明良く……」
後ろを振り返り声を掛けようとしたら、三人で遊びに来たらしい色っぽい女の人に座っていたテーブルを囲まれ、何やら話をしている明良の姿に、胸焼けしたようなモヤモヤとした気分になる。
露出の高い服から立派な谷間を見せ付けるようにして明良に迫る大学生くらいの女の人に苛立ちが募る。
「ねぇ、私達と一緒に遊びましょうよ」
「貴方カッコイイわね、なんて名前?」
「おねぇさん達がイイ事教えてあ・げ・る」
(イイ事ってなんだ! 明良君は私とデート中なのに! )
苛立ちながらフクロウを返して明良の顔を見れば、顔色が悪い事に気が付いた。
かろうじて薄ら笑いを浮かべているけど、何かおかしい。
さらにモーションを掛けようと女の人の手が明良へ伸ばされ……
「明良君! そろそろ時間だよ! 帰ろう!」
風花が大きな声で名前を呼ぶと女の人の手が触れる前に立ち上がり、荷物を持ってこちらへ早足にやってきた。
「そうだな、帰ろうか」
ホッとした様子で隣に並ぶ明良の僅かに震えるの手を取り、大丈夫だよと思いを込めて握りしめる。
手を繋いだままでお金を払い、水族館の外に出れば、夕暮れに空が赤く染まっていた。
二人で手を繋いだまま、風花は電車の駅に向かって歩いていく。
「風花」
ふいに名前を呼ばれて顔を上げれば、明良と視線が交わる。
「さっきはありがとうな、おかげで助かった」
「ううん、気にしないで。 私も駅で明良君に助けてもらったし」
「そうか、お互い様だな。 ところで風花、どこに向かってるんだ?」
にっこりイケメンスマイルを浮かべた明良に聞かれて答える。
「うん、明日は学校だしそろそろ帰らなくちゃならないでしょ? 電車のほうが帰るのに便利だし……」
風花が電車で帰ると決めたのに、痴漢された恐怖に足がすくむ。
無意識に繋いだ手に力が入った。
「風花、大丈夫か?」
心配そうに風花の顔を覗き込む明良を見上げる。
「うん、明良君と一緒なら平気だよ。 だけど、家に着くまで手、繋いでてもいい?」
断られても良いと覚悟して懇願すれば、明良は風花の頭に手を載せて優しく撫でた。
「もちろん。 一緒に帰ろう」
その後手を繋いだままで電車に乗り込み、自宅へと帰った。
「明良くん……えっ、風花?」
帰り道の歩道で愛美に見られているとは知らずに……
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