元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね!?

紅葉ももな(くれはももな)

 レイナス王国軍で使用されている鎧は所謂プレートアーマーと呼ばれる金属の板を様々な形状に切り出して、ハンマーで叩いてパーツにし、組み合わせ全身を覆う金属の鎧だ。


 一応は体の動きを妨げないよう重ね合わせたり関節を設けたりと創意工夫と微調整はされている。


 全身を守る鎧はその防御性能の高さから騎馬に乗って敵の陣地へ斬り込む事が多いこの世界の戦い方に適していると言える。


 死角から飛んでくる敵の矢すら弾き返し、刃物は鋼鉄の鎧に阻まれ身体に刃が届くことは少ない。


 しかしその鉄壁とも言える防具は人ひとり分ほどの重量をもち、着用者の俊敏な動きを妨げる。


 よって、敵陣へ切り込むには機動力を補うために騎馬が必須。


 しばし待った後、もっとも早く訓練場に戻ってきたのは体力自慢の若人ではなく、この鎧の特性に精通している玄人達だった。


「ふっ、鎧を身に付けず持って運ぼうなどとは愚の骨頂」


「そうですな、今日から暫くの軽武装ではなく重装備での実践訓練にした方が良いかもしれませんね」


 そう言って廊下で鎧の重さに耐えかねて潰れている新人騎士を避け、身につける事なく鎧を抱えて一目散に走り出したものの鎧を床にばら蒔いた者、また鎧を持ったまま走りつづける騎士たちを妨害し転ばせ撃破していったのだ。


 目の前に立っているのは、それらの試練を乗り越えた、まさに戦闘民族サイ……ゲフンゲフン、レイナス王国の猛者たちだろう。


「うわぁ、えげつない」


「口が過ぎますぞ、戦場では過程がどうであれ生き残ったものが正義なのですよ」  


 涼しげにさも当然、これが常識だと言わんばかりの態度のベテラン騎士たちに苦笑いを浮かべた。


 しかし言っていることもあながち間違ってはいないため、苦笑いを浮かべているうちに対戦相手となる十名が決定したようだ。


「さてや(殺)りましょう!」


「ふふふっ、さて殿下はいかほどご成長されたのか、最近は政務にかまけて訓練には滅多にいらっしゃいませんからな」


 うきうきと自分の長剣を撫で擦りながら、ちゃっかり十人入りを果たしたバルドメロの指揮のもと、順番決めが行われるようだ。


 ちなみに順番決めは大抵勝ち残り式の一対一の試合の形になるため時間がかかりすぎる。


 しかも勝者が決まった頃には幾度の試合の末に体力が限界を迎えてしまうというね。


「ちょっと待った!」


 いつも通り剣を手に順番を決めるために動き出した十名を引き留める。


 今回この訓練場にやって来た理由は個人戦と言うよりも、それぞれの鎧を来た状態での性能の差を比較したかったからだ。  


「じゃん拳で順番を決めましょう!」


『ジャンケン?』


 あれ? もしかして、じゃん拳無い感じ?





「元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね!?」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く