元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね!?
翌朝、どうしてもスノヒス国へ入りたい双太陽神教会の関係者達と一緒に、獣道ではなく街道を行くことになった。
相変わらず雪は降り続いているものの、意外と視界は良好だ。
街の猟師たちが国境付近に住み着いた怪物を偵察に行くらしく、それに同行してもらいなから街道沿いにスノヒス国を目指すことになった。
まぁ誰も怪物の正体が小さくなって私の肩で甘えている赤い竜だとは思うまい。
案の定何も現れることはなく、一行は無事に国境を抜けることができた。
「うわぁ〜! 真っ白だ」
眼前に一面の雪景色が広がっている。
どうやら今回の移動で一緒となった教会関係者はみな、気質の優しい者ばかりのようで、どうせならとそのまま教会本部がある首都まで同行させていただけるようになった。
同行者の人数が増えた分夜間など野営の際に護衛を交代で行えることは同行者があまり多くない私達にとって何よりのメリットだ。
しかし雪中のスノヒスの寒さは身に応える、手袋や防寒着などを用いても寒いものは寒いのだ。
雪景色もすっかり見飽きたころ目の前に現れたのは高く連なった真っ白な山脈。
まぁ山に限らずあたり一面真っ白ですがね。
「レオル殿あれがスノヒス国の聖都プリャですよ」
そう言って教えてくれたのは仲良くなった双太陽神教のエレナ大司教だ。
このエレナ大司教は昔幼児愛好癖のあるアンナローズ大司教と同じくロブルバーグ聖下を支持する方らしい。
アンナローズ大司教と歳も近いようで物腰柔らかなエレナ大司教とどこかしら残念臭漂うアンナローズ大司教は仲良しだそうな。
「……えっ、どこ?」
示された場所を確認しても眼前にあるのは雪に覆われた高い山脈、目を凝らせば山の頂上に神殿らしき建物は見えるが、都と呼べるような建物が見当たらない。
「ふふふっ、いま立っている場所がですよ。 スノヒス国はこのように一年の大半が雪と氷に覆われた国です。 ですから聖都プリャや準ずる大都市はみな地下にあります」
へっ、地下?
思わず足元に視線を下げて片足を上げてみる。
しかしどう見ても雪しか見えない。
「地下は地上よりも冬は暖かく夏は雪解け水を引き込んでいるから涼しいんです。 場所によっては用水路に地下を流れる熱水を引き込んで地熱を利用している所もあります」
そう話しながら案内されたのは山脈に繋がるように作られた石壁の建物だった。
馬車ごと通れるように作られている建物は間口が広く馬車が三台すれ違える程に広い。
立派な石柱で支えられた石天井には双太陽神教の教えを元にした彫刻が掘られている。
どうやら建物は検問のような役割もあるらしく教会の守護騎士が入都する者たちの検査をしているようだった。
検査は一般市民や旅の商人用の検査場と貴族や王族、教会関係者用の検査場に別れているようで、どちらも素晴らしい混みっぷり。
これ並ぶのかぁ……面倒くさいなぁ。
「またスノヒス国は珪石と呼ばれる鉱石や色石などが豊富に産出されるため、採掘後の鉱山を街として再利用しています」
なにそれ凄い、この世界は前世と違って採掘用の重機や爆弾がない分、手作業で掘り進めるため時間がかかる。
崩落の危険なんかもある中で人が住めるほどに掘り進むのは大変だっただろうな。
「落石や落盤、雪崩などは起きないのですか?」
「もちろん起きますよ。 ただこの地は双太陽神の加護があるため大地が揺れると言うことはまずないため、大災害にはなりませんわ」
前世で自身の多発する地域に住んでいたこともあり、地震の恐ろしさを身を持って体験している私からしたら地震がないのはすごいことだと思う。
とりとめない情報交換をしているうちに順番が来たので旅商人レオルではなく、シオル・レイナスとして入都する事にした。
自分が親しげに話していたのが実は王子だと知ったからか、セレナ大司教から驚いている様子が伺えてイタズラが成功したときのような高揚感がある。
「レイナス王国の王子殿下でいらっしゃいましたか! これは失礼を致しました」
慌てた様子のセレナ大司教に今まで通り接してもらえるように説得し、なにかお詫びをしたいと言われて、聖都プリャの案内を頼むと、快諾してくれた。
追従の騎士たちやリヒャエルとクロードと一緒に岩回廊を進めば、日の光とも松明の明かりとも違う光が地下通路を照らし始めた。
「これはなんの光ですか?」
隣にいるセレナ大司教に問いかけると、微笑みながら壁に近づき手を触れた。
「ご覧ください」
そう言って見せられたセレナ大司教の手は僅かに光を発している。
「これは光苔といって自ら光を発します。 この通路はまだ外の光が室内に入ってくるためあまり強く光りませんが、街に入ればまるで昼間のように煌々と光り輝いていますよ」
光苔……なんと便利な不思議植物なんだろう。
こう言う何気ない生活の端々にここがか地球ではなく異世界なのだと気付かされる。
暗がりのなだらかな下り坂を馬車ごと進むと目の前が明るくなった。
「うわぁ〜」
見上げるほどに高い岩の天井には光苔がびっしりと生えているのか広い空間を明るく照らし出している。
転落防止柵が張り巡らされた広場から見下ろす聖都は故郷レイナス王国の王都をぐるりと囲む外壁の上から見た街の風景とあまり遜色ない。
違いがあるとすれば太い石の柱が数本都市を支えるように地面から天井まで伸びているし、壁沿いには馬車で街へと降りる為のスロープが続いている。
岩の壁に窓が見えることから、岩をくり抜いて住んでいる者達もいるのかもしれない。
「うふふっどうやらお気に召していただけたようですね、このような都市がこの中央聖区を中心に東西南北に四区画あります」
エレナ大司教の説明にこの都市のような巨大地下都市があることに驚く。
「北聖区は双太陽神教の大聖堂があり、ロブルバーグ教皇聖下や双太陽神の神子様がお住まいです。 またそのお世話をする者も北聖区に住んでおりますね」
スロープをゆっくりと下りながら街へと降りる。
短距離で街へと降りる階段もあるようだが、馬車は下りられず角度も急なため体力に自信がある者達以外にはあまり好んでは使われないだろうな。
まぁうちの脳筋たちは喜んで駆け上がりそうだけど……
相変わらず雪は降り続いているものの、意外と視界は良好だ。
街の猟師たちが国境付近に住み着いた怪物を偵察に行くらしく、それに同行してもらいなから街道沿いにスノヒス国を目指すことになった。
まぁ誰も怪物の正体が小さくなって私の肩で甘えている赤い竜だとは思うまい。
案の定何も現れることはなく、一行は無事に国境を抜けることができた。
「うわぁ〜! 真っ白だ」
眼前に一面の雪景色が広がっている。
どうやら今回の移動で一緒となった教会関係者はみな、気質の優しい者ばかりのようで、どうせならとそのまま教会本部がある首都まで同行させていただけるようになった。
同行者の人数が増えた分夜間など野営の際に護衛を交代で行えることは同行者があまり多くない私達にとって何よりのメリットだ。
しかし雪中のスノヒスの寒さは身に応える、手袋や防寒着などを用いても寒いものは寒いのだ。
雪景色もすっかり見飽きたころ目の前に現れたのは高く連なった真っ白な山脈。
まぁ山に限らずあたり一面真っ白ですがね。
「レオル殿あれがスノヒス国の聖都プリャですよ」
そう言って教えてくれたのは仲良くなった双太陽神教のエレナ大司教だ。
このエレナ大司教は昔幼児愛好癖のあるアンナローズ大司教と同じくロブルバーグ聖下を支持する方らしい。
アンナローズ大司教と歳も近いようで物腰柔らかなエレナ大司教とどこかしら残念臭漂うアンナローズ大司教は仲良しだそうな。
「……えっ、どこ?」
示された場所を確認しても眼前にあるのは雪に覆われた高い山脈、目を凝らせば山の頂上に神殿らしき建物は見えるが、都と呼べるような建物が見当たらない。
「ふふふっ、いま立っている場所がですよ。 スノヒス国はこのように一年の大半が雪と氷に覆われた国です。 ですから聖都プリャや準ずる大都市はみな地下にあります」
へっ、地下?
思わず足元に視線を下げて片足を上げてみる。
しかしどう見ても雪しか見えない。
「地下は地上よりも冬は暖かく夏は雪解け水を引き込んでいるから涼しいんです。 場所によっては用水路に地下を流れる熱水を引き込んで地熱を利用している所もあります」
そう話しながら案内されたのは山脈に繋がるように作られた石壁の建物だった。
馬車ごと通れるように作られている建物は間口が広く馬車が三台すれ違える程に広い。
立派な石柱で支えられた石天井には双太陽神教の教えを元にした彫刻が掘られている。
どうやら建物は検問のような役割もあるらしく教会の守護騎士が入都する者たちの検査をしているようだった。
検査は一般市民や旅の商人用の検査場と貴族や王族、教会関係者用の検査場に別れているようで、どちらも素晴らしい混みっぷり。
これ並ぶのかぁ……面倒くさいなぁ。
「またスノヒス国は珪石と呼ばれる鉱石や色石などが豊富に産出されるため、採掘後の鉱山を街として再利用しています」
なにそれ凄い、この世界は前世と違って採掘用の重機や爆弾がない分、手作業で掘り進めるため時間がかかる。
崩落の危険なんかもある中で人が住めるほどに掘り進むのは大変だっただろうな。
「落石や落盤、雪崩などは起きないのですか?」
「もちろん起きますよ。 ただこの地は双太陽神の加護があるため大地が揺れると言うことはまずないため、大災害にはなりませんわ」
前世で自身の多発する地域に住んでいたこともあり、地震の恐ろしさを身を持って体験している私からしたら地震がないのはすごいことだと思う。
とりとめない情報交換をしているうちに順番が来たので旅商人レオルではなく、シオル・レイナスとして入都する事にした。
自分が親しげに話していたのが実は王子だと知ったからか、セレナ大司教から驚いている様子が伺えてイタズラが成功したときのような高揚感がある。
「レイナス王国の王子殿下でいらっしゃいましたか! これは失礼を致しました」
慌てた様子のセレナ大司教に今まで通り接してもらえるように説得し、なにかお詫びをしたいと言われて、聖都プリャの案内を頼むと、快諾してくれた。
追従の騎士たちやリヒャエルとクロードと一緒に岩回廊を進めば、日の光とも松明の明かりとも違う光が地下通路を照らし始めた。
「これはなんの光ですか?」
隣にいるセレナ大司教に問いかけると、微笑みながら壁に近づき手を触れた。
「ご覧ください」
そう言って見せられたセレナ大司教の手は僅かに光を発している。
「これは光苔といって自ら光を発します。 この通路はまだ外の光が室内に入ってくるためあまり強く光りませんが、街に入ればまるで昼間のように煌々と光り輝いていますよ」
光苔……なんと便利な不思議植物なんだろう。
こう言う何気ない生活の端々にここがか地球ではなく異世界なのだと気付かされる。
暗がりのなだらかな下り坂を馬車ごと進むと目の前が明るくなった。
「うわぁ〜」
見上げるほどに高い岩の天井には光苔がびっしりと生えているのか広い空間を明るく照らし出している。
転落防止柵が張り巡らされた広場から見下ろす聖都は故郷レイナス王国の王都をぐるりと囲む外壁の上から見た街の風景とあまり遜色ない。
違いがあるとすれば太い石の柱が数本都市を支えるように地面から天井まで伸びているし、壁沿いには馬車で街へと降りる為のスロープが続いている。
岩の壁に窓が見えることから、岩をくり抜いて住んでいる者達もいるのかもしれない。
「うふふっどうやらお気に召していただけたようですね、このような都市がこの中央聖区を中心に東西南北に四区画あります」
エレナ大司教の説明にこの都市のような巨大地下都市があることに驚く。
「北聖区は双太陽神教の大聖堂があり、ロブルバーグ教皇聖下や双太陽神の神子様がお住まいです。 またそのお世話をする者も北聖区に住んでおりますね」
スロープをゆっくりと下りながら街へと降りる。
短距離で街へと降りる階段もあるようだが、馬車は下りられず角度も急なため体力に自信がある者達以外にはあまり好んでは使われないだろうな。
まぁうちの脳筋たちは喜んで駆け上がりそうだけど……
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