元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね!?

紅葉ももな(くれはももな)

 小さくなったサクラを連れての旅は比較的快適だった。


 スノヒス国へ向かうために途中情勢が落ち着かないドラグーン王国の辺境を抜けたが、酷い有様だった……


 新たに王となったファラウンド・ドラグーンはレイス王国への侵略戦争の為に甘い言葉で言葉巧みに戦争で勝てば豊かな暮らしを約束すると煽った。


 その結果、大規模な増税と苦役を課せられた農村部は大切な働き手である次男以降の若い男達を徴兵されていく。


 善戦の報とともに残っていた長男、初老に至るまでの男手を徴兵される流れに、人々は不信感を募らせた。


 これから作付けの季節が来るのに、農村部には身体が不自由な老人や女子供しか居らず、例年の三割弱しか作付けられなかったのだ。


 作付けが減っても兵糧として国から徴収される食糧は増えるばかり、それもお前たちの家族である男達の為だと言われれば差し出すしかない。


 道中立ち寄った街や村は死の気配が漂うほどに荒廃していた。


 そんなドラグーン王国を抜けて大陸の最北東部に位置する双太陽神教の総本山がある国。


 神の子孫が住むとされるスノヒス国へ続く山脈を越えるとそこは白銀の世界だった。


「寒っぶっ!」


「キュウ!」


 寒い国だとはロブルバーグ様に昔聞いてはいたけれど、予想以上の降雪量にドラグーン王国で羽織った外套を握った。


 寒さが身に沁みたのかサクラが私の服の中に潜り込んでくる。


 周りを見れば同行した兵たちも美しい雪景色に呆然としていた。


 レイナス国は周りを連なった山々に囲まれた盆地に出来た国だから四季がある。


 夏は暑いし冬には雪も降る……でも流石にこれは……


「降りすぎでしょ」


 安易に新雪に踏み出した足を積雪に取られて、胸元まですっぽりと埋まった兵を救出する。


 スノヒス国からドラグーン王国へと戻り改めて装備を整えるために出直すことになりました。


 





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