元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね!?
夢現に現れる死神が何度も何度も私をあざ笑いロンダークをさらっていく。
「ロンダーク!?」
「きゃっ!」
すっかり馴染んだ自室のキングサイズのベッドから跳ね起きるとベッド脇から可愛らしい悲鳴が上がった。
さらさらな美しいストレートの金髪を赤いリボンで首の後ろに一つに縛り、緑と琥珀色のオッドアイを零れ落ちそうなほど見開いたキャロラインが私の名前を呼びながら飛びついてきた。
十三歳になった妹の、まるで騎士の着るような軍服を元にした服を纏う姿は、昔のミリアーナ叔母様そっくりだ。
「心配したのですよ、レイス王国へ連れて行くことが出来ないからとお預かりしてからすっかり不貞腐れてしまったサクラが突然竜舎を半壊させて飛び出して行ってしまって」
そうか、サクラは竜舎を壊したのか。
「戻ってきたら血塗れのお兄様とロンダークだけを連れて帰って……しかも説明もなく唯一事情を知っているはずのお兄様は五日も高熱を出して寝込まれてしまうし」
う~ん、どうやら私は熱を出して五日ばかり寝込んだらしい。
「キャロ、ロンダークは?」
無理に身体を起こしたせいで全身に激痛が走り、耐え切れずに布団へと倒れ込む。
「無理に動いてはいけません、身体を急激に酷使し過ぎたせいで全身ボロボロなんですからね。 ロンダークの亡骸はミリアーナ様が引き取られて、陛下と一緒に埋葬されました」
「ミリアーナ様は?」
ミリアーナ叔母様はドラグーン王国でクラインセル陛下を目の前で亡くされた際に、心を病んでしまわれた。
今はかなり回復されたものの、もしかしたらまた……
「私も葬儀に参列いたしましたが、ロンダーク様の頬に手を添えて愛しげに『貴方の願いは私が必ず叶えてみせます』と気丈に振る舞って居られましたわ」
ミリアーナ叔母様の様子がまるで目に浮かぶようだった。
私があそこで気を抜かなければロンダークが死ぬことはなかったのに……
自己嫌悪がドス黒く心の中に渦巻く。
身体よりも心が引き裂かれる様に悲鳴を上げている。
黙り込んでしまった私を他所にキャロラインはアルトバール父上とリステリア母上を呼びに行ったらしく、医師を伴い二人共部屋へとやってきた。
「シオル!」
母上は私の側に駆け寄ると、謝罪しようとベッドから起き上がろうとした私の身体を支えるように、年月をごまかせない小さな皺が刻まれた目尻に涙を浮かべながらきつく抱き締めた。
「母上、ご心配をおかけいたしました」
「本当に貴方は、似なくても良いところばかり陛下に似て無茶ばかり!」
「申し訳ありません……陛下、ロンダークが……」
「あぁ、朝早くお前達とともにレイス王国へ随行していたゼストが帰還したからな。 既に何があったのか話は聞いている」
そうか、レイス王国のドラグーン王国国境に近い場所からだったとは言えあそこからレイナス王国へ五日で帰ってくるなんて皆無茶をしたな。
それから父様は従者に声を掛けて私の食事と自分たちの紅茶を寝室へと用意させた。
五日も寝ていた私にミルクに浸し甘く煮込んだパンを掬ったスプーンを突きつけて甲斐甲斐しく世話を焼く母上の様子に苦笑いを浮かべながら、私が帰還したあとの出来事を掻い摘んで話してくれた。
ゼスト殿の報告によればサクラと私達が去ったあと、ドラグーン王国軍は総崩れしたらしい。
ドラグーン王国軍を指揮していた貴族は軍を撤退させる事もせずに突然現れたサクラに恐慌状態に陥る自軍を見捨てて逃走した。
どうやら目が覚めたらしいアールベルトは戦況を逆転し安定させて、レイス王国の王城へとって返したらしい。
カストル二世陛下の怪我の具合はわからないが、アールベルトの姿を見たゼスト殿の報告では、まるで人が変わったような様子だったらしい。
ロンダークの亡骸はキャロラインの言っていた通り埋葬が済んでいるようだ。
レイス王国に攻め入った時にドラグーン王国はレイナス王国へも攻め入っておりこちらは、呆気なく国境を護っていた脳筋達によって可及的速やかに蹴散らされたそうな。
「病み上がりだもう休め……ロンダークには感謝してもしきれん。無事で良かった……」
父上はグシャリと自分に似た私の赤髪をかき混ぜると疲れたように笑う。
「ご心配をおかけ致しました。 後でロンダークの元へ行って直接感謝と謝罪をしようと思います……」
「そうしてやれ、ミリアーナには話を通しておく」
「宜しくお願い致します」
そう言って頭を下げると、私の身体をベッドへ横たえる手伝いをした後に母上を伴い部屋から出ていった。
「ロンダーク!?」
「きゃっ!」
すっかり馴染んだ自室のキングサイズのベッドから跳ね起きるとベッド脇から可愛らしい悲鳴が上がった。
さらさらな美しいストレートの金髪を赤いリボンで首の後ろに一つに縛り、緑と琥珀色のオッドアイを零れ落ちそうなほど見開いたキャロラインが私の名前を呼びながら飛びついてきた。
十三歳になった妹の、まるで騎士の着るような軍服を元にした服を纏う姿は、昔のミリアーナ叔母様そっくりだ。
「心配したのですよ、レイス王国へ連れて行くことが出来ないからとお預かりしてからすっかり不貞腐れてしまったサクラが突然竜舎を半壊させて飛び出して行ってしまって」
そうか、サクラは竜舎を壊したのか。
「戻ってきたら血塗れのお兄様とロンダークだけを連れて帰って……しかも説明もなく唯一事情を知っているはずのお兄様は五日も高熱を出して寝込まれてしまうし」
う~ん、どうやら私は熱を出して五日ばかり寝込んだらしい。
「キャロ、ロンダークは?」
無理に身体を起こしたせいで全身に激痛が走り、耐え切れずに布団へと倒れ込む。
「無理に動いてはいけません、身体を急激に酷使し過ぎたせいで全身ボロボロなんですからね。 ロンダークの亡骸はミリアーナ様が引き取られて、陛下と一緒に埋葬されました」
「ミリアーナ様は?」
ミリアーナ叔母様はドラグーン王国でクラインセル陛下を目の前で亡くされた際に、心を病んでしまわれた。
今はかなり回復されたものの、もしかしたらまた……
「私も葬儀に参列いたしましたが、ロンダーク様の頬に手を添えて愛しげに『貴方の願いは私が必ず叶えてみせます』と気丈に振る舞って居られましたわ」
ミリアーナ叔母様の様子がまるで目に浮かぶようだった。
私があそこで気を抜かなければロンダークが死ぬことはなかったのに……
自己嫌悪がドス黒く心の中に渦巻く。
身体よりも心が引き裂かれる様に悲鳴を上げている。
黙り込んでしまった私を他所にキャロラインはアルトバール父上とリステリア母上を呼びに行ったらしく、医師を伴い二人共部屋へとやってきた。
「シオル!」
母上は私の側に駆け寄ると、謝罪しようとベッドから起き上がろうとした私の身体を支えるように、年月をごまかせない小さな皺が刻まれた目尻に涙を浮かべながらきつく抱き締めた。
「母上、ご心配をおかけいたしました」
「本当に貴方は、似なくても良いところばかり陛下に似て無茶ばかり!」
「申し訳ありません……陛下、ロンダークが……」
「あぁ、朝早くお前達とともにレイス王国へ随行していたゼストが帰還したからな。 既に何があったのか話は聞いている」
そうか、レイス王国のドラグーン王国国境に近い場所からだったとは言えあそこからレイナス王国へ五日で帰ってくるなんて皆無茶をしたな。
それから父様は従者に声を掛けて私の食事と自分たちの紅茶を寝室へと用意させた。
五日も寝ていた私にミルクに浸し甘く煮込んだパンを掬ったスプーンを突きつけて甲斐甲斐しく世話を焼く母上の様子に苦笑いを浮かべながら、私が帰還したあとの出来事を掻い摘んで話してくれた。
ゼスト殿の報告によればサクラと私達が去ったあと、ドラグーン王国軍は総崩れしたらしい。
ドラグーン王国軍を指揮していた貴族は軍を撤退させる事もせずに突然現れたサクラに恐慌状態に陥る自軍を見捨てて逃走した。
どうやら目が覚めたらしいアールベルトは戦況を逆転し安定させて、レイス王国の王城へとって返したらしい。
カストル二世陛下の怪我の具合はわからないが、アールベルトの姿を見たゼスト殿の報告では、まるで人が変わったような様子だったらしい。
ロンダークの亡骸はキャロラインの言っていた通り埋葬が済んでいるようだ。
レイス王国に攻め入った時にドラグーン王国はレイナス王国へも攻め入っておりこちらは、呆気なく国境を護っていた脳筋達によって可及的速やかに蹴散らされたそうな。
「病み上がりだもう休め……ロンダークには感謝してもしきれん。無事で良かった……」
父上はグシャリと自分に似た私の赤髪をかき混ぜると疲れたように笑う。
「ご心配をおかけ致しました。 後でロンダークの元へ行って直接感謝と謝罪をしようと思います……」
「そうしてやれ、ミリアーナには話を通しておく」
「宜しくお願い致します」
そう言って頭を下げると、私の身体をベッドへ横たえる手伝いをした後に母上を伴い部屋から出ていった。
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