元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね!?

紅葉ももな(くれはももな)

 王都へと続く街道は、戦火から逃げてゆく商人や避難民で溢れていた。


 そんな中を騎馬で街道を駆けるのは目立つため、腕の立つ者達を連れて森の中を進んでいく。


 大きな森を迂回するように作られた街や村をぬける街道とは違い、森を抜けたほうが近い。


 たまに遭遇する狼や熊などを倒しながら森を進めば、進行方向の前方から怒号と悲鳴、剣戟の音が聞こえてくる。


「ちっ! 急いでいるのに」


 迂回することも可能だけれど、今進路を変えれば視界の効かない森の中を彷徨うことになりかねない。


「どうされますか?」


 すぐ横まで馬を寄せたロンダークが聞いてくる。


「回り道をしている余裕はない、制圧出来るか?」


「可能です」


「わかった、突っ込む! 私に続け!」
 
 スラリと愛剣シルバを抜き放ち命を下せば、同行している騎士たちから野太い声が上がり、渦中へ飛び込んでいく‥


 遅れを取らないように森を抜ければ、開けた場所があり、どうやら商人らしき馬車が二台ほど武装した男たちに襲われているようだった。


 薄汚れた服を身にまとい集団で馬車や護衛らしき男を襲撃している山賊に剣を抜いた騎士たちが次々と襲いかかった。


「なっ! なんだお前ら!」


「さて、少しは楽しませてくれよな」


 突然背後から現れた私たちに驚いた山賊の隙を突くようにして斬り倒し、縦横無尽に駆け回る騎士達はあっという間に現場を制圧してしまった。


「暴れ足りない……」


「物足りない……」


 日頃のレイナス王国の訓練に慣れた騎士達には山賊相手では少々物足りなかったらしい。


 手早く捕まえた山賊を縛り終えて、ぼやく騎士達をもう一度騎乗させる。


「先を急ぐぞ!」


 馬上から号令を掛けると、襲われていた馬車から数名が飛び出してきた。


「おっ、おまちください! なにかお礼を!」


 この行商の商人らしい小太りな男と並ぶように出てきた女性に違和感を覚える。


 乱れて入るが美しい金髪の髪と妖艶な色気を醸し出す青い瞳の美しい女性。


「どこかでお会いしたことはありませんか?」


「シオル様……こんな時に女性を口説いている場合ですか?」


 そう問えば、ゼスト殿が窘めるように言ってきた。


「いいえ、騎士様お初にお目にかかりますミスティルと申します」


 ミスティルと名乗った女性に心当たりはない。


 気のせいかな? ふわりと微笑む女性に、気のせいならば放置して先に進むことにする。 


「礼はいらない、この先には獣も多い、街道に出られることをすすめる。 失礼する」


 馬上から簡潔に述べて女性の横を通り過ぎる際に、嗅ぎ覚えのある甘い香りがした。









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