元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね!?
ドラグーン王国の挙兵の知らせに、どよめく同行の者たちを宥める。
「誰か地図を持ってきてくれ!」
レイナス王国へ強行突破するにしろ、マーシャル皇国やマーシャル皇国の南部に、国境を接するフレアルージュ王国へ抜けるにしても、戦況をできるだけ早期に把握しなくてはならない。
不測の事態に備えて、連携が取りやすいように敢えて個室は借りず、偽名を使い本来なら見ず知らずの旅人が安い宿泊費で泊まることができる大部屋を使節団で貸し切った。
「殿下! 地図をお持ちしました」
「ありがとう、そこのテーブルに広げてくれ」
旅装も解かずに大部屋に駆け込んできた兵に、指示を出す。
最悪戦況が落ち着くまで身を隠すにしても、情報戦の遅れは命取りだ。
大部屋に備え付けられた六人掛けのテーブルの半分が隠れるほどに広げられた地図は、羊皮紙を数枚縫い合わせて作られたものだ。
地図には大まかにレイナス王国と今回の訪問先であるレイス王国、マーシャル皇国の端っこ、そして挙兵したドラグーン王国が記載されている。
主要な都市や街道沿いの街や村が点在する簡単な地図だが無いよりはマシだ。
「どこが前線になるかわかるか?」
地図の上に、ミリアーナ叔母様が得意とする盤上遊戯で使う白と黒の二色のコマをドラグーン王国軍とレイス王国軍を模して配置していく。
「とりあえずレイナス王国への最短ルートであったレイス王国とドラグーン王国とを繋ぐ国境は封鎖されました」
ゼスト殿がコトリと音を立ててドラグーン王国軍コマを本来の目的地だった国境に近い街へ置いた。
「我々は今ここですね」
ロンダークが即席で赤色のインクで着色したコマをコトリと今いる街が描かれている地図上へと置いた。
「なんで赤?」
「殿下の髪の色です。 何か問題が?」
「いや、ありません」
ロンダークの言葉に苦笑しながら謝ると、私はキング、王を表わすコマを先日出てきたばかりの王都に配した。
「どうおもう?」
「そうですね、前線がどこになるかはまだわかりませんが、できるだけ早くレイス王国から出たほうが良いでしょう。 ドラグーン王国軍がレイス王国軍との戦争を始めれば友好国である我が国も何かしらの対応を取らなければならないてしょうから」
ゼスト殿の言葉に頷く。
「しかしドラグーン王国軍が国境を封鎖してしまいましたから、脱出をはかるならばやはりマーシャル皇国でしょうか」
ロンダークが赤いコマをマーシャル皇国との国境へ移動する。
「そうだな、しかしーー」
「失礼します!」
私の言葉を遮るように扉の外から声がかかった。
「入れ!」
入室の許可を出すとロンダークとゼスト殿が出した伝令らしい若い騎士が入室してきた。
「レイス王国、国王カストル2世陛下並びに王太子アールベルト殿下が出陣、ドラグーン王国との国境に領地を持つ貴族が次々とドラグーン王国へ寝返ったもようです」
「なに!?」
レイス王国の貴族が寝返っている事実に驚愕せざるをえない。
「なぜそんな事に?」
「理由は定かではありませんが、王城にはレイス王国右将軍のギラム・ゼキーナ殿が守りを固めています」
「ギラム殿が?」
カストル二世とアールベルトが出陣した今、王都にいるのは……
なんだろう、嫌な予感がする。
アールベルトが出陣したのは伝令の移動時間差を考慮しても既に二日は経過しているだろう。
幸い王都まで馬車で二日程、レイナス王国を取り囲む山々で馬脚を鍛えられた早馬なら一日もあればたどり着ける。
「至急王都に人をーー」
「失礼します!」
私の指示に被さるように告げられた入室許可を求める声に地図から顔を上げる。
「どうした!」
「王都にてギラム・ゼキーナ右将軍謀反、マリア王妃並びに第一王女ナターシャ殿下の安否不明!」
「なっ!?」
あまりにもタイミングが良すぎる、ドラグーン王国の挙兵、ドラグーン王国に近い貴族達の寝返り、ギラム・ゼキーナの謀反。
「……王都へ戻る」
「殿下?」
私の小さなつぶやきにゼスト殿が訝しげに声を掛けた。
「ロンダーク、私は王都へ戻る。 ゼスト殿はーー」
「なっ、なりません! 殿下は我が国の次代を担うお方! 御身を危険に晒すなど!」
「ゼスト殿、無駄ですよ? 殿下はこうと決めたら曲げません」
そう断言したロンダークに笑みが浮かぶ。
伊達に私の側使えはしていない。 私の性格や言動はお見通しだろう。
「ロンダーク殿……わかりました。 危ないと判断した場合にはすぐに撤退していただけますね?」
「あぁ、約束する」
こうしてレイナス一行はレイス王国の王都へ戻ることとなった。
「誰か地図を持ってきてくれ!」
レイナス王国へ強行突破するにしろ、マーシャル皇国やマーシャル皇国の南部に、国境を接するフレアルージュ王国へ抜けるにしても、戦況をできるだけ早期に把握しなくてはならない。
不測の事態に備えて、連携が取りやすいように敢えて個室は借りず、偽名を使い本来なら見ず知らずの旅人が安い宿泊費で泊まることができる大部屋を使節団で貸し切った。
「殿下! 地図をお持ちしました」
「ありがとう、そこのテーブルに広げてくれ」
旅装も解かずに大部屋に駆け込んできた兵に、指示を出す。
最悪戦況が落ち着くまで身を隠すにしても、情報戦の遅れは命取りだ。
大部屋に備え付けられた六人掛けのテーブルの半分が隠れるほどに広げられた地図は、羊皮紙を数枚縫い合わせて作られたものだ。
地図には大まかにレイナス王国と今回の訪問先であるレイス王国、マーシャル皇国の端っこ、そして挙兵したドラグーン王国が記載されている。
主要な都市や街道沿いの街や村が点在する簡単な地図だが無いよりはマシだ。
「どこが前線になるかわかるか?」
地図の上に、ミリアーナ叔母様が得意とする盤上遊戯で使う白と黒の二色のコマをドラグーン王国軍とレイス王国軍を模して配置していく。
「とりあえずレイナス王国への最短ルートであったレイス王国とドラグーン王国とを繋ぐ国境は封鎖されました」
ゼスト殿がコトリと音を立ててドラグーン王国軍コマを本来の目的地だった国境に近い街へ置いた。
「我々は今ここですね」
ロンダークが即席で赤色のインクで着色したコマをコトリと今いる街が描かれている地図上へと置いた。
「なんで赤?」
「殿下の髪の色です。 何か問題が?」
「いや、ありません」
ロンダークの言葉に苦笑しながら謝ると、私はキング、王を表わすコマを先日出てきたばかりの王都に配した。
「どうおもう?」
「そうですね、前線がどこになるかはまだわかりませんが、できるだけ早くレイス王国から出たほうが良いでしょう。 ドラグーン王国軍がレイス王国軍との戦争を始めれば友好国である我が国も何かしらの対応を取らなければならないてしょうから」
ゼスト殿の言葉に頷く。
「しかしドラグーン王国軍が国境を封鎖してしまいましたから、脱出をはかるならばやはりマーシャル皇国でしょうか」
ロンダークが赤いコマをマーシャル皇国との国境へ移動する。
「そうだな、しかしーー」
「失礼します!」
私の言葉を遮るように扉の外から声がかかった。
「入れ!」
入室の許可を出すとロンダークとゼスト殿が出した伝令らしい若い騎士が入室してきた。
「レイス王国、国王カストル2世陛下並びに王太子アールベルト殿下が出陣、ドラグーン王国との国境に領地を持つ貴族が次々とドラグーン王国へ寝返ったもようです」
「なに!?」
レイス王国の貴族が寝返っている事実に驚愕せざるをえない。
「なぜそんな事に?」
「理由は定かではありませんが、王城にはレイス王国右将軍のギラム・ゼキーナ殿が守りを固めています」
「ギラム殿が?」
カストル二世とアールベルトが出陣した今、王都にいるのは……
なんだろう、嫌な予感がする。
アールベルトが出陣したのは伝令の移動時間差を考慮しても既に二日は経過しているだろう。
幸い王都まで馬車で二日程、レイナス王国を取り囲む山々で馬脚を鍛えられた早馬なら一日もあればたどり着ける。
「至急王都に人をーー」
「失礼します!」
私の指示に被さるように告げられた入室許可を求める声に地図から顔を上げる。
「どうした!」
「王都にてギラム・ゼキーナ右将軍謀反、マリア王妃並びに第一王女ナターシャ殿下の安否不明!」
「なっ!?」
あまりにもタイミングが良すぎる、ドラグーン王国の挙兵、ドラグーン王国に近い貴族達の寝返り、ギラム・ゼキーナの謀反。
「……王都へ戻る」
「殿下?」
私の小さなつぶやきにゼスト殿が訝しげに声を掛けた。
「ロンダーク、私は王都へ戻る。 ゼスト殿はーー」
「なっ、なりません! 殿下は我が国の次代を担うお方! 御身を危険に晒すなど!」
「ゼスト殿、無駄ですよ? 殿下はこうと決めたら曲げません」
そう断言したロンダークに笑みが浮かぶ。
伊達に私の側使えはしていない。 私の性格や言動はお見通しだろう。
「ロンダーク殿……わかりました。 危ないと判断した場合にはすぐに撤退していただけますね?」
「あぁ、約束する」
こうしてレイナス一行はレイス王国の王都へ戻ることとなった。
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