元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね!?

紅葉ももな(くれはももな)

 無事に足を踏み入れたレイス王国の王都は、お祭り騒ぎになっていた。


 あちらこちらに色とりどりの花が飾られ、城へと続く石畳の敷かれた大通りには人が溢れ、祝杯を上げる楽しげな笑い声や陽気な音楽にのって歌い踊る人々の声がそこかしこから聞こえてくる。


 2階建ての赤煉瓦を詰んで建てられた民家と民家のあいだを渡すように鮮やかな色彩の反物が渡されお祭りを盛り上げていた。


 あちらこちらから自国の王太子を讃える声が上がっているところを見ると、どうやらませガキだった私の友は心優しく聡明で慈悲深い王子として国民に愛されているようだ。


 自国の王太子が作ってくれる明るい未来に思いを馳せ、多くの国民が心から祝福しているのがわかる。


 途中先に王都入りしていた先行が確保してくれていた宿へと向い、レイス王国の王城へ上がるのに不具合が出ないように長旅の汚れを落とし、レイナス王国の国王代理として、ふさわしい服装に着替えた。


 また先駆けを出して王城へ到着した旨を知らせている。


 祝いの品を積み込んだ幌馬車に道中付ける事がなかったレイナス王家の紋章が大きく刺繍された幌を被せる。


 基本的に箱馬車は見栄えはするものの長距離移動には向いていないため、他国からの賓客は隊列を組んだ幌馬車で王都へやってくる。


 貴賓到着の知らせを受けた王城から立派な造りの箱馬車が迎えに来て、賓客はそちらに乗り込み、自国の国旗を掲げて入場するのはレイナス王国もレイス王国も一緒らしい。


 ロンダークいわくミリアーナ叔母様がドラグーン王国へ嫁がれた際にも同じような手順がなされていたらしい。


 知らんがな、初めての他国訪問で浮かれてたのか、温泉に入った記憶が鮮明であまり覚えていないし。


 レイス王国滞在中は王城内にある迎賓館で過ごす事になる。


 立太子式は二日後に行われる事になっているのでその前にアールベルトに会う機会はあるだろう。


 案内された迎賓館はとても立派な造りをしていた。


 二階建ての外壁は王城と同じく赤煉瓦で組まれ、正面から見ると左右対称な造りだとわかる、石階段を上がり美しく彫刻が彫り込まれ立派な石造の柱に守られている。  


 室内外を隔てる木製の大きな扉は青銅で補強されていてとても頑丈そうだ。


 有事の際に扉を破るのは大変だろうなと思いながら玄関を通り抜けると、ロビーは吹き抜けになっており床には絨毯が敷き詰められ、ロビーの中央に大階段とシャンデリアが飾られていた。


 迎賓館には建物の中央に中庭を作ってあるらしく、私達が案内されたのは東側の貴賓室だった。


 案内された貴賓室はレイナス王国の自室より広く、5つの客室と食堂兼ホールは他国の賓客との会食にも使える十分な広さがあり、深い赤の絨毯が敷き詰められ、黒檀のテーブルにレースや刺繍が施された純白のテーブルクロスが設置されている。


 迎賓館にはレイナス王国の他にレイス王国と国交のあるドラグーン王国、グランテ王国、フレアルージュ王国、マーシャル皇国、ゾライヤ帝国からの参列者がそれぞれ滞在しているそうだ。


 そしてスノヒス国からは双太陽神教の枢機卿であるアンナローズ様が来ているらしい。


 あの幼児愛好家、枢機卿の地位まで上り詰めたのか。


 今は双太陽神教の教皇猊下となられたロブルバーグ様との約束も未だ果たせずにいる。


 早いとこ会いに行かないと本当に化けてでるんじゃなかろうか……国へ帰ったら父様に聞いてみよう。
  
 ちなみに各国の貴賓室はどの部屋にも同じような部屋数と立派な暖炉がついているらしい。


 レイナス王国に用意された貴賓室には白い暖炉と同じく白い天井からはシャンデリアが下がっていて、深い緑色の壁紙でデザインが統一され気品がある。


 廊下、客室、食堂等あらゆる場所にさりげなく置かれた花瓶や壷、置物、椅子、ソファ、テーブル等は、 いずれもレイス王国産の逸品だ。


 部屋を支える太い柱に施された豪華な浮き彫りも美しくかつ、掃除が大変そうだ。


 しばらく荷解き等を済ませていると、アールベルトが会いたいと先触れに従者を派遣してくれたため、急ぎ衣類を整えて先導する従者に従い王城へ足を踏み入れた。
 



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