元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね!?
本日のお客様、クラインセルト殿下は現在応接室でお母様と侍女長リーゼさんが接待をしている模様。
「ああーうー? (なんでこうなったの?)」
「ミリアーナ姫がクラインセルト殿下の目に留まったんじゃよ。 ほれあーん」
あーん。
何故かロブルバーグ様の給仕でおやつタイムをしながら来訪者についての情報収集です。
ちなみに本日のおやつはすりおろした林檎を煮詰めた物。
砂糖や蜂蜜などの甘味は高価なので素材の甘さを活かしたスイーツ。
赤ん坊に蜂蜜はダメですよ?ボツリヌス菌怖いから。
赤ん坊が一人で椅子に座れるように小さなテーブルが付いた子供椅子に腰掛けたまま目の前の老人を見上げます。
「あーぶー。 (嘘だー。)」
「嘘などついておらんわ。なんじゃ疑っておるのか」
「あーみーおー? (だってミリアーナ叔母様だよ?)」
勇猛果敢、武芸と馬をこよなく愛し、卓上遊戯の名手。王子様に選ばれるお姫様要素が枯渇してますって。
それを念頭に見初められたと言われても、ねえ。
元々自分よりも強い男しか認めない! 決まったことなら皇族の義務は果たすけれど、認めない相手に愛情は期待すんなって姫だよ。
どう見てもクラインセルト殿下に勝ち目がある様にはみえないんだけど……。
子供の絵本からそのまま飛び出したような綺麗な王子様、しかもどうやら病弱らしい。
それでどうやってあのミリアーナ叔母様を黙らせられるんだろう、奇跡でしょもはや。
「アルトバール陛下も大層青褪めておったわい。仕事柄人に会う事が多いが、あれはここ数年の間に見た中で一番素晴らしい狼狽えっぷりだった」
その時の父様を思い出しているのか人の悪い笑みを浮かべて小さく笑い声を上げてます。
いやいやまぁ気持ちは解るよ? あの常に前しか見ない父様が青褪める、そんな珍しい光景見てみたかった!
「うー、みーあ! (うー、見たかった!)」
口許に運ばれてきた林檎に口を開ける、うん甘酸っぱい。
「まぁ、今回の舞踏会で皆の予想を見事に裏切ったクラインセルト殿下には舌を巻くわい」
「そーあに!? (そんなに!?)」
奇妙な物でも見るようにミナリーの視線がバシバシ刺さるけど気にしない気にしません。
赤ん坊相手に普通に会話してる様に見えれば仕方ないよね、普通に危ない人に見えるわな。
「儂は遠目にしか見ておらんかったのじゃが、真っ直ぐにミリアーナ姫の前に行ったぞ?」
「ひーあーえ? (ひと目惚れ?)」
ますます疑問が深まる、と言うか疑問しか浮かばない。
大国の舞踏会、しかも花嫁候補を決める実質集団見合いには、自薦他薦問わず確か年頃の姫や有力貴族の令嬢がわんさか詰め掛けていた筈なのだ。
絶世の美女や深窓の令嬢を撥ね退けて選んだのがあれ!?
「ロブルバーグ大司教様、御部屋の準備が整いましたので御案内します」
「ありがとうございます。 ご迷惑をかけて申し訳ない。 はいあーん」
疲れた様子で部屋に入ってきた父様がロブルバーグ様に声をかけました。
扉に背を向けるようにして座っていたのでどうやらロブルバーグ様の影に隠れて私が見えていないのでしょう。
「あーんって、シオル!?」
あーんですよ。ロブルバーグ様の側まで移動してきた父様はようやく私をみつけたようです。
「ロブルバーグ大司教様みずからシオルに食べさせて頂いていたのですか」
「ホホッお気になさらず。儂が侍女さんから仕事を奪ってしまっただけのこと侍女さんらを咎めないで頂きたい」
うん、強引だったもんね。ロブルバーグ様。
「こちらこそシオルと遊んで頂きましたこと感謝しております」
「それは良かった。実はな、ミリアーナ姫がクラインセルト殿下に見初められた勝因を検討していたのじゃ」
「あうあう(そうそう)」
「勝因ですか、あれは勝因なんでしょうかねぇ」
むむ! 父様は事情を知っている!?
大きな溜め息を吐くと父様はロブルバーグ様に同席の許可を求めました。
すかさず父様へミナリーが紅茶の入ったティーセットを用意してテーブルへと設置します。
ミナリーの好奇心一杯の視線に気が付いたけどあえてスルー。
「ドラグーン王国の王宮には舞踏会の5日前に到着したんですよ」
予定ではドラグーン王国まで20日程の日数を計算して出発していった筈なのでやはり国境を越えるとなるとかなりの移動日数が掛かるみたい。
自動車や新幹線、飛行機があった前世と違い、移動手段は馬車や騎馬、徒歩が主流のためやはり時間が掛かる模様。
隣の街まで「ちょっとそこまで」とは行かないらしい。 徒歩で気軽に行ける距離では無い様子。
馬車を使ったとはいえ、途中国境となる山越えをしているにしては驚異的なスピードだったんではなかろうか。
「あちらの城で庭園を散策してたまたま居た兵士と腕比べした後に、倒れている所に行き当たって保護したらしい」
「あー、なんといって良いものやら」
多国で兵士と腕比べってどうなんだろう。 しかも普通の姫は間違いなくやらないと思うよ!
「あーぶー(ミリアーナ叔母様らしい)」
きっといつも通り紳士物を着て熱心に素振りしていたことだろう。どこの誰とか気にせずに横抱きにでもして運んだんだろうね。
「(落ちてた)といって俺の所まで横抱きで連れてきてな、直ぐに城の者が迎えに来たんだが、何も言わずに去っていった」
「あー、あぶ(あー、やっぱり)」
「ミリアーナ姫なら苦もなく横抱きで運んだじゃろうな」
成人間近の異性を横抱きにできる猛者は大陸ひろしといえど、うちのミリアーナ姫位なもんでしょ。
「後日礼をしに訊ねてきたんだが、何故か菓子やら宝飾品を持ってミリアーナの剣の稽古を見学に来たりポロを嗜んだりしはじめたんだ」
ポロとはミリアーナ叔母様が得意とする戦争を模した盤上カードゲームで、ルールは違うようだがなんとなく前世で流行ってたカードゲームに似ている。
ミリアーナ叔母様はたしか軍師もできちゃうルシウス伯父様相手にも遜色無い実力だったはず。
「あーう(良く許したね)」
「良く許しましたのう、ミリアーナ姫は新しく皇太子になる人物の見合い相手として同行した筈」
ナイスロブルバーグ様、ありがとう! それこそ私の聞きたかったこと!
「いやぁ、最有力候補に周辺の大国の美姫がわんさかいたからうちに白羽の矢が立つ可能性が低かったからなぁ。 まぁ、ミリアーナ本人を見てくれる相手を探しにいったようなもんだからほっといた」
いや、駄目でしょほっといちゃ! 父様一応ミリアーナ叔母様年頃の乙女ですよ!
下手な男より強いけど歴としたレイナス王国の王妹君です。
「終いにはドラグーン王国の近衛騎士やら他国の軍関係者を巻き込んで武術大会の様相になったんだよ。 ミリアーナは参加しなかったんだが、前に倒された連中が何人か花束持ってミリアーナに求婚しに来たんだよ」
「あの青年は確かゼス帝国の近衛騎士でしたかな、それとケンテル共和国の陸軍大将補佐官だったのぅ」
「えぇ、驚きましたよ。あの跳ねっ返りを嫁に欲しいと言う物好きがやっと現れたと悦びましたから」
そうだった、父様はミリアーナ叔母様の隠れ親衛隊の存在を知らないんだった。
じつは水面下でモテてるんですよ、容姿もスタイルも抜群だからなぁ。一部の古い考えの人には解らないんだよねー。
ちなみに親衛隊は男性だけでなく女性で構成されている物もあることは把握済みだったり。
「一応ミリアーナは王太子の花嫁候補として登城していたので、帰国後に本人に話し合うと言うことで一旦納めたんですよ。 求婚者同士で決闘でもしかねない勢いだったし」
「まぁ、状況的には最善の策よの。ほれあーん」
話を聞きつつも私の口の中が空になるのを見計らって次の林檎を運んでくれる。
「あーう(あーん)」
「ミリアーナ姫が乗り気なら尚良縁じゃろうが」
「あー、自分よりも弱い男は嫌だと一刀両断しておりましたよ」
「ははは、なんともミリアーナ姫が言いそうな話しじゃな」
うん、言いそう。しかも自分が負かしたばかりの相手に平然といってそう。
「丁度部屋に遊びに来ていたクライン、じゃなかったクラインセルト殿下が求婚のやり取りを目撃して一刀両断されて去っていく二人を見て舌打ちしてましたよ」
「はばーぶー(あちゃー、父様的に貴重な配偶者候補斬っちゃったんだ)」
「ほうほう、それがあの求婚騒動に繋がった訳ですな」
なんで他国の御城で騒動おこしてくるかなぁ。
「ああーうー? (なんでこうなったの?)」
「ミリアーナ姫がクラインセルト殿下の目に留まったんじゃよ。 ほれあーん」
あーん。
何故かロブルバーグ様の給仕でおやつタイムをしながら来訪者についての情報収集です。
ちなみに本日のおやつはすりおろした林檎を煮詰めた物。
砂糖や蜂蜜などの甘味は高価なので素材の甘さを活かしたスイーツ。
赤ん坊に蜂蜜はダメですよ?ボツリヌス菌怖いから。
赤ん坊が一人で椅子に座れるように小さなテーブルが付いた子供椅子に腰掛けたまま目の前の老人を見上げます。
「あーぶー。 (嘘だー。)」
「嘘などついておらんわ。なんじゃ疑っておるのか」
「あーみーおー? (だってミリアーナ叔母様だよ?)」
勇猛果敢、武芸と馬をこよなく愛し、卓上遊戯の名手。王子様に選ばれるお姫様要素が枯渇してますって。
それを念頭に見初められたと言われても、ねえ。
元々自分よりも強い男しか認めない! 決まったことなら皇族の義務は果たすけれど、認めない相手に愛情は期待すんなって姫だよ。
どう見てもクラインセルト殿下に勝ち目がある様にはみえないんだけど……。
子供の絵本からそのまま飛び出したような綺麗な王子様、しかもどうやら病弱らしい。
それでどうやってあのミリアーナ叔母様を黙らせられるんだろう、奇跡でしょもはや。
「アルトバール陛下も大層青褪めておったわい。仕事柄人に会う事が多いが、あれはここ数年の間に見た中で一番素晴らしい狼狽えっぷりだった」
その時の父様を思い出しているのか人の悪い笑みを浮かべて小さく笑い声を上げてます。
いやいやまぁ気持ちは解るよ? あの常に前しか見ない父様が青褪める、そんな珍しい光景見てみたかった!
「うー、みーあ! (うー、見たかった!)」
口許に運ばれてきた林檎に口を開ける、うん甘酸っぱい。
「まぁ、今回の舞踏会で皆の予想を見事に裏切ったクラインセルト殿下には舌を巻くわい」
「そーあに!? (そんなに!?)」
奇妙な物でも見るようにミナリーの視線がバシバシ刺さるけど気にしない気にしません。
赤ん坊相手に普通に会話してる様に見えれば仕方ないよね、普通に危ない人に見えるわな。
「儂は遠目にしか見ておらんかったのじゃが、真っ直ぐにミリアーナ姫の前に行ったぞ?」
「ひーあーえ? (ひと目惚れ?)」
ますます疑問が深まる、と言うか疑問しか浮かばない。
大国の舞踏会、しかも花嫁候補を決める実質集団見合いには、自薦他薦問わず確か年頃の姫や有力貴族の令嬢がわんさか詰め掛けていた筈なのだ。
絶世の美女や深窓の令嬢を撥ね退けて選んだのがあれ!?
「ロブルバーグ大司教様、御部屋の準備が整いましたので御案内します」
「ありがとうございます。 ご迷惑をかけて申し訳ない。 はいあーん」
疲れた様子で部屋に入ってきた父様がロブルバーグ様に声をかけました。
扉に背を向けるようにして座っていたのでどうやらロブルバーグ様の影に隠れて私が見えていないのでしょう。
「あーんって、シオル!?」
あーんですよ。ロブルバーグ様の側まで移動してきた父様はようやく私をみつけたようです。
「ロブルバーグ大司教様みずからシオルに食べさせて頂いていたのですか」
「ホホッお気になさらず。儂が侍女さんから仕事を奪ってしまっただけのこと侍女さんらを咎めないで頂きたい」
うん、強引だったもんね。ロブルバーグ様。
「こちらこそシオルと遊んで頂きましたこと感謝しております」
「それは良かった。実はな、ミリアーナ姫がクラインセルト殿下に見初められた勝因を検討していたのじゃ」
「あうあう(そうそう)」
「勝因ですか、あれは勝因なんでしょうかねぇ」
むむ! 父様は事情を知っている!?
大きな溜め息を吐くと父様はロブルバーグ様に同席の許可を求めました。
すかさず父様へミナリーが紅茶の入ったティーセットを用意してテーブルへと設置します。
ミナリーの好奇心一杯の視線に気が付いたけどあえてスルー。
「ドラグーン王国の王宮には舞踏会の5日前に到着したんですよ」
予定ではドラグーン王国まで20日程の日数を計算して出発していった筈なのでやはり国境を越えるとなるとかなりの移動日数が掛かるみたい。
自動車や新幹線、飛行機があった前世と違い、移動手段は馬車や騎馬、徒歩が主流のためやはり時間が掛かる模様。
隣の街まで「ちょっとそこまで」とは行かないらしい。 徒歩で気軽に行ける距離では無い様子。
馬車を使ったとはいえ、途中国境となる山越えをしているにしては驚異的なスピードだったんではなかろうか。
「あちらの城で庭園を散策してたまたま居た兵士と腕比べした後に、倒れている所に行き当たって保護したらしい」
「あー、なんといって良いものやら」
多国で兵士と腕比べってどうなんだろう。 しかも普通の姫は間違いなくやらないと思うよ!
「あーぶー(ミリアーナ叔母様らしい)」
きっといつも通り紳士物を着て熱心に素振りしていたことだろう。どこの誰とか気にせずに横抱きにでもして運んだんだろうね。
「(落ちてた)といって俺の所まで横抱きで連れてきてな、直ぐに城の者が迎えに来たんだが、何も言わずに去っていった」
「あー、あぶ(あー、やっぱり)」
「ミリアーナ姫なら苦もなく横抱きで運んだじゃろうな」
成人間近の異性を横抱きにできる猛者は大陸ひろしといえど、うちのミリアーナ姫位なもんでしょ。
「後日礼をしに訊ねてきたんだが、何故か菓子やら宝飾品を持ってミリアーナの剣の稽古を見学に来たりポロを嗜んだりしはじめたんだ」
ポロとはミリアーナ叔母様が得意とする戦争を模した盤上カードゲームで、ルールは違うようだがなんとなく前世で流行ってたカードゲームに似ている。
ミリアーナ叔母様はたしか軍師もできちゃうルシウス伯父様相手にも遜色無い実力だったはず。
「あーう(良く許したね)」
「良く許しましたのう、ミリアーナ姫は新しく皇太子になる人物の見合い相手として同行した筈」
ナイスロブルバーグ様、ありがとう! それこそ私の聞きたかったこと!
「いやぁ、最有力候補に周辺の大国の美姫がわんさかいたからうちに白羽の矢が立つ可能性が低かったからなぁ。 まぁ、ミリアーナ本人を見てくれる相手を探しにいったようなもんだからほっといた」
いや、駄目でしょほっといちゃ! 父様一応ミリアーナ叔母様年頃の乙女ですよ!
下手な男より強いけど歴としたレイナス王国の王妹君です。
「終いにはドラグーン王国の近衛騎士やら他国の軍関係者を巻き込んで武術大会の様相になったんだよ。 ミリアーナは参加しなかったんだが、前に倒された連中が何人か花束持ってミリアーナに求婚しに来たんだよ」
「あの青年は確かゼス帝国の近衛騎士でしたかな、それとケンテル共和国の陸軍大将補佐官だったのぅ」
「えぇ、驚きましたよ。あの跳ねっ返りを嫁に欲しいと言う物好きがやっと現れたと悦びましたから」
そうだった、父様はミリアーナ叔母様の隠れ親衛隊の存在を知らないんだった。
じつは水面下でモテてるんですよ、容姿もスタイルも抜群だからなぁ。一部の古い考えの人には解らないんだよねー。
ちなみに親衛隊は男性だけでなく女性で構成されている物もあることは把握済みだったり。
「一応ミリアーナは王太子の花嫁候補として登城していたので、帰国後に本人に話し合うと言うことで一旦納めたんですよ。 求婚者同士で決闘でもしかねない勢いだったし」
「まぁ、状況的には最善の策よの。ほれあーん」
話を聞きつつも私の口の中が空になるのを見計らって次の林檎を運んでくれる。
「あーう(あーん)」
「ミリアーナ姫が乗り気なら尚良縁じゃろうが」
「あー、自分よりも弱い男は嫌だと一刀両断しておりましたよ」
「ははは、なんともミリアーナ姫が言いそうな話しじゃな」
うん、言いそう。しかも自分が負かしたばかりの相手に平然といってそう。
「丁度部屋に遊びに来ていたクライン、じゃなかったクラインセルト殿下が求婚のやり取りを目撃して一刀両断されて去っていく二人を見て舌打ちしてましたよ」
「はばーぶー(あちゃー、父様的に貴重な配偶者候補斬っちゃったんだ)」
「ほうほう、それがあの求婚騒動に繋がった訳ですな」
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