『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!

紅葉ももな(くれはももな)

第四十八話『ルーイ様どこさ居たのしゃ?』リラ視点


 おらの名前はリラ、ルーイ様が拐われてから何とか王都まで出て来て、王太子妃殿下に偶然お会いできてなんとかお城の中に入ることは出来たものの、肝心のルーイ様が見つからねぇ。

 先陣を切って突入していった騎士様方の側は乱戦になっていたのでおらは戦線離脱させてもらった。

 正直争いは好かない、切った張ったなんておらにとってはおとぎ話の中にあるくらいで、盗賊団が出たりした話は聞いても、おら達平民が討伐になんてまず参加しない。

 襲われれば自己防衛くらいはするけんども、やはり日頃から剣で戦う人達に敵うはずもない。

 それに先程から城のあちらこちらの壁やら窓やらが不思議な卵によって派手に吹き飛ばされているので無闇に近づけないし、穴から城内に入ったのは良いものの、どこも似たような造りになっているせいでどこを歩っているのかさっぱりわがんねぇ。

 一部屋ずつ捜そうにもちょいちょい敵兵士が出て来るからゆっくり捜すこともままなんねぇ。

「うーん、埒が明かねぇなぁ」

 城内の捜索は諦めて城の外に出て来たおらは、先程まで続いていた不思議な卵の暴走が止んでいる事に気が付いた。

 まだ戦いの喧騒はあちらこちらで聞こえているものの、これくらいなら村の子供達の声より小さい。

 城が一望できる場所で適度に身を隠せる茂みに入り込むと、おらは胸が痛くなるくらいに沢山息を吸い込んだ。

 下手をすれば敵さんを招き寄せる結果につながるかも知んねぇけんども、目が見えないルーイ様に気が付いてもらうにはこれが一番だと経験上知っている。

「ルーイ様ぁぁあ! どございるだぁああ! 返事してくんろぉぉお!」 

 そぅ、父ちゃんに聞かれたら「でっけぇ声出さなくても聞こえてらぁ!」とぼっかり叩かれるくらいにはおらの声はでかいらしい。

 1キロ離れた場所にいる父ちゃんに聞こえるくらいにはでかいからもしかしたらルーイ様にも聞こえてなんかしらの返事が来るかも知んねぇ。

「ルーイ様ぁぁあ! どございるだぁああ! 返事してくんろぉぉお!」 

 もしかして聞こえなかったのではないかと二度目の大声て名前を呼ぶと今度は時間を置かずに、バリンと窓が割れて椅子が外に飛び出してきた部屋があった。

 城の四隅にある。塔の一つ、その最上階と思われる部屋。

「リラぁぁあ!」

 喧騒で聞こえづらいけど、田舎育ちのお陰でオラの耳は小声のおばちゃん達の悪口も聞き漏らさない位には良いんだでば。

 か細いルーイ様の声だって聞き逃さねぇ。

「ルーイさまぁぁあ、今から助けに行くから、待っててくんろぉぉお!」

 これでルーイ様が捕まってる場所は分かっただ。

 女子(おなご)ならお姫様を助けに来てくれる王子様や騎士に憧れるのが普通かも知んねぇが、おらはどうにもお姫様は、性に合わん!

「男姫様の居場所はわかったし、助けさ行きますか!」

 勢いよく立ち上がった瞬間、おらに向かって矢が飛んできた。

「居たぞ! あそこだ!」

 わらわらとこちらへ向かってくる敵兵士の姿を見付けて慌てて走り出す。

「追え! 殺して構わん!」

 悪路や倒木等の障害物物ともせずに村の悪ガキ共を捕まえるこのリラ様の脚力を舐めちゃぁいかんのですよ敵兵士さん方。

 どうやら自分の足で追いつくのは不可能だと判断したらしい敵兵士が笛のついた矢を放つと、わらわらと城内から数人外へと出て来た。

「あの女を捕まえろ! いや殺して構わん!」

 その指示に応援に来た敵兵士達がこちらへ走ってくる。

 女ひとりに数人がかりとか情けないとは思わないのかね!

  
    
 

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