『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!
第四十二話『おらをお城さ連れでってけろ!』
「リシャ、私はソレイユ殿と現状を確認してくる、だから絶対にフォルファーと大人しくしていてくれ」
私の両肩を掴みながら念を押すカイに私は頷いてみせた。
もう占拠されてしまったものは仕方が無いと無理をしないようにゆっくりと帰ってきた私達の予想を裏切り王都は、混乱に落ち合って……いなかった。
予想外にも占拠された王城は既に複数の貴族家の私兵達によって包囲されているようで、聖職者達は城へ籠城せざるを得なかったらしい。
初めのうちは勢いもあり、攻防も激しかったみたいだけど元を辿れば神に祈りを捧げる聖職者と国防の要となる騎士達とでは戦力に差があり過ぎる。
それでも双太陽神教会は国教。
中には熱心な信者もおり、信者たちの支援を当てにしていたのだろう。
宗教一揆を狙っていたのだろうが残念ながら当てが外れたようです。
まぁ正直に言わせていただければローズウェル王国、双太陽神教会離れが年々顕著になっているのですよ。
それもそのはず、ローズウェル王国に赴任している司祭の評判がすこぶる悪いのです。
貴族や王族などの特権階級におもねるのはまぁ理解できるのです。
前世にしても今世にしても生きていくにはお金は必要だし、それこそ高位貴族の公爵令嬢としてある意味伸び伸び好き放題生きてきたけどさ。
今回の件で聖職者であるにも関わらず、暴徒とかした一部の教会関係者が寄付と称して商家を襲撃した者がいたらしく、一気に民の信仰心は離れていったようだ。
そのため叛逆者達は城内に立てこもりを余儀なくされたらしい。
そう、たかが立て籠もり、されど立て籠もり、城内の篝火や灯りに次々と聖香が仕組まれ、急性中毒症状により騎士達が無力化された事で城内には国王陛下や宰相の我が父ダスティア公爵はじめ主要ポストの貴族達を人質に取られ制圧されてしまったのだ。
そう、この立て籠もりの厄介な所は城内が聖香による薬物に汚染されてしまっているせいで、一部の敵兵が痛みを恐れぬ死兵と化してしまっていること。
彼らは長年聖香に触れてきたためか耐性重度の依存症で少量ではそれほど影響を受けない体質になっているようだ。
今回の襲撃事件により聖香の危険性が公になったことで今後は国内での所持および使用に対する処罰は一級危険薬物として認識されている『無限の夢』と同等の物となるだろう。
聖香は使用者の痛覚を麻痺させ城攻めの際に放ったこちらの矢が身体に刺さってもびくともしない、そんな神父や神兵達に占拠された城での救出作戦は難攻していた。
今、カイはソレイユ兄様と現在指揮を執っている貴族籍の騎士達へ帰還連絡と今後の王城奪還作戦について話し合いに向かっている。
「リィーシャーナ様ぁぁぁあああ!」
これからどうしたものかなと思案していた所に懐かしい声が背後から聞こえてきて、振り返れば可能な限り優雅な競歩で迫ってきたクリスティーナ様に抱きしめられる。
そう、クリスティーナ様に抱きしめられ慣れた私は成長したんです、抱きしめられるときは上を向けば巨乳に埋もれて窒息せずに済むのだと言う事実に。
「クリスティーナ様只今戻りました」
「クリス、いい加減にしないとまたリシャが窒息するぞ?」
後から追いかけてきたらしいルーベンスの言葉に我に返ったのか、再会の抱擁から解放された。
「あれ、ルーベンス殿下はダスティア公爵領にいたはずじゃありませんでしたか?」
「あぁ、正確には居たが正しいな。 今回の騒動で王太后殿下からの救難要請でソルティス殿が動くまでは間違いなくダスティア公爵領にいた」
「えっ、なにがどうなってるのかわからないけど、ソルティス兄様が無茶したのだけは察したよ」
「ところでリシャーナ様、先ほどから私の足に乗り上げて地味に荷重をかけてくるこの卵はなんですの?」
「うおっ、随分と大きいな、なんの卵だこれ」
足元を転がるピンク色のドラタマを両手で抱きかかえるように持ち上げてふたりに見せる。
「話せば長くなるんだけどね……」
レイナス王国の竜卵だって言ったら驚くだろうなと説明しようと口を開けば、私の声が搔き消えるほどの大声で服が汚れるのも厭わずに兵士に詰め寄っている少女がいた。
必死に詰め寄る少女は背中の中程まである黒髪を二つ結びの三編みにしており、愛嬌あるクリクリとした大きな青色の瞳で自分よりも身体が大きい兵士をにらみ上げている。
「だめだだめだ! 一般人を包囲網の中に入れるわけにはいかん!」
「なんでだべ!」
「ここは危険なんだ、女性がいるべき場所じゃない」
「女性は人質の心配をしたらダメだっていうんだべか!? おらはダメなのにおらよりもか弱そうなあそこのお嬢様がいるのはなんでだべ!」
言い争う二人が気になってそちらへ視線を向けると、女性が私とクリスティーナ様を指さした事でこちらに気が付いた兵士が女性を抑え込んだ。
「こらやめないか! 王太子妃殿下と第三王子殿下とその妃殿下だぞ!?」
「えっ、本当だべか」
「本当だからすぐにやめるんだ!」
こちらを見据えて兵士の制止を振り切り、こちらへ駆けうてくる女性を危険だと判断したのか、フォルファーが取り押さえた。
「おねげぇだ! おらをお城さ一緒に連れでってけろ!」
フォルファーの拘束をものともせずにこちらはぐいぐい距離を詰めようとする少女の勢いにルーベンスが後ずさる。
相変わらず押しの強い女性に対する苦手意識は抜けないらしい。
「えっと、とりあえずお話を聞きましょうか」
「リシャーナ様危険です!」
フォルファーに牽制されたものの、このままにして置いたら彼女は兵士達を倒してでも城中へ入ろうとする気がする。
「暴れます?」
「中に入れるなら暴れませんとも!」
しっかりと頷いてみせにっこりと笑いながらはきはきと答える少女に親近感を覚えた。
「リシャが増えた」
ぼそりと呟いたルーベンスの声にやっぱりかと肩を落とす。
「貴女、お名前は?」
「リラと申しますだ、王太子妃殿下!」
「はぁ、とりあえず暴れないと約束してください、いいですか?」
「はいな!」
元気よく返事をするリラに一抹の不安は感じるものの、このまま放置もできないからとりあえず問題を先送りすることにした。
「フォルファー、とりあえず放してあげてください」
うん、カイのところに戻ってあとは任せよう、そうしよう。
ドラタマをルーベンスに渡せば、呆気にとられた後、手に持った卵が重さを増したのか取り落して慌てふためいている。
大丈夫だよ、その卵無茶苦茶丈夫だからね。
私の両肩を掴みながら念を押すカイに私は頷いてみせた。
もう占拠されてしまったものは仕方が無いと無理をしないようにゆっくりと帰ってきた私達の予想を裏切り王都は、混乱に落ち合って……いなかった。
予想外にも占拠された王城は既に複数の貴族家の私兵達によって包囲されているようで、聖職者達は城へ籠城せざるを得なかったらしい。
初めのうちは勢いもあり、攻防も激しかったみたいだけど元を辿れば神に祈りを捧げる聖職者と国防の要となる騎士達とでは戦力に差があり過ぎる。
それでも双太陽神教会は国教。
中には熱心な信者もおり、信者たちの支援を当てにしていたのだろう。
宗教一揆を狙っていたのだろうが残念ながら当てが外れたようです。
まぁ正直に言わせていただければローズウェル王国、双太陽神教会離れが年々顕著になっているのですよ。
それもそのはず、ローズウェル王国に赴任している司祭の評判がすこぶる悪いのです。
貴族や王族などの特権階級におもねるのはまぁ理解できるのです。
前世にしても今世にしても生きていくにはお金は必要だし、それこそ高位貴族の公爵令嬢としてある意味伸び伸び好き放題生きてきたけどさ。
今回の件で聖職者であるにも関わらず、暴徒とかした一部の教会関係者が寄付と称して商家を襲撃した者がいたらしく、一気に民の信仰心は離れていったようだ。
そのため叛逆者達は城内に立てこもりを余儀なくされたらしい。
そう、たかが立て籠もり、されど立て籠もり、城内の篝火や灯りに次々と聖香が仕組まれ、急性中毒症状により騎士達が無力化された事で城内には国王陛下や宰相の我が父ダスティア公爵はじめ主要ポストの貴族達を人質に取られ制圧されてしまったのだ。
そう、この立て籠もりの厄介な所は城内が聖香による薬物に汚染されてしまっているせいで、一部の敵兵が痛みを恐れぬ死兵と化してしまっていること。
彼らは長年聖香に触れてきたためか耐性重度の依存症で少量ではそれほど影響を受けない体質になっているようだ。
今回の襲撃事件により聖香の危険性が公になったことで今後は国内での所持および使用に対する処罰は一級危険薬物として認識されている『無限の夢』と同等の物となるだろう。
聖香は使用者の痛覚を麻痺させ城攻めの際に放ったこちらの矢が身体に刺さってもびくともしない、そんな神父や神兵達に占拠された城での救出作戦は難攻していた。
今、カイはソレイユ兄様と現在指揮を執っている貴族籍の騎士達へ帰還連絡と今後の王城奪還作戦について話し合いに向かっている。
「リィーシャーナ様ぁぁぁあああ!」
これからどうしたものかなと思案していた所に懐かしい声が背後から聞こえてきて、振り返れば可能な限り優雅な競歩で迫ってきたクリスティーナ様に抱きしめられる。
そう、クリスティーナ様に抱きしめられ慣れた私は成長したんです、抱きしめられるときは上を向けば巨乳に埋もれて窒息せずに済むのだと言う事実に。
「クリスティーナ様只今戻りました」
「クリス、いい加減にしないとまたリシャが窒息するぞ?」
後から追いかけてきたらしいルーベンスの言葉に我に返ったのか、再会の抱擁から解放された。
「あれ、ルーベンス殿下はダスティア公爵領にいたはずじゃありませんでしたか?」
「あぁ、正確には居たが正しいな。 今回の騒動で王太后殿下からの救難要請でソルティス殿が動くまでは間違いなくダスティア公爵領にいた」
「えっ、なにがどうなってるのかわからないけど、ソルティス兄様が無茶したのだけは察したよ」
「ところでリシャーナ様、先ほどから私の足に乗り上げて地味に荷重をかけてくるこの卵はなんですの?」
「うおっ、随分と大きいな、なんの卵だこれ」
足元を転がるピンク色のドラタマを両手で抱きかかえるように持ち上げてふたりに見せる。
「話せば長くなるんだけどね……」
レイナス王国の竜卵だって言ったら驚くだろうなと説明しようと口を開けば、私の声が搔き消えるほどの大声で服が汚れるのも厭わずに兵士に詰め寄っている少女がいた。
必死に詰め寄る少女は背中の中程まである黒髪を二つ結びの三編みにしており、愛嬌あるクリクリとした大きな青色の瞳で自分よりも身体が大きい兵士をにらみ上げている。
「だめだだめだ! 一般人を包囲網の中に入れるわけにはいかん!」
「なんでだべ!」
「ここは危険なんだ、女性がいるべき場所じゃない」
「女性は人質の心配をしたらダメだっていうんだべか!? おらはダメなのにおらよりもか弱そうなあそこのお嬢様がいるのはなんでだべ!」
言い争う二人が気になってそちらへ視線を向けると、女性が私とクリスティーナ様を指さした事でこちらに気が付いた兵士が女性を抑え込んだ。
「こらやめないか! 王太子妃殿下と第三王子殿下とその妃殿下だぞ!?」
「えっ、本当だべか」
「本当だからすぐにやめるんだ!」
こちらを見据えて兵士の制止を振り切り、こちらへ駆けうてくる女性を危険だと判断したのか、フォルファーが取り押さえた。
「おねげぇだ! おらをお城さ一緒に連れでってけろ!」
フォルファーの拘束をものともせずにこちらはぐいぐい距離を詰めようとする少女の勢いにルーベンスが後ずさる。
相変わらず押しの強い女性に対する苦手意識は抜けないらしい。
「えっと、とりあえずお話を聞きましょうか」
「リシャーナ様危険です!」
フォルファーに牽制されたものの、このままにして置いたら彼女は兵士達を倒してでも城中へ入ろうとする気がする。
「暴れます?」
「中に入れるなら暴れませんとも!」
しっかりと頷いてみせにっこりと笑いながらはきはきと答える少女に親近感を覚えた。
「リシャが増えた」
ぼそりと呟いたルーベンスの声にやっぱりかと肩を落とす。
「貴女、お名前は?」
「リラと申しますだ、王太子妃殿下!」
「はぁ、とりあえず暴れないと約束してください、いいですか?」
「はいな!」
元気よく返事をするリラに一抹の不安は感じるものの、このまま放置もできないからとりあえず問題を先送りすることにした。
「フォルファー、とりあえず放してあげてください」
うん、カイのところに戻ってあとは任せよう、そうしよう。
ドラタマをルーベンスに渡せば、呆気にとられた後、手に持った卵が重さを増したのか取り落して慌てふためいている。
大丈夫だよ、その卵無茶苦茶丈夫だからね。
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