『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!
第二話『アンタだれ!?』
まさかの新婚初夜の新王太子夫妻の王城脱出と言う事態に困惑した。
しかし正門に横付けされた馬車や旅装の護衛達を見れば、この新婚旅行が前もって計画されていたものだとよくわかる。
かつてハニートラップに引っ掛かり国宝の首飾りをちょろまかし、贈ったあげく、クリスティーナ・スラープ伯爵令嬢と学園の中庭という大衆の面前で婚約破棄なんて馬鹿をやらかしたこの国の第三王子ルーベンス・ローズウェル殿下、今となってはカイと結婚したので義理の弟になった訳だけど……
当時ルーベンス殿下のお目付け役を国王陛下に押し付けられていた私は、ルーベンス殿下の再教育の為に、身分を偽りカイザール・クラリアス伯爵子息として王立学院へと通っていたカイと、婚約破棄現場から救った事で仲良くなったクリスティーナ様……クリスと四人で実質上の島流しになった。
フレアルージュ王国と国境が近いドラクロア辺境伯の領地への道中で使用したことがあるダスティア公爵家自慢の軍事遠征用の装甲馬車と同型の物が用意してあるあたり抜かりない。
六頭だての黒光りする一際大きな軍事遠征用の装甲馬車は、単に車両に凝りまくったあげく重すぎて馬四頭で引けなくなっただけだったりする。
スプリングがついていて揺れが少なく、ダスティア公爵領の鍛冶屋が鉄の板を叩きに叩いて外壁を強化した特注品だ。
「我が君、直ぐに出発できます」
そう言って現れたのは旅装を纏った変態……じゃなくてフォルファー・ドラクロア。
ドラクロア辺境伯であるグラスト伯に嫁がれた王妹セイラ様の御子息でフラフラした女ったらし……のはずなんだけど……
「そっくりさん?」
「いや本人だ」
え〜!? うっそだぁ!
確かに容姿はセイラ様に似ていて前から整っては居たけれど、纏う雰囲気が別人だった。
あの飄々とした人を小馬鹿にするような態度はなりを潜め、キリッと引き締まり全身から溢れ出すように自信が漲っている。
「お久しぶりでございます、王太子妃殿下」
まるで今気が付きましたとばかりに挨拶してきた。
「えぇ、あまりに雰囲気が違うから誰だかわからなかったわフォルファー殿」
「どうぞ呼び捨てにして下さい……たとえミノムシのようでも妃殿下は不本意ながら我が主の奥方様なのですから」
笑顔を浮かべているものの、フォルファーの目が笑ってない。
ふ〜ん、不本意ねぇ……我が主ってどういう事?
しかもミノムシ状態なのは私を荷物のように運んでるカイのせいだから。
「そう、ではフォルファー。 まさか貴方も一緒に行くの?」
「もちろんです」
何を当たり前な事を聞いてくるのだと小馬鹿にするように聞かれて心が苛立つ。
笑顔で睨み合う私達に肩をすくめ、カイは私を抱き上げたまま体勢を直したせいでバランスが狂い必死にカイの身体にしがみつく。
「ヒャ!」
「はやく乗れ、小舅に気が付かれると厄介なんだからな」
そう言って私を肩口に担ぎ上げたまま危なげなく馬車のステップを上がっていく。
私達が馬車に乗り込んだのを確認して、フォルファーがゆっくりと馬車の扉を閉めると、狭い空間にカイが扉に施錠した音が響く。
「さてやっと二人きりになれた……おいで?」
きれいな笑顔で両手を広げて待つカイにゆっくりと近づくと、突然動き出した馬車の振動にバランスを崩した。
「ぎゃっ」
「おっと」
力強い腕が倒れ掛けた私に絡みつきグイッと自身の胸へと引き寄せる。
風呂上がりの石鹸のいい香りにドクリと胸高鳴った。
まるで全身に火が灯ったように身体が熱くなる。
「今日の宿泊予定地まで暫く掛かるから寝ていいよ?」
ポンポンと宥めるように背中を優しく叩かれる。
「そう? 確かに疲れたかな……婚約披露だと思ってたのにまさかの結婚式だったしさ」
身体の向きを直し、背中をカイの胸に預ける。
「驚いた?」
「そりゃ驚くわよ、今度からはちゃんと隅々まで書類を確認してから署名します」
無意識に膨らませた頬をカイに優しく潰されまるでタコのイラストみたいに唇を突き出したような表情になってしまう。
「ブフっ!」
そんなわたしのぶちゃいく顔に思わず顔を背けて吹き出したカイをジト目で睨みつけた。
「カイー!」
「ごめんごめん」
宥めるように顔に優しくキスが掠めていく。
「ほらおやすみ」
剣だことペンだこが共存する大きく節ばった手に両目を塞がれる。
心地よい馬車の揺れと背中越しで伝わるカイの力強い鼓動が心地よく私は眠りに逆らうことが出来ずあっけなく陥落した。
しかし正門に横付けされた馬車や旅装の護衛達を見れば、この新婚旅行が前もって計画されていたものだとよくわかる。
かつてハニートラップに引っ掛かり国宝の首飾りをちょろまかし、贈ったあげく、クリスティーナ・スラープ伯爵令嬢と学園の中庭という大衆の面前で婚約破棄なんて馬鹿をやらかしたこの国の第三王子ルーベンス・ローズウェル殿下、今となってはカイと結婚したので義理の弟になった訳だけど……
当時ルーベンス殿下のお目付け役を国王陛下に押し付けられていた私は、ルーベンス殿下の再教育の為に、身分を偽りカイザール・クラリアス伯爵子息として王立学院へと通っていたカイと、婚約破棄現場から救った事で仲良くなったクリスティーナ様……クリスと四人で実質上の島流しになった。
フレアルージュ王国と国境が近いドラクロア辺境伯の領地への道中で使用したことがあるダスティア公爵家自慢の軍事遠征用の装甲馬車と同型の物が用意してあるあたり抜かりない。
六頭だての黒光りする一際大きな軍事遠征用の装甲馬車は、単に車両に凝りまくったあげく重すぎて馬四頭で引けなくなっただけだったりする。
スプリングがついていて揺れが少なく、ダスティア公爵領の鍛冶屋が鉄の板を叩きに叩いて外壁を強化した特注品だ。
「我が君、直ぐに出発できます」
そう言って現れたのは旅装を纏った変態……じゃなくてフォルファー・ドラクロア。
ドラクロア辺境伯であるグラスト伯に嫁がれた王妹セイラ様の御子息でフラフラした女ったらし……のはずなんだけど……
「そっくりさん?」
「いや本人だ」
え〜!? うっそだぁ!
確かに容姿はセイラ様に似ていて前から整っては居たけれど、纏う雰囲気が別人だった。
あの飄々とした人を小馬鹿にするような態度はなりを潜め、キリッと引き締まり全身から溢れ出すように自信が漲っている。
「お久しぶりでございます、王太子妃殿下」
まるで今気が付きましたとばかりに挨拶してきた。
「えぇ、あまりに雰囲気が違うから誰だかわからなかったわフォルファー殿」
「どうぞ呼び捨てにして下さい……たとえミノムシのようでも妃殿下は不本意ながら我が主の奥方様なのですから」
笑顔を浮かべているものの、フォルファーの目が笑ってない。
ふ〜ん、不本意ねぇ……我が主ってどういう事?
しかもミノムシ状態なのは私を荷物のように運んでるカイのせいだから。
「そう、ではフォルファー。 まさか貴方も一緒に行くの?」
「もちろんです」
何を当たり前な事を聞いてくるのだと小馬鹿にするように聞かれて心が苛立つ。
笑顔で睨み合う私達に肩をすくめ、カイは私を抱き上げたまま体勢を直したせいでバランスが狂い必死にカイの身体にしがみつく。
「ヒャ!」
「はやく乗れ、小舅に気が付かれると厄介なんだからな」
そう言って私を肩口に担ぎ上げたまま危なげなく馬車のステップを上がっていく。
私達が馬車に乗り込んだのを確認して、フォルファーがゆっくりと馬車の扉を閉めると、狭い空間にカイが扉に施錠した音が響く。
「さてやっと二人きりになれた……おいで?」
きれいな笑顔で両手を広げて待つカイにゆっくりと近づくと、突然動き出した馬車の振動にバランスを崩した。
「ぎゃっ」
「おっと」
力強い腕が倒れ掛けた私に絡みつきグイッと自身の胸へと引き寄せる。
風呂上がりの石鹸のいい香りにドクリと胸高鳴った。
まるで全身に火が灯ったように身体が熱くなる。
「今日の宿泊予定地まで暫く掛かるから寝ていいよ?」
ポンポンと宥めるように背中を優しく叩かれる。
「そう? 確かに疲れたかな……婚約披露だと思ってたのにまさかの結婚式だったしさ」
身体の向きを直し、背中をカイの胸に預ける。
「驚いた?」
「そりゃ驚くわよ、今度からはちゃんと隅々まで書類を確認してから署名します」
無意識に膨らませた頬をカイに優しく潰されまるでタコのイラストみたいに唇を突き出したような表情になってしまう。
「ブフっ!」
そんなわたしのぶちゃいく顔に思わず顔を背けて吹き出したカイをジト目で睨みつけた。
「カイー!」
「ごめんごめん」
宥めるように顔に優しくキスが掠めていく。
「ほらおやすみ」
剣だことペンだこが共存する大きく節ばった手に両目を塞がれる。
心地よい馬車の揺れと背中越しで伝わるカイの力強い鼓動が心地よく私は眠りに逆らうことが出来ずあっけなく陥落した。
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