『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!

紅葉ももな(くれはももな)

131『毒に倒れたのは』

「レブラン!」


 とっさに起き上がろうとした身体を、カイザー様に地面に押し戻される。


 まるで私を安心させようとしているように頭をクシャクシャと撫でると、ゆっくりと立ち上がりレブランへ振り返った。


「レブラン……今回の首謀者はおまえか?」


「半分当たりで半分ハズレかな」


 さも可笑しそうにクスクスと笑うレブランはゆっくりと右手に持った短剣を振ってみせた。


 銀色の刀身に炎が写り込み鈍い朱色に輝いている。


 グラリと自らの額に手を当てたカイザーが揺らいだ様子にレブランの顔がニヤける。


「あぁやっと効いてきた? 殿下はしぶとそうだったから毒も塗って置いたんだ」


 毒!?


 ハッと顔を上げればカイザー様が纏っている黒い上着の背面が濡れていた。


「カイ!?」


 レブランがわざとらしく短剣を振り払うと、刀身に纏わりついていた血液が薄くなる。


「大丈夫だ……半分とはどう言う事だレブラン」


「そのままだよ。 マリアンヌも素直で馬鹿で面白い玩具だったよ」


「カイザー様!」


「動くな! 動けば君達の大切な王子を殺す」


 駆け付けた騎士を一喝し威圧する。


「本当はもっと遊んでいたいんだけど、時間切れかな?」


 ドサリという音と鎧の金属音と共にイーサンを拘束していた騎士が地面に倒れ込んだ。


「ヴァージル様、悪ふざけが過ぎますよ」


 呆れを含んだ声を出した青年は、レブラン様に近づいた。


「ふふふっ、パキトが現れたって事はイザークは失敗したかな?」


「ハイ、イザーク様及びクワトロ侯爵は拘束されました、ヴァージル様は速やかに帰国をせよとご命令です」


「ふぅ、我が家族は相変わらず人使いが荒いねぇ」


「イーサンはいかがなさいますか?」


「んー、いらない」


「わかりました」


 無表情でイーサンの首に三日月のように大きく湾曲した短剣を走らせると、濃厚な血液の匂いが漂う。


 痙攣した後、血の海に沈むイーサンの姿にクスクスと笑うと、レブランはパキトの元へと戻り、服の胸元を引き下ろすとパキトの唇を自らの唇で塞いだ。


「じゃぁねローズウェル王国の皆様」 


 ひらひらと手を振り去ってゆくレブラン様に動けずにいる騎士たちへカイザー様が怒声を飛ばした。


「何をしている! 逆賊を捕らえよ!」







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