『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!
130『イーサンvsカイザー』
「その手を放せ……」
涙に滲む視界で捉えたカイザー様が唸るようにイーサンに引き抜いた長剣を向けられるようにしている。
黒衣を纏い怒気も顕に立つカイザー様の背後では、王城から上る炎が陽炎のよ揺らめいた。
「へぇ、誰かと思えばローズウェルの第二王子じゃないか」
「ぐっ、痛っ!」
更に力を入れて私の顔を自分の顔付近まで引き上げた。
爪先立ちでかろうじて地面に付いていた足が宙をかく。
引き攣れる頭部からブチブチと髪が切れた音と、確実に何本か抜けたのがわかる。 痛みにあげかけた悲鳴を噛み殺す。
つぅっと痛みに頬を流れ落ちた涙を左頬の下から目尻に向かって舐め上げられた。
ぎゃぁぁぁ、気色悪い!
唾液が気化してほっぺがすうすぅする、オェ。
「貴様〜今すぐその手をーー」
「舐めんなボケェぇぇぇ!」
目の前のカイザー様に気を取られてこちらを見ていないイーサンの顎先に握りしめた左手を突き上げた。
「あがっ!?」
話の途中で一発入れたからかどうやら自分の舌を噛んだようで、わたしの髪を手放した。
イーサンの口の端から鮮血がこぼれ落ちる。
「リシャ!」
「カイ!」
一瞬反応が遅れたカイザー様は素早く私の伸ばした腕を掴み、自分の後方へ引く。
そのまま大股でイーサンとの距離を詰めると、足の脛を狙って長剣を薙いだ。
「クソあまぁァァ」
瞬時に自身の剣の鞘を自身の足とカイザー様の長剣の間に入れて防ぐと、口から血を吐き捨てた。
ペタリと地面に座り込み、ゴシゴシと寝間着の袖口で左頬を拭きながら目の前で繰り広げられるカイザー様とイーサンの剣戟の応酬を観戦するしかなかった。
振り下ろしたり斬り上げたりと一歩も引かない激戦……
周りを見ればアチラコチラでイーサンの連れていた手下らしい男たちが取り押さえられていく。
視線の先に地面に倒れ込んで動かないシャノン様を見つけた。
本当は駆け寄りたいところだけど、下半身にうまく力が入らない。
地面に触れた手にコロコロとした石が触れる。
移動せずに手が届く範囲の少しだけ大き目の小石を自分の手元に拾い集めた。
その間にもイーサンとカイザー様の戦闘は激しさを増してゆく。
めぼしい石をほぼ全て拾い集め、狙いを定めて目の前の二人組に投げつけた。
たかが石、されど石、今はゾライヤ帝国に行ったまま、いまだに帰ってこない我がダスティア公爵家の隠密ディオンに比べればイーサンのスピードは遅い。
しかも体格が良いため的も格段に広い、次にイーサンが動きそうな先を目掛けて投げた小石は的確にイーサンの背中に命中した。
「なんだ!?」
カイザー様へ振り下ろした剣先が僅かに逸れる。
其の隙きを逃さずに反撃に出たカイザー様の様子を見ながら、先程よりも倍以上大きな石を拾い上げイーサンの広い背中がこちらに向くタイミングを図り思いっきり投げ付けた。
「ぐはっ!」
今回も背骨の中央付近に命中した小石に、イーサンが呻く。
見えない場所から受けるダメージに徐々に戦いの流れを崩され劣勢になりつつあるイーサン目掛けてこれまでで一番大きな石を持ち上げて投げ付けると、どうやらさすがに気が付かれたらしく、カイザー様の剣筋を反らしてこちらに視線をよこすと、私が放った石を自分の剣の腹で打ち返してきた。
「何度も食らうかぁ!」
ガッキーンと金属音を鳴らし私の方に飛んできた石を身体を伏せてやり過ごせば、背後で呻き声が上った。
どうやらカイザー様が連れてきた騎士と戦っていた賊の一人に当たったらしい。
次々に拾っては投げ、拾っては投げを繰り返す。
カイザー様には当たっていないので、案外投擲に向いているのかもしれない。
「これで終わりだぁ!」
上段からカイザー様目掛けて剣を振り下ろさんと力強く踏み出したイーサン殿下は、足元に落ちていた大きすぎず、かと言って小さ過ぎない小石を思いっきり踏みつけて、大きくバランスを崩した。
その隙きを見逃さず下からすくい上げるようにして放たれた一撃は、イーサンの持っていた剣を弾き飛ばした。
カイザー様はそのままイーサンの胸を蹴り飛ばし、身動きできないように地面に倒すと、容赦なくイーサンの頭を剣の柄で殴りつけた。
気絶したのか動かなくったってイーサンを駆け付けた部下に任せると、こちらへ走ってやってくる。
歯こぼれした長剣を地面に投げ捨て、空いた両手で私をきつく抱き締めた。
「リシャ、無事で良かった」
「うん」
「もう放さない」
「うん」
カイザー様の背中に手を回して抱き付けば、張っていた気が抜けてしまった。
家族以外の男性にこうも無防備になっている自分が信じられない。
ドサリと背中から地面に押し倒されて狼狽えた。
「カッ、カイ!?」
「カイザー殿下!」
切羽詰まった声が聞こえてくる。
「やぁ、カイザー殿下?」
カイザー様の後ろから聞こえた声に、戦慄した。
私の上から身体を起こしたカイザー殿下の後に楽しそうな笑顔を浮かべたレブランが立っていた。
涙に滲む視界で捉えたカイザー様が唸るようにイーサンに引き抜いた長剣を向けられるようにしている。
黒衣を纏い怒気も顕に立つカイザー様の背後では、王城から上る炎が陽炎のよ揺らめいた。
「へぇ、誰かと思えばローズウェルの第二王子じゃないか」
「ぐっ、痛っ!」
更に力を入れて私の顔を自分の顔付近まで引き上げた。
爪先立ちでかろうじて地面に付いていた足が宙をかく。
引き攣れる頭部からブチブチと髪が切れた音と、確実に何本か抜けたのがわかる。 痛みにあげかけた悲鳴を噛み殺す。
つぅっと痛みに頬を流れ落ちた涙を左頬の下から目尻に向かって舐め上げられた。
ぎゃぁぁぁ、気色悪い!
唾液が気化してほっぺがすうすぅする、オェ。
「貴様〜今すぐその手をーー」
「舐めんなボケェぇぇぇ!」
目の前のカイザー様に気を取られてこちらを見ていないイーサンの顎先に握りしめた左手を突き上げた。
「あがっ!?」
話の途中で一発入れたからかどうやら自分の舌を噛んだようで、わたしの髪を手放した。
イーサンの口の端から鮮血がこぼれ落ちる。
「リシャ!」
「カイ!」
一瞬反応が遅れたカイザー様は素早く私の伸ばした腕を掴み、自分の後方へ引く。
そのまま大股でイーサンとの距離を詰めると、足の脛を狙って長剣を薙いだ。
「クソあまぁァァ」
瞬時に自身の剣の鞘を自身の足とカイザー様の長剣の間に入れて防ぐと、口から血を吐き捨てた。
ペタリと地面に座り込み、ゴシゴシと寝間着の袖口で左頬を拭きながら目の前で繰り広げられるカイザー様とイーサンの剣戟の応酬を観戦するしかなかった。
振り下ろしたり斬り上げたりと一歩も引かない激戦……
周りを見ればアチラコチラでイーサンの連れていた手下らしい男たちが取り押さえられていく。
視線の先に地面に倒れ込んで動かないシャノン様を見つけた。
本当は駆け寄りたいところだけど、下半身にうまく力が入らない。
地面に触れた手にコロコロとした石が触れる。
移動せずに手が届く範囲の少しだけ大き目の小石を自分の手元に拾い集めた。
その間にもイーサンとカイザー様の戦闘は激しさを増してゆく。
めぼしい石をほぼ全て拾い集め、狙いを定めて目の前の二人組に投げつけた。
たかが石、されど石、今はゾライヤ帝国に行ったまま、いまだに帰ってこない我がダスティア公爵家の隠密ディオンに比べればイーサンのスピードは遅い。
しかも体格が良いため的も格段に広い、次にイーサンが動きそうな先を目掛けて投げた小石は的確にイーサンの背中に命中した。
「なんだ!?」
カイザー様へ振り下ろした剣先が僅かに逸れる。
其の隙きを逃さずに反撃に出たカイザー様の様子を見ながら、先程よりも倍以上大きな石を拾い上げイーサンの広い背中がこちらに向くタイミングを図り思いっきり投げ付けた。
「ぐはっ!」
今回も背骨の中央付近に命中した小石に、イーサンが呻く。
見えない場所から受けるダメージに徐々に戦いの流れを崩され劣勢になりつつあるイーサン目掛けてこれまでで一番大きな石を持ち上げて投げ付けると、どうやらさすがに気が付かれたらしく、カイザー様の剣筋を反らしてこちらに視線をよこすと、私が放った石を自分の剣の腹で打ち返してきた。
「何度も食らうかぁ!」
ガッキーンと金属音を鳴らし私の方に飛んできた石を身体を伏せてやり過ごせば、背後で呻き声が上った。
どうやらカイザー様が連れてきた騎士と戦っていた賊の一人に当たったらしい。
次々に拾っては投げ、拾っては投げを繰り返す。
カイザー様には当たっていないので、案外投擲に向いているのかもしれない。
「これで終わりだぁ!」
上段からカイザー様目掛けて剣を振り下ろさんと力強く踏み出したイーサン殿下は、足元に落ちていた大きすぎず、かと言って小さ過ぎない小石を思いっきり踏みつけて、大きくバランスを崩した。
その隙きを見逃さず下からすくい上げるようにして放たれた一撃は、イーサンの持っていた剣を弾き飛ばした。
カイザー様はそのままイーサンの胸を蹴り飛ばし、身動きできないように地面に倒すと、容赦なくイーサンの頭を剣の柄で殴りつけた。
気絶したのか動かなくったってイーサンを駆け付けた部下に任せると、こちらへ走ってやってくる。
歯こぼれした長剣を地面に投げ捨て、空いた両手で私をきつく抱き締めた。
「リシャ、無事で良かった」
「うん」
「もう放さない」
「うん」
カイザー様の背中に手を回して抱き付けば、張っていた気が抜けてしまった。
家族以外の男性にこうも無防備になっている自分が信じられない。
ドサリと背中から地面に押し倒されて狼狽えた。
「カッ、カイ!?」
「カイザー殿下!」
切羽詰まった声が聞こえてくる。
「やぁ、カイザー殿下?」
カイザー様の後ろから聞こえた声に、戦慄した。
私の上から身体を起こしたカイザー殿下の後に楽しそうな笑顔を浮かべたレブランが立っていた。
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