『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!
123『リシャーナ様を救けて』クリスティーナ視点
三日ぶりにリシャーナ様の目が覚めた。
カイザー様が泥だらけになったリシャーナ様を運び込んだときには、既に高熱を出していてそれからついさっきまで眠り続けていたの。
目覚めたリシャーナ様のいつもと変わらない姿にとても安堵した。
熱は下がっているようだけど、カイザー様からの指示を抜きにしても、早く医師に見せたほうが良いと思い、強引に病み上がりでふらついているリシャーナ様をベッドに押し込んで、部屋を出る。
途中まで来たところで、そういえば部屋に置いておいた水差しが空になっていた事を思い出した。
せっかくだから補充しようとリシャーナ様の部屋の前まで来たところで、扉の取手に伸ばした手を止める。
リシャーナ様以外居ないはずの部屋の中から声が聞こえたような気がしたのだ。
扉へ貼り付くようにして耳をすませば、どうやら男女二人の声が何かを話したあと、こちらへやってくる気配に、扉から身体を離して辺りを見回し、近くに使用人達が寝具の替えを保管している備品室である事に気が付いて、急いで部屋へと飛び込んだ。
薄く扉を開けて置いたため、かろうじて廊下の様子が見える。
まず出て来たのはシャノン様だった、なぜこんな夜中にシャノン様が?
疑問は続いて出て来た大きな男を見た事で吹き飛んだ。
「うそ……」
口から飛び出た呟きを、唇を押さえて封じ込めた。
私は男の肩に担ぎ上げられ、グッタリと脱力したリシャーナ様の姿に、言葉が出てこなかった。
「……?」
何か違和感でも有ったのかリシャーナ様を担いだ男がこちらを振り返った。
「早くいきましょう?」
「……あぁ」
シャノン様は立ち止まった男を促すと、私の方に視線を寄こした後、男の後を追うように歩き出した。
「どうした?」
「何でもないわ……急ぎましょう」
男の広い背中を押すようにして廊下の向こうに消えたのを確認して、急いで備品室から飛び出すと、シャノン様の後を追った。
足音を立てないように注意をしながら尾行すると、シャノン様入っていったのは寮内に併設されている書庫だった。
書物の劣化を防ぐために書物には小さな明り取りの窓しか無く、出入り口も今シャノン様が入っていった一箇所のみ。
物陰から隠れて書物から二人が出てくるのを待っていたが誰も出てこない。
ゆっくりと書庫の扉の前までやって来た私は、扉に耳をつけて中の様子をうかがったが、何も聞こえてこない。
静かに扉を開けて書庫の中を覗き込んだが、そこに人は居なかった。
「えっ、なんで?」
とぼとぼと室内を歩き回ると、書庫の奥から流れてきたひんやりと冷たい風が足首を掠める。
風の元を辿れば、綺麗にズレることなく並べられている書庫の本棚が、一箇所だけ不自然にズレていた。
「……まさか!」
素早く駆け寄り本棚を確認すれば、ほんの僅かだが隙間が空いていて奥に通路らしき地下へと続く階段があった。
王族は有事の際に王都から脱出出来るように、城など王族が生活を営む古い建築物に隠し通路が作られていると聞いたことがある。
旧王朝時代から続く王立学院は、今でこそ王族は他の貴族と寮が分けられているが、それも三代前、腐敗した旧王朝が衰退しローズウェル王国が建国されるまでは、王族もこの寮に住んでいたと古い文献で読んだ記憶がある。
シャノン様の生家……フリエル公爵家はダスティア公爵家と並ぶ歴史ある家柄、今は忘れ去られた隠し通路の一つや二つ秘匿していても不思議はない。
まるで追って来いと言っているようにわかり易く足跡を残して行ったのは偶然だろうか、それとも罠?
「……悔しいですが、これ以上の追跡は私には荷が重いですね……」
リシャーナ様を助ける為に私が出来ることは単身で後を追うことじゃない……
隠し通路の入り口が閉まらないように、本棚から分厚い書籍を取り出して隙間に捩じ込んだ。
「一刻も早くルーベンス様とカイザー様を呼んでこなければ!」
行儀が悪い事は承知しているが時間もない、私がグズグズしている間にも否応なしにリシャーナ様の身に危険が及ぶ確率が高まってしまう。
足首まで隠れる長い寝間着の裾をたくし上げて両手で持ち上げ、私は暗い寮内をカイザー様のいる王族寮目指して疾走した。
カイザー様が泥だらけになったリシャーナ様を運び込んだときには、既に高熱を出していてそれからついさっきまで眠り続けていたの。
目覚めたリシャーナ様のいつもと変わらない姿にとても安堵した。
熱は下がっているようだけど、カイザー様からの指示を抜きにしても、早く医師に見せたほうが良いと思い、強引に病み上がりでふらついているリシャーナ様をベッドに押し込んで、部屋を出る。
途中まで来たところで、そういえば部屋に置いておいた水差しが空になっていた事を思い出した。
せっかくだから補充しようとリシャーナ様の部屋の前まで来たところで、扉の取手に伸ばした手を止める。
リシャーナ様以外居ないはずの部屋の中から声が聞こえたような気がしたのだ。
扉へ貼り付くようにして耳をすませば、どうやら男女二人の声が何かを話したあと、こちらへやってくる気配に、扉から身体を離して辺りを見回し、近くに使用人達が寝具の替えを保管している備品室である事に気が付いて、急いで部屋へと飛び込んだ。
薄く扉を開けて置いたため、かろうじて廊下の様子が見える。
まず出て来たのはシャノン様だった、なぜこんな夜中にシャノン様が?
疑問は続いて出て来た大きな男を見た事で吹き飛んだ。
「うそ……」
口から飛び出た呟きを、唇を押さえて封じ込めた。
私は男の肩に担ぎ上げられ、グッタリと脱力したリシャーナ様の姿に、言葉が出てこなかった。
「……?」
何か違和感でも有ったのかリシャーナ様を担いだ男がこちらを振り返った。
「早くいきましょう?」
「……あぁ」
シャノン様は立ち止まった男を促すと、私の方に視線を寄こした後、男の後を追うように歩き出した。
「どうした?」
「何でもないわ……急ぎましょう」
男の広い背中を押すようにして廊下の向こうに消えたのを確認して、急いで備品室から飛び出すと、シャノン様の後を追った。
足音を立てないように注意をしながら尾行すると、シャノン様入っていったのは寮内に併設されている書庫だった。
書物の劣化を防ぐために書物には小さな明り取りの窓しか無く、出入り口も今シャノン様が入っていった一箇所のみ。
物陰から隠れて書物から二人が出てくるのを待っていたが誰も出てこない。
ゆっくりと書庫の扉の前までやって来た私は、扉に耳をつけて中の様子をうかがったが、何も聞こえてこない。
静かに扉を開けて書庫の中を覗き込んだが、そこに人は居なかった。
「えっ、なんで?」
とぼとぼと室内を歩き回ると、書庫の奥から流れてきたひんやりと冷たい風が足首を掠める。
風の元を辿れば、綺麗にズレることなく並べられている書庫の本棚が、一箇所だけ不自然にズレていた。
「……まさか!」
素早く駆け寄り本棚を確認すれば、ほんの僅かだが隙間が空いていて奥に通路らしき地下へと続く階段があった。
王族は有事の際に王都から脱出出来るように、城など王族が生活を営む古い建築物に隠し通路が作られていると聞いたことがある。
旧王朝時代から続く王立学院は、今でこそ王族は他の貴族と寮が分けられているが、それも三代前、腐敗した旧王朝が衰退しローズウェル王国が建国されるまでは、王族もこの寮に住んでいたと古い文献で読んだ記憶がある。
シャノン様の生家……フリエル公爵家はダスティア公爵家と並ぶ歴史ある家柄、今は忘れ去られた隠し通路の一つや二つ秘匿していても不思議はない。
まるで追って来いと言っているようにわかり易く足跡を残して行ったのは偶然だろうか、それとも罠?
「……悔しいですが、これ以上の追跡は私には荷が重いですね……」
リシャーナ様を助ける為に私が出来ることは単身で後を追うことじゃない……
隠し通路の入り口が閉まらないように、本棚から分厚い書籍を取り出して隙間に捩じ込んだ。
「一刻も早くルーベンス様とカイザー様を呼んでこなければ!」
行儀が悪い事は承知しているが時間もない、私がグズグズしている間にも否応なしにリシャーナ様の身に危険が及ぶ確率が高まってしまう。
足首まで隠れる長い寝間着の裾をたくし上げて両手で持ち上げ、私は暗い寮内をカイザー様のいる王族寮目指して疾走した。
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