『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!

紅葉ももな(くれはももな)

116『レブランとシャノン』

 さて、全治五日の診断を受けてから今日で三日目です。


 挫いた足はもう痛みもなく、跳んでも走っても違和感ありません。


 ほら見ろやっぱり完治するまでに五日もいらなかったじゃん。
 
 そう、本日はカイザー様が襲撃してくるとクリスティーナ様が予言された休養日……


 朝から念入りに仮病を装い、カイザー様がいらしたら捻挫を理由にして断ろうと、部屋に訪ねていらっしゃるのを今か今かと待っていたのです。
 
 待っていたのですが……部屋からみえる窓の外は既に夕焼けで茜色に染まっております。


 おい! 待ってた私の貴重な時間を返せ!


 そしてクリスティーナ様もシャノン様も……アラン様にも自室療養を初めてからからお会いしていません。


 むぅ、さみしい……


 学院の私が割り当てられている公爵令嬢に相応しい二間続きの広々とした部屋は、皆が学院へ登校しているため、一人で居るとあまりの静けさに、世界で自分一人だけが取り残されてしまったかのようだった。


 思い出せばクリスティーナ様を弾劾する婚約破棄から救い出してからこんなに長い時間一人でいたのは久し振りだ。


 お気に入りの水色のワンピースまで着て待っていたのになぁ……


 ワンピースがシワになるのも構わずにゴロゴロと三人は寝れる広いベッドの上を転がりながらベッド端まで移動して床に立ち上がる。


 部屋に取り付けられているカーテンを閉めた方が良いのかもしれないと窓辺に近寄れば、女子寮に隣接した庭園にシャノン様の姿を見付けて窓を開ける。


「シャノンさ……ま?」


 庭園の生け垣からシャノン様の元へ出てきた人物を見付けてかけた声は急速に消失していく。


 レブラン様がシャノン様に近付いていく。


 ここのところ同郷の転生者であるシャノン様と一緒にいる時間が増えていたために忘れていたけれど、レブラン様とクワトロ侯爵家の長男イザーク様はシャノン様の補佐のため、一緒にいるのはけしておかしなことではない。


 壁に隠れるようにして窓を開けたまま二人の様子を見ていたが、レブラン様が何かを告げた次の瞬間シャノン様の右手がレブラン様の頬へと叩き付けられた。


 怒りを顕に庭園へ消えていくシャノン様に叩かれた頬を撫でるでもなく立ち尽くしていたレブラン様が不意に此方を振り返った。


 視線があったような気がして全身に悪寒が走る。


 急いで扉を閉めるとカーテンを閉めてベッドへと倒れ込んだ。


 はぁ、もう寝よう。

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