『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!
100『フリエル公爵令嬢』
フリエル公爵家に同じ年格好の令嬢が居たとははじめて聞いた。
現在ローズウェル王国には私の生家であるダスティア公爵家と、王弟殿下が立ち上げた歴史的に新しいアルバーン公爵家、そしてフリエル公爵家がある。
歴史的に見ればローズウェル王国建国前から公爵家は有ったのだけれど、飢饉や領地経営などで失敗し、国へ納めるべき税金を賄いきれず爵位を返上せざるを得ない状況に陥ったり、重犯罪を犯して爵位を没収され没落したりした結果、現存する公爵家は建国前からあり、ローズウェル王国建国に尽力したダスティア公爵家、新興アルバーン公爵家、そして建国時に立ったフリエル公爵家の三家のみとなっている。
私がルーベンス殿下の婚約者候補に名前が上がって即座に回避した際にはアルバーン公爵家に三つ年上のご令嬢が居た筈だが、血が濃くなりすぎると言う理由からルーベンス殿下の婚約者候補から外され、隣国へと嫁いで行かれた。
もしここ何世代か王族の降嫁がないフリエル公爵家に年頃の令嬢が居れば、きっとルーベンス殿下の婚約者はクリスティーナ様ではなく、フリエル公爵家になっていただろう。
「フリエル? フリエル公爵家にご令嬢が居ただろうか……」
どうやらルーベンス殿下も覚えがない様子で一緒に居たカイザー様に助けを求めるも、カイザー様の反応を見る限り、記憶に無いのかもしれない。
「はい、フリエル公爵の庶子で半年ほど前に正式に養女に迎えられましたので本年から本校へ入学を果たしております」
フリエル公爵家には現在フリエル公爵の孫にあたるソレイユ兄様と同じ歳の令息がいるだけの筈なのに、令嬢が居るのは彼女が養女だからなんですね。
「半年前?」
「そうです。 私はフリエル公爵よりまだ社交になれていらっしゃらないシャノン様の補助を仰せつかりました。 また殿下との対面に関しましても陛下のご許可を頂いております。 ルーベンス殿下、カイザー殿下、アラン殿下、シャノン様を宜しくお願いいたします」
レブランが殿下方に王族への礼をすると、ぎこちないながらもシャノン様は淑女の礼をして見せてくれた。
「わかった……気にかけておこう。 宜しくなフリエル嬢」
「どうかシャノンとお呼びいただけませんでしょうか?」
意外にも返事をしたのはカイザー様だった。 ルーベンス殿下ではなくカイザー様が返事をしたことにも驚いたが、それ以上にファミリーネームではなく、親しくもない王族へファーストネームを要求する無礼に驚きを隠せない。
それまで遠巻きに様子を窺っていた参列者にざわめきが広まった。
「フリエル様、いくら公爵家のご令嬢でもそれは……」
「あら、貴女はどなた?」
そんなシャノン様の態度にクリスティーナ様が遠慮がちに嗜めると、シャノン様はいま気が付いたとばかりにクリスティーナ様に視線を向ける。
「クリスティーナ・スラープと申します。 ルーベンス殿下の婚約者でございます」
「えっ? クリスティーナ様はルーベンス殿下と婚約破棄されたのでしょう?」
無邪気に後ろを振り返りレブラン様とイザーク様に同意を求めている。
会場がシャノン様の言葉に凍りつく。クリスティーナ様との婚約破棄騒動はまだ皆の記憶に新しい。
えぇい、爵位的にクリスティーナ様では養女とはいえ公爵令嬢への苦言は厳しい。
「はじめましてフリエル様。 私はリシャーナ・ダスティアと申します。 フリエル様と同じく公爵家の者ですわ。 一時期すれ違いからそのような噂もありましたが、クリスティーナ様は正真正銘ルーベンス殿下の婚約者様です」
にっこり笑顔で自己紹介をすれば、シャノン様が大きな瞳を見開いて私を凝視した。
「そうですか、ごめんなさいどうやら私が知っている情報とは色々違うみたいですわ。 リシャーナ様はカイザー様の婚約者ですわよね?」
はい!? 誰が誰の婚約者ですって?
「ちっ、違いますわ!」
「そうだな。 “現時点では”婚約者ではないな」
思いっきり否定したのに、隣でなにやら含みを持たせるような発言をしたカイザー様を睨み付ける。
「なぜフリエル嬢がリシャをカイザー殿下の婚約者だと思われたのかは分からないが、養女だろうと貴女は公爵令嬢なのだ。 こんな大衆の面前で不用意な発言は慎むべきだな」
ぐいっと、私をカイザー様の隣から引き離しつつアラン様が苦言を呈した。
「それは失礼致しました。 アラン殿下、申し訳ございませんカイザー殿下」
上目遣いにうるうると瞳を潤ませて謝罪するシャノン様……私とクリスティーナ様に謝罪は無しですか!?
「なんにせよ、フリエル嬢。 何か学院で困ったことがあれば私やリシャ、クリスに聞くといい」
ルーベンス殿下の言葉にシャノン様は頭を下げるとイザーク様とレブラン様を引き連れて会場を離れていった。
「シャノン様って変わってますねリシャ」
「うん、凄くめんどくさそうな人だね」
クリスティーナ様の言葉に大きく頷く。 出来れば関わりたくないなぁ……。
これからの学院生活に暗雲が迫ってくるような予感に、クリスティーナ様と互いに嘆息をする。
「おい、あの令嬢どう思う? カイザー殿下」
「間違いなく俺の婚約者候補として引き取られたのでしょうね。 もしくはアラン殿下が目的かも知れませんが……」
「何にせよ、リシャやルーベンス殿下の婚約者に対する態度が引っ掛かるんだよな」
「奇遇ですね。 俺も同じことを考えていましたよ」
互いに手を取りなにやら画策を始めたアラン様とカイザー様。
「レブランとイザークはマリアンヌへの想いを吹っ切れたのか……」
そんな私達には後ろの王子達の会話や独り言は一切届いていなかった。
現在ローズウェル王国には私の生家であるダスティア公爵家と、王弟殿下が立ち上げた歴史的に新しいアルバーン公爵家、そしてフリエル公爵家がある。
歴史的に見ればローズウェル王国建国前から公爵家は有ったのだけれど、飢饉や領地経営などで失敗し、国へ納めるべき税金を賄いきれず爵位を返上せざるを得ない状況に陥ったり、重犯罪を犯して爵位を没収され没落したりした結果、現存する公爵家は建国前からあり、ローズウェル王国建国に尽力したダスティア公爵家、新興アルバーン公爵家、そして建国時に立ったフリエル公爵家の三家のみとなっている。
私がルーベンス殿下の婚約者候補に名前が上がって即座に回避した際にはアルバーン公爵家に三つ年上のご令嬢が居た筈だが、血が濃くなりすぎると言う理由からルーベンス殿下の婚約者候補から外され、隣国へと嫁いで行かれた。
もしここ何世代か王族の降嫁がないフリエル公爵家に年頃の令嬢が居れば、きっとルーベンス殿下の婚約者はクリスティーナ様ではなく、フリエル公爵家になっていただろう。
「フリエル? フリエル公爵家にご令嬢が居ただろうか……」
どうやらルーベンス殿下も覚えがない様子で一緒に居たカイザー様に助けを求めるも、カイザー様の反応を見る限り、記憶に無いのかもしれない。
「はい、フリエル公爵の庶子で半年ほど前に正式に養女に迎えられましたので本年から本校へ入学を果たしております」
フリエル公爵家には現在フリエル公爵の孫にあたるソレイユ兄様と同じ歳の令息がいるだけの筈なのに、令嬢が居るのは彼女が養女だからなんですね。
「半年前?」
「そうです。 私はフリエル公爵よりまだ社交になれていらっしゃらないシャノン様の補助を仰せつかりました。 また殿下との対面に関しましても陛下のご許可を頂いております。 ルーベンス殿下、カイザー殿下、アラン殿下、シャノン様を宜しくお願いいたします」
レブランが殿下方に王族への礼をすると、ぎこちないながらもシャノン様は淑女の礼をして見せてくれた。
「わかった……気にかけておこう。 宜しくなフリエル嬢」
「どうかシャノンとお呼びいただけませんでしょうか?」
意外にも返事をしたのはカイザー様だった。 ルーベンス殿下ではなくカイザー様が返事をしたことにも驚いたが、それ以上にファミリーネームではなく、親しくもない王族へファーストネームを要求する無礼に驚きを隠せない。
それまで遠巻きに様子を窺っていた参列者にざわめきが広まった。
「フリエル様、いくら公爵家のご令嬢でもそれは……」
「あら、貴女はどなた?」
そんなシャノン様の態度にクリスティーナ様が遠慮がちに嗜めると、シャノン様はいま気が付いたとばかりにクリスティーナ様に視線を向ける。
「クリスティーナ・スラープと申します。 ルーベンス殿下の婚約者でございます」
「えっ? クリスティーナ様はルーベンス殿下と婚約破棄されたのでしょう?」
無邪気に後ろを振り返りレブラン様とイザーク様に同意を求めている。
会場がシャノン様の言葉に凍りつく。クリスティーナ様との婚約破棄騒動はまだ皆の記憶に新しい。
えぇい、爵位的にクリスティーナ様では養女とはいえ公爵令嬢への苦言は厳しい。
「はじめましてフリエル様。 私はリシャーナ・ダスティアと申します。 フリエル様と同じく公爵家の者ですわ。 一時期すれ違いからそのような噂もありましたが、クリスティーナ様は正真正銘ルーベンス殿下の婚約者様です」
にっこり笑顔で自己紹介をすれば、シャノン様が大きな瞳を見開いて私を凝視した。
「そうですか、ごめんなさいどうやら私が知っている情報とは色々違うみたいですわ。 リシャーナ様はカイザー様の婚約者ですわよね?」
はい!? 誰が誰の婚約者ですって?
「ちっ、違いますわ!」
「そうだな。 “現時点では”婚約者ではないな」
思いっきり否定したのに、隣でなにやら含みを持たせるような発言をしたカイザー様を睨み付ける。
「なぜフリエル嬢がリシャをカイザー殿下の婚約者だと思われたのかは分からないが、養女だろうと貴女は公爵令嬢なのだ。 こんな大衆の面前で不用意な発言は慎むべきだな」
ぐいっと、私をカイザー様の隣から引き離しつつアラン様が苦言を呈した。
「それは失礼致しました。 アラン殿下、申し訳ございませんカイザー殿下」
上目遣いにうるうると瞳を潤ませて謝罪するシャノン様……私とクリスティーナ様に謝罪は無しですか!?
「なんにせよ、フリエル嬢。 何か学院で困ったことがあれば私やリシャ、クリスに聞くといい」
ルーベンス殿下の言葉にシャノン様は頭を下げるとイザーク様とレブラン様を引き連れて会場を離れていった。
「シャノン様って変わってますねリシャ」
「うん、凄くめんどくさそうな人だね」
クリスティーナ様の言葉に大きく頷く。 出来れば関わりたくないなぁ……。
これからの学院生活に暗雲が迫ってくるような予感に、クリスティーナ様と互いに嘆息をする。
「おい、あの令嬢どう思う? カイザー殿下」
「間違いなく俺の婚約者候補として引き取られたのでしょうね。 もしくはアラン殿下が目的かも知れませんが……」
「何にせよ、リシャやルーベンス殿下の婚約者に対する態度が引っ掛かるんだよな」
「奇遇ですね。 俺も同じことを考えていましたよ」
互いに手を取りなにやら画策を始めたアラン様とカイザー様。
「レブランとイザークはマリアンヌへの想いを吹っ切れたのか……」
そんな私達には後ろの王子達の会話や独り言は一切届いていなかった。
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