『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!
98『歓迎会? いってらっしゃ~い』
「クリスこんなところにいたのか……兄上まで……」
臨時開催のお茶会も終わりが近づいた頃、私の背後からカフェテリアへやって来たルーベンス殿下はテーブルを囲む私たちへ疲れた様子で近付いてきた。
「ルーベンス殿下、歓迎会はどうされました?」
「いくら学院の歓迎会でも、婚約者の居る俺がクリスティーナをエスコートしていなければ面倒な事になるからな、捜しに来たんですよ……?」
カイザー様の問い掛けにルーベンス殿下が答え、二人と同席している私に気が付いたようだ。
椅子からゆっくりと立ち上がった私が王族に対する礼を取れば、ルーベンスの足が停まった。
「お久しゅうございます。 ルーベンス殿下……」
にっこりと笑顔を浮かべれば、にっこりと外面ようの王子様スマイルを浮かべて見せるルーベンス。
あれ? もしかして私が誰か気が付いてない? 可能性としてはおおいにあり得るんじゃなかろうか。
ゾライヤ帝国遠征軍から帰ってきてからはダスティア公爵領に引き込もっていたし、ゾライヤ帝国のアルファド皇帝陛下の即位式に参加していたルーベンス殿下とは、フレアルージュ王国の即位式では会っていない。
「すまない、どちらのご令嬢だったか……兄上、本日よりリシャが復学しているはずなのですが、見かけませんでしたか?」
やはりと言うべきか、私が誰だか分かっていないようだ。
ルーベンスの反応にカイザー様は笑いをこらえて手で口を塞ぎそっぽを向いて小刻みに痙攣しております。
「はぁ、ルーベンス殿下……リシャなら貴方の目の前に要るじゃないですか」
呆れた様子で紅茶を口へ運びながらクリスティーナ様が答えると、ルーベンス殿下が私を見た。
「えっ!? リシャ?」
「はい。 お久し振りにございますルーベンス殿下、リシャーナ・ダスティアでございます」
「えっ、だってリシャはムチムチでこう歩くより転がったほうが速そうな……痛ぇ!」
笑顔で自己紹介をしてみれば地が出たのか、錯乱したのか失礼な発言をいい始めたのでずいっと素早く近づき、革靴に包まれた小指側を踏みつけた。
「久し振りの再会ですのにどうやら失礼な発言は直っていらっしゃらなかったようで幻滅いたしました」
「間違いじゃなかった、こんながさつな令嬢……リシャ以外いるわけないからな……」
しゃがみ込んで小指が踏まれて痛いだろう足をさすりながら、嬉しそうな笑顔を浮かべてこちらを見上げると、ルーベンス殿下は私の手を引いて胸の中へと抱き締めた。
「無事で良かった……ずっと心配だったんだよ」
心配してくれたのはありがたいがこの状態は宜しくない。
拘束を脱け出すために、自由になる右手の平をルーベンスの顎の下に添えて右腕の肘の下に左手を添えて突きだした。
これぞゾロさん直伝の掌底!
「ぐふぅ!」
私から手を離して顎を押さえて涙目で踞る。
「自分の婚約者の目の前で他の女性を抱き締めるなんて一体何を考えているのですか!? 全く、少しは成長されたと聞いていたのに、ガッカリです」
    
両腕を組むようにして不満を告げる。
「くっ、ふふふっ。 この直ぐに手が出るのは本当にリシャだな。 痩せて綺麗になったから誰だかわからなかったよ」
「ちょっ! 人をドメスティックバイオレンスみたいに言わないでくれません。人聞きの悪い……」
「いや、誉めたつもりだったのたが」
誉めた? あれで? 
「誉めていましたかしらカイザー様?」
「微妙ですね。 百点満点で五点ほどと言ったところでしょうか?」
その様子を見ていたクリスティーナ様とカイザー様が苦笑いを浮かべて見せる。
「五点!? 点数が辛すぎじゃないか」
「普通ですわ」
「普通だろう」
二人の辛口の評価点数に目に見えてガックリと項垂れたルーベンスの様子が面白くて改めて皆のもとへ戻ってきたのだなぁとほっこりした気持ちになる。
「さて、ルーベンス殿下はクリスを呼びに来たのでしょう? そろそろ会場へ戻られたほうが良いでしょう」
お帰りはあちらですと言いたげにクリスティーナ様とルーベンス殿下に促すカイザー様は残っていた紅茶を飲み干した。
「いや、他人事のようなお言葉ですが兄上もですから」
「そういえば、いつからカイザー様を兄上と呼ばれるようになったんですか?」
ドラクロアにいたときはカイと呼んでいましたよね?
「自分よりも継承順位の高いカイザー兄上を愛称で呼ぶわけにはいかないだろう。 ましてやここは学院の中だ。 第二王子と第三王子が不仲であると言う噂を払拭するためにもあえて兄上と呼ぶことにしたんだ」
仲良しアピールの為に兄上と呼ぶことにしたのか。 なるほどねぇ、苦虫でも噛み潰したような顔を浮かべるカイザー様の様子から抵抗の後が見てとれる。
まぁ、ドラクロアでの様子を見るからに二人の仲は悪くないのだろうし、今後どうなるにしてもクリスティーナ様との婚約破棄騒ぎを起こしてからは世継ぎ筆頭から外されたようなものだ。
世継ぎ筆頭の重圧から解放されて生き生きしているように見えるのは気のせいではないと思う。
そしてその割りをくったかたが隣に一名……
「そう言うことです……」
「ふーん。 まぁ頑張って下さいね」
「さて、兄上も歓迎会へ一緒に戻りましょう。 此度の歓迎会は兄上のお披露目の意味もあるのですから。 皆兄上がいらっしゃるのを首を長くしてお待ちかねです」
どんな思惑があるにせよ、ルーベンスの晴れ晴れした様子を見るに王位に固執しているようには見えない。 むしろカイザー様を引き上げようと動いているのだ。
父様の話ではルーベンス殿下は、殿下を王位につけようと画策する王妃様とよく意見を衝突させるようになったらしい。
今も姿を消したカイザー様を歓迎会へと引っ張り出そうとしているようだ。
「まぁ、いってらっしゃいませ」
歓迎会とか面倒だしそろそろ部屋へ帰りますか。
「逃がしませんよ? 自分だけ逃げるなんてずるいじゃないですか。 もちろん参加しますよねリシャ」
回れ右をした私の両肩をぐわしっ! っと掴むカイザー様。 いつのまに立ったのよ!?
「そうですわ! 一緒に参りましょうリシャ?」
クリスティーナ様も私の行く手を阻むように回り込む。
「クリス、歓迎会に出席するために準備もあるだろうから、貴女の部屋へとリシャのドレスと準備に必要な侍女を……いやすまないが王族専用の寮までこのまま同行してもらえるかな。 二人のドレスはこちらに届けさせる」
「わかりました。 さぁ参りましょう! リシャ?」
「えっ!? ちょっ、ちょっとまっ!」
有無も言わさず強制連行させていく。 私行くなんて一言も言ってませんけど!?
臨時開催のお茶会も終わりが近づいた頃、私の背後からカフェテリアへやって来たルーベンス殿下はテーブルを囲む私たちへ疲れた様子で近付いてきた。
「ルーベンス殿下、歓迎会はどうされました?」
「いくら学院の歓迎会でも、婚約者の居る俺がクリスティーナをエスコートしていなければ面倒な事になるからな、捜しに来たんですよ……?」
カイザー様の問い掛けにルーベンス殿下が答え、二人と同席している私に気が付いたようだ。
椅子からゆっくりと立ち上がった私が王族に対する礼を取れば、ルーベンスの足が停まった。
「お久しゅうございます。 ルーベンス殿下……」
にっこりと笑顔を浮かべれば、にっこりと外面ようの王子様スマイルを浮かべて見せるルーベンス。
あれ? もしかして私が誰か気が付いてない? 可能性としてはおおいにあり得るんじゃなかろうか。
ゾライヤ帝国遠征軍から帰ってきてからはダスティア公爵領に引き込もっていたし、ゾライヤ帝国のアルファド皇帝陛下の即位式に参加していたルーベンス殿下とは、フレアルージュ王国の即位式では会っていない。
「すまない、どちらのご令嬢だったか……兄上、本日よりリシャが復学しているはずなのですが、見かけませんでしたか?」
やはりと言うべきか、私が誰だか分かっていないようだ。
ルーベンスの反応にカイザー様は笑いをこらえて手で口を塞ぎそっぽを向いて小刻みに痙攣しております。
「はぁ、ルーベンス殿下……リシャなら貴方の目の前に要るじゃないですか」
呆れた様子で紅茶を口へ運びながらクリスティーナ様が答えると、ルーベンス殿下が私を見た。
「えっ!? リシャ?」
「はい。 お久し振りにございますルーベンス殿下、リシャーナ・ダスティアでございます」
「えっ、だってリシャはムチムチでこう歩くより転がったほうが速そうな……痛ぇ!」
笑顔で自己紹介をしてみれば地が出たのか、錯乱したのか失礼な発言をいい始めたのでずいっと素早く近づき、革靴に包まれた小指側を踏みつけた。
「久し振りの再会ですのにどうやら失礼な発言は直っていらっしゃらなかったようで幻滅いたしました」
「間違いじゃなかった、こんながさつな令嬢……リシャ以外いるわけないからな……」
しゃがみ込んで小指が踏まれて痛いだろう足をさすりながら、嬉しそうな笑顔を浮かべてこちらを見上げると、ルーベンス殿下は私の手を引いて胸の中へと抱き締めた。
「無事で良かった……ずっと心配だったんだよ」
心配してくれたのはありがたいがこの状態は宜しくない。
拘束を脱け出すために、自由になる右手の平をルーベンスの顎の下に添えて右腕の肘の下に左手を添えて突きだした。
これぞゾロさん直伝の掌底!
「ぐふぅ!」
私から手を離して顎を押さえて涙目で踞る。
「自分の婚約者の目の前で他の女性を抱き締めるなんて一体何を考えているのですか!? 全く、少しは成長されたと聞いていたのに、ガッカリです」
    
両腕を組むようにして不満を告げる。
「くっ、ふふふっ。 この直ぐに手が出るのは本当にリシャだな。 痩せて綺麗になったから誰だかわからなかったよ」
「ちょっ! 人をドメスティックバイオレンスみたいに言わないでくれません。人聞きの悪い……」
「いや、誉めたつもりだったのたが」
誉めた? あれで? 
「誉めていましたかしらカイザー様?」
「微妙ですね。 百点満点で五点ほどと言ったところでしょうか?」
その様子を見ていたクリスティーナ様とカイザー様が苦笑いを浮かべて見せる。
「五点!? 点数が辛すぎじゃないか」
「普通ですわ」
「普通だろう」
二人の辛口の評価点数に目に見えてガックリと項垂れたルーベンスの様子が面白くて改めて皆のもとへ戻ってきたのだなぁとほっこりした気持ちになる。
「さて、ルーベンス殿下はクリスを呼びに来たのでしょう? そろそろ会場へ戻られたほうが良いでしょう」
お帰りはあちらですと言いたげにクリスティーナ様とルーベンス殿下に促すカイザー様は残っていた紅茶を飲み干した。
「いや、他人事のようなお言葉ですが兄上もですから」
「そういえば、いつからカイザー様を兄上と呼ばれるようになったんですか?」
ドラクロアにいたときはカイと呼んでいましたよね?
「自分よりも継承順位の高いカイザー兄上を愛称で呼ぶわけにはいかないだろう。 ましてやここは学院の中だ。 第二王子と第三王子が不仲であると言う噂を払拭するためにもあえて兄上と呼ぶことにしたんだ」
仲良しアピールの為に兄上と呼ぶことにしたのか。 なるほどねぇ、苦虫でも噛み潰したような顔を浮かべるカイザー様の様子から抵抗の後が見てとれる。
まぁ、ドラクロアでの様子を見るからに二人の仲は悪くないのだろうし、今後どうなるにしてもクリスティーナ様との婚約破棄騒ぎを起こしてからは世継ぎ筆頭から外されたようなものだ。
世継ぎ筆頭の重圧から解放されて生き生きしているように見えるのは気のせいではないと思う。
そしてその割りをくったかたが隣に一名……
「そう言うことです……」
「ふーん。 まぁ頑張って下さいね」
「さて、兄上も歓迎会へ一緒に戻りましょう。 此度の歓迎会は兄上のお披露目の意味もあるのですから。 皆兄上がいらっしゃるのを首を長くしてお待ちかねです」
どんな思惑があるにせよ、ルーベンスの晴れ晴れした様子を見るに王位に固執しているようには見えない。 むしろカイザー様を引き上げようと動いているのだ。
父様の話ではルーベンス殿下は、殿下を王位につけようと画策する王妃様とよく意見を衝突させるようになったらしい。
今も姿を消したカイザー様を歓迎会へと引っ張り出そうとしているようだ。
「まぁ、いってらっしゃいませ」
歓迎会とか面倒だしそろそろ部屋へ帰りますか。
「逃がしませんよ? 自分だけ逃げるなんてずるいじゃないですか。 もちろん参加しますよねリシャ」
回れ右をした私の両肩をぐわしっ! っと掴むカイザー様。 いつのまに立ったのよ!?
「そうですわ! 一緒に参りましょうリシャ?」
クリスティーナ様も私の行く手を阻むように回り込む。
「クリス、歓迎会に出席するために準備もあるだろうから、貴女の部屋へとリシャのドレスと準備に必要な侍女を……いやすまないが王族専用の寮までこのまま同行してもらえるかな。 二人のドレスはこちらに届けさせる」
「わかりました。 さぁ参りましょう! リシャ?」
「えっ!? ちょっ、ちょっとまっ!」
有無も言わさず強制連行させていく。 私行くなんて一言も言ってませんけど!?
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