『原作小説』美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!

紅葉ももな(くれはももな)

94『頭の上でバチバチするのやめい!』

 さて私の頭上で交わされる王子様と皇弟殿下の会談はと言いますと。


「これはリシャーナ様、大変お美しい。 自分が貴女をエスコート出来なかった事が悔やまれてなりません」


 私の右手をとって手の甲に口付けを落とすアラン様、お美しい!? 久し振りに会ってまた嫌みですか。


「まぁ、お褒めいただきありがとうございますアラン様。 少々御目が悪くなられたのではありませんか? 一度医師に診ていただいた方が宜しくてよ?」


 笑顔で対応しながら、なんとか不自然にならない程度で自分の手を奪還する。


「この度は我が国の姫君を救って頂きまありがとうございました。 アラン殿下」 


 何故かアラン様から距離をとるようにして、然り気無く腰に触れてきたカイザー殿下の手をつねる。


 勝手に触んな。


「いえいえ、リシャーナ様とは寝食を共にした仲ですから、貴方の礼には及びません」


「えぇ、感謝しております。 ご尽力のお陰で彼女は汚れを知らぬまま、無事に公爵家へ戻ることが出来ましたから」


 はぁ、わざとらしく交わされる両国の高位者の言葉に、周りが聞き耳をたてている。


 こんな見世物のような立ち位置をいつまでもやっていられるかい!


「両殿下、大変申し訳ありませんが少し疲れてしまったようで、休ませて頂きたいのですが……」


 ほれほれ! 早く許可出せや! いくら公爵令嬢でも皇族相手に勝手に退出は出来ないので、仮病を使って逃亡を謀る。


「それは大変だ私が休める場所までご案内いたしましょう」


「いえーー」


「結構です。 彼女は私のパートナーですのでアラン殿下はご歓談をお楽しみ下さい。リシャ、行くよ」


「ーーあっ、はい。 それではアラン殿下、ごきげんよう……」


 わざとなのか愛称で私の名前を呼ぶと、カイザー様はくるりと方向を変えて私を導きながら歩き出した。


 ふぅ、取り合えず客寄せパンダは終了出来たようだ。


「あぁ、そうだ。 言い忘れていたけれど、来期から私もローズウェルの王立学院へ留学することになったから」


「はい!?」


 私の反応に、してやったりと笑顔を浮かべて颯爽と人の波へと消えていくアラン様……


 えっ、学院へ来るの? アラン様が? なんで? 今さら前世の小学校レベルの学院へ、帝王学やら何やらを修めているアラン様が通う意味がわからないんですけど。


「ちっ、厄介な……」


「本当だわ」 


 ルーベンス殿下はソレイユ兄様のお陰で随分とまともに成長されたので、来期から長期に渡ってお休みを頂いていた私も先に帰国していた二人の王子殿下と同様に復学することになっている。


 クリスティーナ様は既に復学され学院生活へ戻られているらしい。


 ルーベンス殿下がある程度更正された今、私はお目付け役を外して貰える筈なので、地味で目立たない平和なキャンパスライフをやり直せる予定だったのに!


 駄目だぁ……平和なキャンパスライフを送れる気が全くしない。


 アラン様と何故か過剰スキンシップをはじめたカイザー様……考えただけで頭痛が、勘弁してよ……もう!


 

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